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2019年5月23日
【海外投資家の先物売り越しは一旦ピークアウトか】(5月23日配信)
メルマガ 2019年5月23日(木)
おはようございます。
【海外投資家の先物売り越しは一旦ピークアウトか】
【22日の海外市場】
主要株価指数はそろって反落、半導体関連の下落が重石
- 22日の米金融市場は、長期金利が低下(国債相場は上昇)し、主要株価指数はそろって反落しました。米ニューヨーク・タイムズ(電子版)が21日夕、トランプ米政権が監視カメラで世界シェア首位の中国企業との取引禁止を検討していると報じました。米ブルームバーグ通信も、最大5社が安全保障上の懸念のある外国企業を列挙したリストへの追加を検討されていると報じました。市場では米中の対立が一段と深まるとの警戒で投資家を冷やしました。米中貿易摩擦が米企業の業績を押し下げるとの見方が改めて意識され、投資資金は株式から債券にシフトしました。米長期金利は2.38%と前日の2.42%から低下しました。
- ダウ平均は前日比100ドル(0.39%)安い25,776ドルで引けました。中国の売上規模が大きい銘柄が総じて売り込まれました。アップルが同2%安、ボーイングが同1.6%安、キャタピラ-が同1.1%下落し3銘柄でNYダウを約74ドル引き下げました。アップルは、ゴールドマン・サックスが21日付リポートで「中国販売が禁止されれば1株利益の30%近くを失うだろう」と指摘したことも売り材料視されています。半面、スリーエムやメルク、ウォルマートなどディフェンシブ関連に資金が回りました。
- 決算を発表した小売りは明暗を分けました。百貨店のノードストロームとホームセンターの米ロウズは決算を受けて下落しました。ロウズは2-4月(第1四半期)決算が、利益が予想を下回ったことで同業のホームデポも下落しました。一方。米ディスカウントストアのターゲットは2~4月期の全体の売上高は5%増、ネット通販の売上高は4割増となり市場予想を上回りました。株価は一時前日比10%上昇しました。
- 半導体大手のクアルコムは前日比10%安の大幅下落となりました。21日夜に米連邦地方裁判所が、携帯電話向け半導体の特許使用を巡ってクアルコムが競争を阻害しているとの米連邦取引委員会(FTC)の訴えを認める判決を下したことが材料視されました。同業のインテルが同1%下落したほかブロードコム、エヌビディア、マイクロン・テクノロジーなど半導体が総じて安く、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は同2.1%の下落となりました。ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は前日比34ポイント(0.45%)安と反落しました。
- WTI原油先物は米国で原油在庫が約2年ぶりの高水準に積み上がり前日比1.71ドル安の1バレル61.42ドルで終えました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:2.38%(前日2.42%)
- ドル円相場:1ドル=110.30-110.31円(前日110.50-110.51円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:25,776.61ドル(前日比-100.72ドル)
- ダウの主な上昇寄与:スリーエム、メルク、コカ・コーラなど
- ダウの主な下落寄与:ボーイング、アップル、ゴールドマン・サックスなど
- S&P500種株価指数:2,856.27ポイント(前日比-8.09ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:公益事業、ヘルスケア-、生活必需品、不動産など
- S&P業種別下落セクター:エネルギー、一般消費財、資本財、素材など
- ナスダック総合株価指数:7,750.84ポイント(前日比-34.88ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,345.04ポイント(前日1,374.21ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):14.75(前日14.95)
商品相場
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=61.42ドル(前日比-1.71ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,274.2ドル(前日比+1.0ドル)
米国市場に影響したと思われる主な材料
(特になし)
【今日のポイント】
海外投資家の先物売り越しは一旦ピークアウトか
- JPX東証グループが発表する投資主体別売買動向をみると、東京株式市場は海外投資家の売買に大きく影響を受けていることがわかります。
- 海外投資家は1~3月に株価指数先物市場で2兆1,501億円も買い越しました。逆に現物市場では逆に2兆5,085億円の売り越しです。日経平均が昨年12月に19,000円台まで下落し年明けから回復しましたが、需給面の最大の買い手は海外投資家の先物買いによるものと考えられます。一方、中国経済の影響を受ける日本株は当面、投資魅力に欠けるとしてグローバル投資家は現物株の組み入れを減らしたものと思われます。
- 例年4月は海外投資家が買い越す傾向があり、実際今年もそうした経験則が通用しました。海外投資家は4月に株価指数先物で1,868億円の買い越し、現物は1兆6,055億円の大幅買い越しとなりました。新年度入りとなる4月は国内機関投資家が新規資金を手にするため買いから入りやすいほか、3月決算発表で好業績銘柄を買う傾向が強く、海外投資家が先回りした買いを入れると言われます。先物の売りが限定的なため、現物買いの効果で日経平均は4月24日に22,360円まで買われました。
- ところが海外投資家は5月第1週に先物市場で8,314億円の巨額な売り越しとなりました。日本の大型連休中にトランプ大統領が、中国から輸入する2,000憶ドル分の関税をこれまでの10%から25%に引き上げると発表したことが悪材料視され、連休明けに海外勢が買いポジションを減らしたためです。連休明けにNY株式相場が急落すると、日本株も大きく売り込まれ、日経平均は一時20,750円台まで売り込まれました。株価指数主導による下落です。
- 一時、昨年秋のような世界的な株価急落が懸念されましたが、その後の推移を見るとNY株式市場、日経平均株価ともにむしろ回復に転じています。日本株に対しては海外投資家の売りが限定されている可能性があります。背景には
- FRBによる利下げ期待が株価を支えていること
- 中国経済が昨年秋と比べて安定感を増していること
- 中国製品への関税引き上げは10%関税が導入された昨年9月時点で予想されており、昨年10-12月の株価急落(NYダウで▲17%、日経平均で▲20%超)により、ある程度織り込まれていたこと(新たな悪材料ではないこと)
- 投資家の不安心理を示す米VIX指数は5月13日に一時20を超えたものの、21日は早くも15割れに低下し、安定していること
- 為替市場で極端なリスク回避の円買いが発生していないこと、などが考えられます。
- 今後も海外投資家の売買を注視する必要はありますが、当面、昨年10月以降のような世界的なリスク資産の急落は起きない可能性が高いと思われます。
東京株式市場
- 日経平均株価:21,283.37円(前日比+10.92円)
- TOPIX:1,546.21ポイント(前日比-4.09ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
(お願い)
海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。
閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。
以上
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