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メルマガ 2019年5月24日(金)
おはようございます。
【最近のリスクイベントとマーケットの影響】
【23日の海外市場】
米長期金利は一時2.3%割れ、米中摩擦激化や世界経済の変調を懸念
- 23日の米金融市場は、リスクオフムードが強まりNYダウは前日比286ドル安と大幅続落となりました。米10年物国債利回りは一時2.30%を割り込み、17年10月以来の低水準を付けました。英ブレグジット問題や米中の通商対立の不透明感、世界経済の変調を背景に、投資家は株式から安全資産の債券へと資金をシフトさせました。
- NYダウ平均は、前日比286ドル(1.1%)安の25,490ドルと大幅に続落しました。米中の貿易協議が行き詰まるとの懸念が一段と強まったうえ、世界景気の減速に対する警戒感も高まり幅広い銘柄に売りが膨らみました。ダウ平均は一時同448ドル安まで下げる場面がありました。
- ドイツと米国の製造業PMIが弱く、世界的な景気減速に対して懸念が強まりました。S&P500種セクター別で上昇したのは公益事業と不動産のみで、エネルギー、情報技術、資本財・サービス、金融などが下落の上位を占めました。IBMが前日比2.9%安、ユナイテッド・テクノロジーズが同3.6%安、アップルが同1.7%安と大きく下落しました。金利低下を受けゴールドマン・サックスが1.8%下落するなど金融も下落しました。需要減速懸念でWTI原油先物は前日比5%超の下落となったことでシェブロンやエクソンモービルが2%以上下落しました。
- 投資家心理を示す米VIX指数は16.92と前日の14.75から上昇、株価が安値を付ける局面では一時18.05まで上昇しました。フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックスは同2%を超える下落となるなど大型IT関連も大きく下落しました。ブロードコム、ザイリンクス、エヌビディア、クアルコムなど大手半導体関連も総じて安く、フィラデルフィア半導体指数(SOX)は同1.65%下落しました。ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は同1.58%の下落とダウの下落を上回りました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:2.32%(前日2.38%)
- ドル円相場:1ドル=109.62-109.63円(前日110.30-110.31円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:25,490.47ドル(前日比-286.14ドル)
- ダウの主な上昇寄与:ホームデポ、ジョンソンエンドジョンソン、インテルなど
- ダウの主な下落寄与:ユナイテッド・テクノロジーズ、IBM、ゴールドマン・サックスなど
- S&P500種株価指数:2,822.24ポイント(前日比-34.03ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:公益事業、不動産など
- S&P業種別下落セクター:エネルギー、情報技術、資本財・サービス、金融など
- ナスダック総合株価指数:7,628.28ポイント(前日比-122.56ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,322.84ポイント(前日1,345.04ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):16.92(前日14.75)
商品相場
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=57.91ドル(前日比-3.5ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,285.4ドル(前日比+11.2ドル)
米国市場に影響したと思われる主な材料
- 4月の米新築一戸建て住宅の販売戸数は年率換算で前月比6.9%減の67.3万戸と、市場予想(67.5万戸)を下回った。住宅価格中央値は34万2,200ドルと、前年比で8.8%上昇し、17年12月以来の高水準となったことで買いが見送られたことが背景。3月の販売戸数は72.3万戸と、69.2万戸から上方修正され11年ぶりの高い水準だった。前月比では低下したものの依然として住宅市場は底堅いと言える。
- IHSマークイットが23日発表した米国の製造業PMIは50.6と市場予想を大幅に下回り、9年8カ月ぶりの低さとなった。好不況の境目の50は上回ったが、最近は下落傾向を強めており、米景気の先行き懸念につながり米長期金利に影響した模様。
- ドイツのIfo経済研究所が集計した5月の独企業景況感指数は97.9と、2014年11月以来の低水準。前月は99.2、市場予想は99.1だった。通商を巡る世界的な緊張がドイツの景況感に影響している模様。ドイツの債券市場では国債が買われ(金利が低下)、長期金利はマイナス0.10%と一段と低下した。
- 米ニューヨーク連銀は23日、5月に発表された対中関税の引き上げにより、米世帯にかかる負担が年間で417ドル(約4万6000円)増えるとの試算を発表した。2018年の関税負担414ドルが約2倍の831ドルに膨らむ。関税引き上げが進めば企業が関税の対象国との取引を避けるため、結果的に関税収入は縮小していくと説明。結果的に仕入れ値が上がり、関税収入による還付も受けられないため、コストが純増となる可能性を指摘した。
- 米農務省は23日、中国との貿易戦争が長引き国内の農家への悪影響が一段と広がっていることを受け、最大160億ドル(約1兆7500億円)の救済策を実施すると発表した。補助金などを支給する。18年に実施した120億ドルを上回る第2弾となる。トランプ大統領の支持基盤である農家の不満を和らげる狙いがある。
【今日のポイント】
最近のリスクイベントとマーケットの影響
- 米中貿易摩擦の激化
米中の報復関税の応酬が金融市場の重石となっている。6月頃までに何らかの合意がなされる可能性はあるが、米中対立が解消されず中期的に経済や金融市場に悪影響を与えるリスクもある。IMFは今後1年間の経済への打撃は米国よりも中国側に大きいと試算しており、中国との貿易が多い日本や東南アジア経済のリスク要因として燻り続ける。日本株では中国での設備投資関連や電子部品株などの業績懸念となるため、ハイテク関連の上値を抑制する材料として意識される。
- 米国によるファーウェイへの制裁
米国による中国ファーウェイへの事実上の禁輸措置の企業業績への影響が顕在化してきた。米国では光ファイバ通信用部品メーカーと監視カメラに部品を供給する企業などが業績を下方修正した。今後半導体や5G投資など世界のハイテク企業に与える可能性が強く、不透明感が広がろう。影響が見極められるまで株式市場の物色はグロース株を避けて景気に影響を受けにくいディフェンシブ株や連続増配・高配当利回り、REIT、高クオリティ銘柄などが選考されやすい。
- 米利下げ期待
米国の利下げ期待が当面のリスク資産価格を支えることが期待される。マーケットは年後半に米国の利下げを7割ほど織り込んでいるが、賃金やインフレ率など今後の経済指標次第であり、見極めが必要。米国企業では追加関税や人件費上昇が企業のコストに影響し始めており、製品値上げが出来なければ米企業業績への懸念が台頭する可能性があり注意したい。
- 為替相場
日欧の景気実態は弱く、金融緩和の強化に対する期待が強いため、金利面からはドルが買われやすい。ドル円相場は一定の金利差があり、2016年のような1ドル=100円を割り込むような急激な円高は想定されない。ただし、ドル高が行き過ぎると新興国の資金調達力やコモディティ価格の動向を通じて新興国の資産価格に影響を与えるリスクに注意。インフレ率が安定し景気刺激策として利下げカードが使える一部の新興国に投資資金が向かい始めている。
東京株式市場
- 日経平均株価:21,151.14円(前日比-132.23円)
- TOPIX:1,540.58ポイント(前日比-5.63ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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