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2019年6月14日
【原油先物価格の乱高下とハイイールド債】(6月14日配信)

メルマガ 2019年6月14日(金)

 

おはようございます。

 

 

【原油先物価格の乱高下とハイイールド債】

 

 

【13日の海外市場】  

 

NYダウは前日比101ドル高、利下げ期待や原油価格上昇がダウを押し上げ

 

  • 13日の米金融市場は、米利下げ期待や原油価格の上昇を受けNYダウは3日ぶりに反発しました。長期金利は2.09%と前日の2.12%から低下(債券相場は上昇)、ドル円相場はやや円高の1ドル=108.35円で引けました。
  • NYダウ平均は前日比101ドル(0.4%)高の26,106ドルと反発、5月6日以来、ほぼ1カ月ぶりの高値で引けました。原油先物相場の上昇でエクソンモービルやシェブロンなど石油株が買われました。
  • 5月の米輸入物価指数が前月比で5カ月ぶりに低下、米国の物価上昇圧力の弱さが改めて意識され、関税の影響は限定的との見方が強まりました。早期の米利下げ観測が意識され株式市場に資金が流入しやすい地合いが続くとの見方が相場の支えになりました。ダウ採用銘柄ではウォルト・ディズニーが前日比4%と大きく買われた他、ホームデポが同1.7%高、ボーイングが同0.5%高となりダウを押し上げました。
  • S&P500種指数は前日比11ポイント(0.4%)高で引けました。S&P500種セクター別ではエネルギー、コミュニケーション、一般消費財が値がり上位で、ヘルスケアのみ下落しました。
  • ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は前日比44ポイント(0.6%)高の7,837と5月16日以来約1カ月ぶりの高値で引けました。アマゾン・ドット・コムやアルファベット、フェイスブックなど主力ハイテク株が上昇しました。半導体も総じて堅調でインテル、クアルコム、ブロードコム、エヌビディアが上昇し、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は前日比0.58%上昇しました。

 

 

米国金融市場の主な指標

 

金利・為替

  1. 米10年国債利回り:2.09%(前日2.12%)
  2. ドル円相場:1ドル=108.35-108.36円(前日108.46-108.47円)

 

株式相場

  1. ニューヨークダウ30種平均:26,106.77ドル(前日比+101.94ドル)
  2. ダウの主な上昇寄与:ウォルト・ディズニー、ホームデポ、ボーイングなど
  3. ダウの主な下落寄与:ビザ、ジョンソンエンドジョンソン、メルクなど
  4. S&P500種株価指数:2,891.64ポイント(前日比;+11.80ポイント)
  5. S&P業種別上昇セクター:エネルギー、コミュニケーション、一般消費財など
  6. S&P業種別下落セクター:ヘルスケア
  7. ナスダック総合株価指数:7,837.13ポイント(前日比+44.41ポイント)
  8. フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,392.94ポイント(前日1,384.95ポイント)
  9. 米VIX指数(恐怖指数):15.82(前日15.91)

 

商品

  1. ニューヨークWTI原油先物1バレル=52.28ドル(前日比+1.14ドル)
  2. ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,343.7ドル(前日比+6.9ドル)

 

 

マーケットが注目したと思われる主な材料

 

  • 5月の米輸入物価指数は前月比0.3%低下し、18年12月以来の大幅な落ち込みになった(市場予想は0.2%低下)。前年同月比は1.5%低下と4月の同0.3%低下を上回った。物価上昇圧力の弱さを示す新たな兆しで、米FRBによる利下げを後押しする材料となる。
  • 3月石油輸出国機構(OPEC)は13日公表した月報で、第1四半期の石油需要の伸び率(推定値)を前年同期比20%余り引き下げ、日量100万バレル弱の増加と発表した。貿易を巡る国際的な緊張が石油の需要に打撃を与えているとし、石油の需要見通しを下方修正した。
  • 先週(8日)の米新規失業保険申請件数は、前月比3,000件増の22.2万件と予想外に増加した。3週連続の増加で市場予想の21.6万件を上回った。前週は21.9万件だった。失業保険申請件数が3週連続で増えたことは、労働市場が弱含んできていることを示唆している。
  • 米メイ英首相の後任を決める与党・保守党の党首選は13日、第1回投票が行われ、ロイターによると最有力候補のジョンソン前外相が最大得票を集めた。投票は与党議員313人によって行われ、ジョンソン氏は114票を獲得。ハント外相(43票)、ゴーブ環境相(37票)、ラーブ前EU離脱担当相(27票)なども第2回投票に進んだ。

 

 

【今日のポイント】 

 

原油先物価格の乱高下とハイイールド債

 

  • 安倍首相がイランを訪問している最中、中東ホルムズ海峡近くでタンカーが襲われたことをきっかけに、13日のNY市場で原油先物価格が急上昇しました。ポンペオ米国務長官は13日の記者会見で、「イランに責任がある」と主張しました。4月の高値以降下落が続いてきた原油価格が転機を迎えたのか注目されます。
  • 最近の原油価格は大幅な調整局面が続いていましたが、ホルムズ海峡でタンカー2隻が襲われたという報道を受け13日の原油先物は一時、前日比4%超値上がりし1バレル=53.45ドルまで上昇しました。しかし、買いは続かず引けは同2.2%高の52.28ドルで引けました。
  • 原油価格を取り巻く環境は原油需要の低迷観測を背景に弱気見通しが強まっています。原油市場を取り巻くファンダメンタルズが価格下落方向に働く中で、タンカー襲撃という材料で投機筋の買戻しが入ったものとみられます。今後も上昇が持続するのか注意深く見る必要があります。
  • NY市場のWTI原油先物価格は4月23日に1バレル=66.3ドルと18年末から1.46倍に上昇した後に低下に転じ、6月12日は51.1ドルと高値から23%下落、いわゆる「弱気相場」入りしました。
  • 今回の原油価格の調整は世界経済減速に伴う原油需要見通しの下方修正が影響しています。4月までは米中貿易問題が解決に向かうとの見方が優勢でしたが、米中対立の悪化で世界経済の減速とそれに伴い原油需要が減少する弱気な見通しが広がりました。IMFやOECDは5月に世界経済見通しを相次いで下方修正しました。これを受け5月に国際エネルギー機関(IEA)は原油需要見通しを下方修正しました。13日にはOPECの月報でも第1四半期の世界の原油需要見通しを下方修正しています。
  • 6月5日には米国の石油在庫(5月31日時点)が週間ベースで1990年以来の最大の増加となったことが材料視されました。米国のシェールオイルの生産量が過去最高水準にある中、カナダやコロンビアからの輸入が増えたことが要因と言われます。
  • 一方、原油の需給バランスが先行き改善する兆しも出ています。米国の石油増産が一服することと、イランの輸出が急減していることが背景です。原油価格の下落を受けて米国の石油掘削リグ稼働数が減少傾向にあります。コストが高く採算割れとなった油田のリグが停止していることを示します。
  • イランの原油輸出が米国の経済制裁を受けて急減しています。報道によると、足元のイランの原油輸出は25~50万バレル程度と、200万バレルをこえていた18年のピークと比べて4分の1以下になっている模様です。ただし経済制裁解除には時間がかかると見られ、需給の改善は楽観視できません。
  • 6月26日に「OPECプラス」閣僚会合(ウィーン)が開かれます。生産量を増やしたい加盟国に配慮して、協調減産合意が緩和されるとの見方がありますが、急落する原油価格相場に配慮した内容になる可能性もあります。
  • 原油相場の変動は金融市場ではハイイールド債に影響を与えます。米国のハイイールド債市場の業種別構成比はエネルギーが14~15%と最大の比率を占めます。5月の米国ハイイールド債指数は前月比1.3%下落しましたが、原油相場の下落を受け、主要5業種ではエネルギーが最大の落ち込みとなりました(出所:バンクオブアメリカ・メリルリンチ、以下同)。
  • ハイイールド債価格の下落によって米国債利回りに対する米ハイイールド債利回りのスプレッド(上乗せ金利)は5月31日に4.61%と4月の3.66%から1%ポイントも上昇しました。5月の米ハイイールド債・ファンドからの資金流出入は52億ドルの純流出と月間ベースで今年最大となりました。
  • 企業のデフォルト率(注)は今年3月の0.98%→4月1.41%、5月1.72%と1月の1.73%以来の高さとなりました。原油価格の下落が続くと中小のエネルギー企業の業績が悪化し、企業の信用リスクが高まり格付け会社が格付けを引き下げます。こうしてデフォルト率が上昇するわけです。
  • 原油価格が回復すればこうした懸念は後退します。当面、「OPECプラス会合」とその後の原油価格の動向が注目されます。

 

(注)デフォルト率はバンクオブアメリカ・メリルリンチがインデックスで採用している発行体ベース

 

 

 

東京株式市場

 

  • 日経平均株価:21,032.00円(前日比-97.72円)
  • TOPIX:1,541.50ポイント(前日比-12.72ポイント)

 

 

データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)

https://nikkei225jp.com/nasdaq/

 

 

(お願い)

海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。

閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。

 

以上

 

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