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2019年3月5日
【上昇ピッチが早すぎる上海総合指数、実体経済と中国全人代での経済対策を見極める時間が必要】(3月5日配信)
おはようございます。
【上昇ピッチが早すぎる上海総合指数、実体経済と中国全人代での経済対策を見極める時間が必要】
【ニューヨーク市場】 4日の米国株はそろって反落
- 4日のニューヨークの金融市場は長期金利が買われ(金利が低下)、米主要株価指数は反落となりました。NY株式市場では先週末までの上昇でダウ平均が26,000ドルを超えており利益確定売りが先行しやすい上に、本日はヘルスケア関連株がダウを押し下げました。NY株安を受け為替はやや円高で推移しました。
- NYダウは前日比206ドル安い25,819ドルで引けました。米中の貿易交渉が合意に近づいているとの見方から上海総合指数が大幅高となったことなどから、朝方は前日比プラスで取引されておりましたが、市場では織り込み済みとして徐々に値を消しました。
- 医療保険のユナイテッドヘルス・グループや、ドラッグストアのウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの下落がダウ平均の重荷でした。前週に民主党議員が提案した国民皆健康保険制度の法案や薬価引き下げの圧力を懸念する売りが続きました。ユナイテッドヘルス・グループが先週末比4%下落、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスが同2.8%下落しました。株価が高値圏にあるボーイング、マクドナルドの4銘柄でダウを約163ドル押し下げています。ダウ平均の下げ幅は一時414ドルに達しました
- 債券市場は長期金利が2.72%と前日の2.75%からやや低下(債券価格は上昇)しました。ドル円相場は111.74ドルと前日の111.96円からドル安・円高となりしました。
- ナスダック総合は同17ポイント安い7,577と反落しました。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は1,363と前日とほぼ変わらず。投資家の不安心理を示す米VIX指数は14.63と前日の13.57から上昇しました。
- 国際商品市場では、WTI原油先物は同0.79ドル高の1バレル=56.59ドルと反発しました。1日に石油サービス会社ベーカー・ヒューズが公表した米国の石油生産に使う掘削設備(リグ)稼働数が昨年5月以来の低水準となり、米シェール企業の原油生産が頭打ちになるとの観測も原油相場を支えました。
- 米商務省が発表した2018年12月の建設支出は前月比0.6%減となりました。民間部門と公共部門の双方が落ち込み、予想の0.2%増に反して減少。米経済が年末にかけ減速したことが改めて確認されました。
【今日のポイント】
上昇ピッチが早すぎる上海総合指数、実体経済と中国全人代での経済対策を見極める時間が必要
- 4日の上海総合指数は先週末比33ポイント(1.1%)高い3,027と、昨年6月14日以来約8ヵ月ぶりの高値水準で引けました。一時高値は3,090と3,100に迫り、同3.2%高となる場面がありました。
- 上海総合指数が人気化した第1の理由は米中貿易交渉への期待です。米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は3日、「米中の貿易交渉は最終段階にある」と報じ、米国側が中国に課している制裁関税措置の多くを排除することを検討していると報じました。事実とすれば現状の双方の追加関税で経済成長率を押し下げている圧力が大きく後退するため、相場の先行きシナリオが変わってきます。それは投資家の期待値(予想PER)を押し上げることで株価が一段高となる可能性があります。OECDは、現在の追加関税が経済成長率(GDP)に与える影響は中国には-0.34%、米国には-0.23%、世界経済には-0.13%と試算しています。中国経済の下押し圧力は緩和されるわけです。
- 第2に中国株式市場の需給関係の改善です。MSCI(モルガンスタンレー・キャピタルインターナショナル)が2月28日、中国株の組み入れ比率の引き上げを発表しました。3月1日に米メディアが報じ、4日の市場で情報が一気に広がりました。発表によると、中国A株の組入れ比率を今年5月から段階的に引き上げると説明。MSCI新興国市場指数における中国A株のウエートは現行の0.72%から3段階に分けて最終的には3.3%まで高める予定です。テクノロジー株の比重が大きい創業版市場の上場銘柄は2019年に初めてMSCI指数に組み入れられます。MSCIは2017年6月に中国A株の新規組み入れを発表。18年6月に採用銘柄を発表した時点で中国株(A株)の組入れ比率は決まっていたことですが、正式に発表されたわけです。
- 上海総合指数は米中貿易戦争と経済減速を懸念した売りが加速し、2018年2月5日の過去52週高値3,487から2019年1月3日の同52週安値2,464まで1,023ポイント(29.3%)も下落しました。その後、中国政府の景気テコ入れ策発動や米中貿易交渉進展の報道、トランプ大統領が3月からの追加関税引き上げを見送ると発表したことで、2月から上げ足を速めました。ここに上述の二つの材料が加わり本日の急騰となりました。
- 中国の多くの経済指標は悪化を示しており、最近の異常に早い株価上昇にはやや違和感があります。上海総合指数は過去52週高値から同安値までの下げ幅の半値戻しが2,976の水準にあり、先週1日にこのポイントを上回ってきました。一旦落ち着き処を探るタイミングと思われます。株価が上値を目指すには土台を固めないと不安定です。足元の経済状況と中国全人代における政府の経済見通し、今後の経済対策、米国との通商交渉に対応するための施策などを見極める時間が必要と思います。
3月4日(月)
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.72%(前日2.75%)
- ニューヨーク市場ドル円相場:1ドル=111.74-111.75円(前日111.96-111.97円)
- ニューヨークダウ30種平均:25,819.65ドル(前日比-206.67ドル)
- ナスダック総合株価指数:7,577.57ポイント(前日比 17.79ポイント)
- S&P500種株価指数:2,792.81ポイント(前日比-10.88ポイント)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,363.25ポイント(前日1,363.13ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):14.63(前日13.57)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=56.59ドル(前日比+0.79ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,287.5ドル(前日比-11.70ドル)
東京株式市場
- 日経平均株価:21,822.04円(前日比+219.35円)
- TOPIX:1,627.59ポイント(前日比+11.87ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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