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HOMEドキュメント >imasara証券・金融用語 >「ダウ工業株30種平均」(その2)

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いまさら聞けない証券・金融用語
ネットの受け売りじゃ本当の意味は解らない
今日も今更くんは、やさしい先輩に真っ向質問です!

2018年11月21日
「ダウ工業株30種平均」(その2)

今更くんの先輩が事務所に戻ると今更くんが考え込んでいる。

(先輩)

どうしたの?珍しく真剣な顔して?

(今更くん)

この間、アメリカに住んでいる叔母の家族が帰ってきて夕食の後、株式投資の話になったんです。

(先輩)

たしか、ご主人は、アメリカの方だよね?

(今更くん)

そうなんです、優しい良い旦那さんなんですが日本のサブカルチャーが大好きで、息子さんと秋葉原に行って大量のアニメのDVDとかフィギュアを買って叔母に怒られていました(笑)

(先輩)

へー、一緒にアキバか、仲の良い親子だね。

(今更くん)

はい、普段からいろいろ話をするようですけど、この間の先輩からの請け売りで、NYダウの歴史の話をしたら息子の方が
『どうして日本人は預貯金ばかりして株式投資をあまりしないのですか?』
と、質問されてボクは巧く答えられなくて(汗)

可愛い甥っ子なんですが、子どものクセにちょっと変わっていて…

(先輩)

その甥っ子さんは何歳なの?

(今更くん)

たしかハイスクールの1年ですから、16歳くらいだと思います。

(先輩)

うーん、それじゃ別に特殊ってわけじゃないよ。
彼らは小学生の頃から州毎の指導基準で金融教育を受けているからね。

(今更くん)

そんな小さい頃から投機的な教育を受けているんですか、さすが「カモンベイビーアメリカ」というか、ちょっと恐いですね。

(先輩)

おい、その変な動きはなんなんだい(苦笑)
それに「投機」と「投資」は違うよ。
高いリスクを知った上で短期的な高いリターンを得るための行動を「投機」と呼ぶなら、「投資」はそのリスクをヘッジした上で運用管理をすることだよ。

そういうことを小さい頃から学んでいる彼らにとって、NYダウの採用銘柄のアップルやアマゾンなんて、アニメのキャラクターやMLBのスター選手と同じくらいなアイドルかもしれない。

(今更くん)

なんか凄いですね、日本の将来が心配になってきました。
日本もちゃんとそういう教育をしなければダメですね。

(先輩)

でも、そういった教育のウラには、株式などのリスク資産がアメリカの個人金融資産の構成の中で、高い比率となっている現実があるからだよ。
日銀が今年(2018年)の3月末に発表した資料を見てご覧。
(「資金循環の日米欧比較」を手渡す)

(今更くん)

この「図表2 家計の金融資産構成」を見ると日本の「現金・預金」が50%を超えているのに比べ、アメリカは「債務証券」を入れても20%にも満たないですね、一方で、「株式等」は「投資信託」を含めても日本が16%に比べアメリカは、48%ですか!
日本は未だに金利メリットの少ない預貯金の割合が半数以上なんですね。

(先輩)

貯蓄型資産がけっして悪いわけでは無いけれど、君の甥御さんがいうように欧米からみると少し違和感はあるだろうね。

(今更くん)

そこなんですが、そういった現実があるから、金融教育をしなければならない。
そういった教育があるから株式などへの個人投資が、日本などに比べて多くなると言う事になりますよね。
でも、日本の場合、そもそも株式などへの個人投資がアメリカほど増えなかったのは何故ですか?

(先輩)

民族的に狩猟体質とか農耕体質の違いとかいうけど、そればかりじゃ無く、歴史的な背景があると思うんだ。

(今更くん)

え?どういうことですか?

(先輩)

アメリカは日本より早い段階で事業会社が大きな業績と利益を生み個人の余剰資産も増えているんだ。
ところで今更くん、市場の大きな役割は何だと思う?

(今更くん)

証券取引の流動性とか透明性とかのため…ですか?

(先輩)

そうだね、それもあるけど、事業会社からみると金融機関などからの借入金という言わば「借金」ではない活動資金が市場から調達できることだね。
一定の利息を付けて決められた時期に返金しなければならない借入金と違い、市場から調達した資金は、もっとダイナミックで企業が考える時間のなかで活用できるので利用し易いし、事業が成功すれば企業の価値が上がり投資先として更に魅力的となり、投資家や投資額が増え、事業拡大のための資金調達がより、しやすくなる。

アメリカの市場はそういった力強い循環の中で世界一の市場に育ったんだ。
事実、NYダウは算出開始から今年(2018年)5月31日までの約120年でおよそ596倍に上昇しているし、1929年の世界大恐慌で一時的に大きな調整局面はあったけど、不況を克服したあとは右肩上がりの上昇が続いているよね。
ちなみに日経平均株価は1989年12月の過去最高値38,915円を未だに抜いていない。

(註1)

(今更くん)

そうか、ローリスクだけどローリターンな債券や預貯金より、大きな利益の可能性がある株式は、魅力がある上に全体として安定していれば投資対象として選び易いですね。

(先輩)

そうそう、でも、さっき投機の話をしたけど、投機は一般に比較的短期の決済を前提としているだろ。?
アメリカの一般の個人投資家はそんな投機的な動きが無い事はないけど、概ね大きなリスクは避け、安定した配当利益や含み利益を長期間生む「株主」という立場を選んだとも云えると思う。
それを顕著に物語っているのは、長年増配し利益を株主へ還元している企業の多さだね。

(今更くん)

長年ってどの位ですか?

(先輩)

50年以上だよ。(笑)

(今更くん)

ご、五十年以上の増配ですか!そりゃ凄い!

(先輩)

50年以上増配を続ける銘柄で構成する「配当貴族指数」(註2)という指数があるけど有力な投資手法となっている。もちろん、株式がリスク資産であることは忘れてはいけないけど、やはり背景にはアメリカ国民の自国の企業や経済への潜在的な信頼感が大きいね。

(今更くん)

日本はどうなんですか?

(先輩)

日本は、「花王」の29年連続(2018年7月現在)が最長記録だね。

(今更くん)

何だか桁違いですね(悲)

(先輩)

29年連続だって凄いことだよ(笑)
日本は、戦前、国策として経済的な国力をつけるために財閥を中心とした大企業が儲かる仕組みをつくり、内部留保を優先させたので配当性向は低く、また、当時からアメリカの一般個人より余剰資産が少ない日本の個人は、企業への投資という概念が希薄だったんじゃないかな。

(今更くん)

でも、戦後の日本は財閥も解体されましたよね?

(先輩)

そうだね、でも終戦後日本は、GHQを主導とした数々の改革と復興過程の中で旧来の日本の経済構造をアメリカ的な自由経済へ移行しようとしたけど、莫大な資金不足がネックとなった。
そこで、やはり国策として貯金を奨励し一般から多くの資金を吸い上げて、経済復興政策を推進したんだ。
安全で国が担保する貯金は低リスクで比較的低所得だった当時の一般国民にとっても良いイメージだったと思うよ。

(今更くん)

なんかちょっと分かります。ボクも通帳を見るのが好きです。

(先輩)

へー意外にしっかりしてるね(笑)
企業の主は株主であるという基本原則はあるけれど、当時の日本の一般国民にとって未だ脆弱だった日本の企業に「虎の子」の資金を投じ、資本参加するというのはマインドとして選択しづらいし、少額のお金をコツコツ貯めていく方が実情にあっていたんだ。

(今更くん)

当時は、そんなことしている場合じゃないって、ことですね?
でも、今の日本も比較にならないほど豊かになっていますよね?

(先輩)

そうだね。まだ少しアメリカほど株式投資に対するリテラシーや投資先の企業分析などの意識が足らないのかもしれないね。
そうは言っても、政府や日銀は、長年続いた日本のデフレ状態をインフレへとカジを大きく切ろうとしているよね。更に消費税も上がるとなると、金利上昇の鈍い預貯金は、相対的に価値が下落するのは必然だし、日本の一般の個人もインフレに強いと言われる株式投資に向き合わなければ、ならないだろうね。

(註3)

(今更くん)

それにしても、アメリカの経済・資本力の日本との格差は、GDPで表れる以上で圧倒的ですね

(先輩)

そうだね。
アメリカの凄いところは、時代、時代に強力な企業を次々と生み出し、アメリカのみならず世界中の経済を牽引し続けている。また、アメリカの一般の個人投資家も息をするように自然に自分の資産を守り、成長させる事に真剣に向き合っているね。だから、アメリカ企業の全体的な成長に一般の個人も敏感だし、国としても国民の財産を守るために特別な意識をもって企業やマーケットに対し対応していると思う。

(今更くん)

なるほど、でも、ボクの甥っ子みたいに小さい頃から、そういう意識を持たせたり、教育をしたりするとなると時間がかかりそうですね。

(先輩)

GDPの上位3カ国である、アメリカ、中国、日本は、経済の発展の経緯や経済構造などが違うけど、どんな経済圏でも健全な投資家の投資参加が必要で、今からだって、ぼくらは、そういう投資家の皆さんに対して出来る事があるし、成長の手助けができる立場にあると思うよ。
そして大切なのは、その時代に合ったバランスを見つけ出し、株式や債券、現預金などの資産の構成をお勧めすることだね。

(註4)

(今更くん)

先輩、ボクちょっと感動しました、「カモンベイビーアメリカ」です。

(先輩)

だから、その変な動きやめろよ(苦笑)

(今更くん)

先輩、ダ・パンプ知らないんですか?

(先輩)

知ってるよ、でも僕らの時代は「カモンベイビーマイガール」だ。

(今更くん)

先輩こそ変ですよ、そのフリ。

(先輩)

ふーん、君とは歴史的背景が違うだけじゃなくて踊りのセンスも違うみたいだね。
ぼくはこれから、振り付けの練習するから、今日の客先の同伴はキャンセルね。(怒)

(今更くん)

えー(T_T)冗談ですよ、センパーイ

(了)


<ちょっと解説>

(註1)

アメリカは株式や債券など資本市場から資金を調達して企業活動を行う直接金融が早くから発達したため、世界最大の資本市場を持つ一因となった。株式市場には投信や年金などを通じて個人マネーが流入し、長い目で見れば株式市場は上昇基調にあるため個人金融資産も持続的に増えている。
いわば資本市場が経済成長のエンジンとなっているともいえる。残念ながら日本は大蔵省(現財務省)の力が強く戦後長期間、銀行を中心とした間接金融中心できたことも株式市場が育たなかった原因かもしれない。

(註2)

アメリカの株式の投資対象の一つに連続増配銘柄に投資するという手法がある。米国の主要500社で構成するS&P500種の中から連続増配記録が50年以上にわたる企業で作った指数を「配当貴族指数」といって、この指数のパフォーマンスはS&P500種を大きく上回っている。例えば洗剤のアリエールや紙おむつのパンパースのブランドで有名なプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)はなんと61年連続の増配記録を持つし、ポストイットなど文房具や工業製品といった世界有数の化学会社スリーエムは59年、コカ・コーラとジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は55年の記録を持つなど、すごい会社が多い(2018年1月までの発表)。ちなみに日本の連続増配記録を持つのは花王の29年(2018年7月時点)。

(註3)

日本はこの20年間モノの値段が下がるデフレ経済が続いたから、価値が一定の現預金で保有していても問題はなかったが、これからモノの値段が上がるインフレ経済になっていくとお金の価値が相対的に下がるから現預金だけでは大変なことになる。
株式はインフレに強い資産なので金融資産の一定割合を株式で保有する意味は十分ある。アメリカは失業率が3.7%と59年ぶりに低い水準まで低下。賃金が緩やかに上昇しているため消費者物価指数が前年比で2%程度に上昇している。日銀も2%程度の物価上昇を目指して株式や国債を買う異例の政策を採っている。
仮にすぐにインフレにならなくても、来年10月に消費税を引き上げればその分、消費者物価は上がることになる。世界的にみてもデフレからインフレの時代に入りつつあるようにみえる。低下してきた米国の長期金利が上昇していることがそれを示唆している。
https://www.miller.co.jp/chart.cgi?0510I (グラフ上の設定の左にある日足を月足に変更してみてください)

(註4)

大切な点は金融資産の中で株式などのリスク資産を持ちすぎてはいけないこと。株式、債券、現預金をバランス良く保有すること。我々の年金保険料の運用をしている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は資産の半分を株式(国内株式25%、外国株式25%)、外国債券15%、国内債券35%を基本ポートフォリオとしている。

(出展)

GPIFのHP
https://www.gpif.go.jp/

金融庁のHP
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/case/financialeducation/index.html

日銀「資金循環の日米欧比較」
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjhiq.pdf

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