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2019年6月6日
【マーケットに燻る衆・参院ダブル選の観測】(6月6日配信)
メルマガ 2019年6月6日(木)
おはようございます。
【マーケットに燻る衆・参院ダブル選の観測】
【5日の海外市場】
NY株式市場の主要3指数はそろって続伸、利下げ期待が支える
- 5日の米金融市場は、米長期金利が低下(債券相場は上昇)、NY株式市場は主要3指数がそろって上昇しました。NYダウ平均は前日比200ドルと超える上昇となりました。この日は債券も株式市場も両方が買われるなど、これまでとは異なる展開となりました。利下げが実現すれば米景気を支えることを株式市場が評価したものと思われます。
- 金融当局の政策の影響を反映しやすい米2年物国債利回りは一時1.78%台と前日より0.08%程度と大きく低下、米10年債利回りも一時2.08%まで低下しました。米経済指標は、米ISM非製造業景況指数は市場予想を上回ったものの、ADP雇用統計が市場予想を下回るなど強弱まちまちで、債券市場は弱い指標に反応しました。ドル円相場は日米金利差の縮小が意識され一時1ドル=107円80銭まで円高・ドル安が進みました。
- ダウ平均は3日続伸し、前日比207ドル(0.8%)高の25,539ドルと続伸しました。ADP雇用統計で就業者数の伸びが市場予想を下回りFRBが利下げするとの観測が強まり、幅広い銘柄が買われました。S&P500種セクター別では金利低下に敏感な不動産(REITなど)と公益事業(電力など)が上昇率の1,2位を占めました。
- ナバロ大統領補佐官(通商担当)が、トランプ米政権が10日からメキシコからの全輸入品に追加関税を課す方針について「発動する必要はないかもしれない」と述べたことでやや警戒感が薄れました。与党の共和党内でも異論が噴出しており、追加関税の発動が回避される可能性が意識されました。
- アップルが前日比1.6%上昇、シスコシステムズ、マイクロソフトが同2%以上の上昇となりました。クレジットカードのビザ、住宅のホームデポ、損害保険大手のトラベラーズも上昇しました。半面、金利低下でゴールドマン・サックスが下落した他、原油価格の低下を受けエクソンモービルが下落しました。
- 投資家の不安心理を示す米VIX指数は16.09と前日の16.97から低下しました。フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックなど大型IT関連が総じて上昇し、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は48ポイント(0.64%)高と続伸しました。クアルコムやAMD、マイクロン・テクノロジーなど大手半導体株の下落が影響しフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は前日比0.75%安く引けました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:2.13%(前日2.13%)
- ドル円相場:1ドル=108.25-108.26円(前日108.16-108.17円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:25,539.57ドル(前日比+207.39ドル)
- ダウの主な上昇寄与:ボーイング、ビザ、アップル、ホームデポなど
- ダウの主な下落寄与:ゴールドマン・サックス、IBM、ユナイテッド・テクノロジーズなど
- S&P500種株価指数:2,826.15ポイント(前日比+22.88ポイント)
- S&P業種別上昇セクター不動産、公益事業、情報技術など
- S&P業種別下落セクター:エネルギー
- ナスダック総合株価指数:7,575,48ポイント(前日比+48.36ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,345.10ポイント(前日1,355.26ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):16.09(前日16.97)
商品
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=51.68ドル(前日比-1.80ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,333.6ドル(前日比+4.9ドル)
マーケットが注目したと思われる主な材料
- 5月の米ADP雇用統計(民間版雇用統計)の雇用者数は前月比2万7,000人増と市場予想の18万5,000人増を大幅に下回った。2010年以来の小幅な伸び。建設業は3万6,000人減と2010年以来の大幅マイナス。製造業と天然資源・鉱業も減少。従業員数50人未満の小規模企業の雇用者数は5万2,000人減と、9年ぶりの大幅マイナス。週末の米雇用統計に対して市場ではやや警戒感が高まる可能性がある。
- 5月の米ISM非製造業景況指数は56.9と前月の55.から上昇。3カ月ぶりの上昇となった。市場予想の55.5も上回った。指数を構成する4項目中、3項目が上昇。特に雇用指数は58.1とここ2年で最大の伸び、新規受注は58.6に上昇した。減速傾向が目立つ製造業の景況感に対して、米国のサービス業は依然として堅調な状態を維持していることを示唆している。
【今日のポイント】
マーケットに燻る衆・参院ダブル選の観測
- 安倍首相が衆院を解散して夏の参院選とのダブル選に踏み切るとの観測が燻っています。衆院解散の大義として消費増税再々延期の可能性が意識されています。菅官房長官は「リーマンショック級の事態が起こらない限り、予定通り実施すべきだ」として現時点では再々延期に反対していると言われます。
- 市場では
- 消費増税は予定通り実施するが、夏の参院選前にも大規模な景気対策を発動する
- 消費増税を延期すると同時に景気対策を強化して参院選に挑む
- 予想外の消費税率引き下げ、など様々な憶測が出ています。
- 最近の安倍首相の周辺もかなり慌ただしくなっています。
- 5月16日:萩生田自民党幹事長代行は「今まであらゆる数字が回復基調を示していたからこそ、消費税は大丈夫だと言い続けてきたが、このところ発表される経済指標が悪化を示している」と指摘。今後の動向についてエコノミストらが総力で予想し、政府はそれに耳を傾ける必要がある」と述べました。そうしたら興味深いレポートがありました。
「消費税増税の「リスク」に関する有識者コメント」~合理的な判断を支援するインフォームドコンセントのために~(京都大学 藤井研究室の取りまとめ)
レポートはこちら↓
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/190507-2
- 同日:経済専門家と意見交換。出席者:ニッセイ基礎研究所矢嶋チーフエコノミスト、モルガン・スタンレーMUFG証券シニアアドバイザー、ロバートフェルドマン氏、岡三証券愛宕チーフエコノミスト、クレディ・スイス市川チーフ・マーケット・ストラテジストの4名と会食。
- 5月24日:コロンビア大学・伊藤隆敏教授(安倍首相の経済ブレーンの一人)がテレ東朝の経済番組モー・サテで「消費税は半年くらい延期しても良い」と発言
- 6月3日:浜田宏一内閣官房参与(安倍首相の経済ブレーンの一人)が安倍首相に現代貨幣理論(MMT)を説明。()銀行貸し出しを信用創造の起点と考え、自国通貨建ての国債は無限に発行できるので政策経費に財源は必要ないとする理論
- 同3日夜:安倍総理が私邸で自民党岸田政調会長と会談
- 同4日午後:安倍総理が自民党二階幹事長と会談
- 同4日:経済専門家との意見交換。出席者:大和総研熊谷チーフエコノミスト、第一生命経済研究所熊野首席エコノミスト、コモンズ投信渋沢社長、JPモルガン証券阪上チーフストラテジストと会食。
- さらにマーケットでは5月にリリースされた米ピーターソン国際経済研究所の論文「19-7 日本の財政政策の選択肢」が話題となっています。需要不足による長期停滞には金融政策だけでは限界があり、公的債務の拡大が必要という内容です。オリヴィエ・ブランシャール上席研究員と田代毅客員研究員が執筆しましたが、田代毅氏は経産省におけるアベノミクスの旗振り役の一人だったと言われます。
論文はこちら↓
https://piie.com/system/files/documents/pb19-7japanese.pdf
- 自民党の萩生田幹事長代行は、悪化が確実視される次回の日銀短観(7月1日発表)を判断材料とした消費増税延期の可能性に度々言及しています。世界経済に強い下方修正圧力が生じていることは事実であり、6月は国内外の経済指標の下振れや国際政治の緊迫化、米中貿易摩擦激化などをふまえ、増税延期論が高まる可能性は低くないと思われます。
- 2014年11月の「消費増税見送り解散」は安倍首相が海外出張中に観測記事が出たことから、今回安倍首相がイランを訪問する6月12-14日が注目されています。また6月19日の国会での党首討論で各党党首が消費増税撤回の可能性を質問した際に首相はどう答えるのかも注目されます。
東京株式市場
- 日経平均株価:20,776.10円(前日比+367.56円)
- TOPIX:1,530.08ポイント(前日比+30.99ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。
閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。
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