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2019年3月1日
【FRBの資産縮小プログラムとNY株式相場】(3月1日配信)
おはようございます。
【FRBの資産縮小プログラムとNY株式相場】
【ニューヨーク市場】 28日の米金融市場は予想を上回る米景気指標を受け、金利上昇・ドル高、米国株は主要3指数が揃って下落
- 28日のニューヨークの金融市場は長期金利が上昇し、ドル高となったものの、主要株価指数は小幅に下落しました。期待が高まっていた米朝首脳会談では非核化で合意できなかったことで先行きにやや透明感が広がりました。一方、米10-12月期実質GDPやシカゴPMIが市場予想を上回り、株価のサポート材料となりました。米金利上昇でドル円は一時111.49円台と年初来高値を更新しました。
- ダウ工業株30種平均は前日比69ドル安の25,916ドルで引けました。米朝首脳会談で北朝鮮の非核化を巡る合意に至らず、両首脳による合意文書の発表は見送られました。これを受けて同日のアジアや欧州の株式相場が軟調となり、投資家心理の重荷となり、米市場にも売りが及びました。半面、2018年10~12月期の米実質国内総生産(GDP)が市場予想を上回り、好感した買いが相場を支えています。
- ダウ採用銘柄では薬価引き下げや医療制度改革の不透明感からユナイテッドヘルス・グループが前日に続き大幅続落、株価は前日比3%あまり下落しダウを約53ドル押し下げました。アップル、化学大手のダウ・デュポン、建機のキャタピラー、工業用品のスリーエムの下落寄与度5銘柄でダウを約100ドル押し下げました。一方、ボーイングやマクドナルド、ホームデポなどが買われました。
- 債券市場は長期金利が2.71%と前日の2.68%から上昇しました。予想を上回った米景気指標が国債売り材料となりました。金利上昇を受けてドル円相場は111.38円台と前日比ドル高・円安で推移しました。
- ハイテク関連が多いナスダック総合は同21ポイント(0.3%)安で引けました。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は小動き。投資家の不安心理を示す米VIX指数は14.78と前日の14.70とほぼ変わらずでした。
- 国際商品市場ではWTI原油先物は0.28ドル高の1バレル=57.22ドルで引けました。
- 2月の米シカゴPMIは64.7で、前月の改定値から8.0ポイント上昇しました。2017年12月以来1年2カ月ぶりの高水準で、市場予測(56.1程度)を大幅に上回りました。同指数は50が景気の拡大と縮小の分かれ目と判断されます。構成する5項目のうち「新規受注」が15.2ポイント上昇して全体を押し上げました。「生産」も8.5ポイントと大きく上昇しました。2月に入り米企業のマインドは徐々に上向いていることが確認されました。
- 2018年第4・四半期の米実質GDPは年率換算で前期比2.6%増と市場予想の2.3%増を上回りました。個人消費は2.8%増(市場予想3%増)、機器やソフトウエアへの投資が好調で設備投資は6.2%増に加速し景気を支えました。米金融当局が金利に関して辛抱強い姿勢を見せる中、力強い成長が長期にわたり続く可能性があることが示唆されました。堅調な経済指標は株式市場のサポート材料になると思われます。
- クラリダ米FRB副議長は28日、物価の大幅な伸びが予想される場合でも判断を急ぐべきではないとコメントしました。同副議長は全米企業エコノミスト協会(NABE)での講演で「経済モデルがいつも正しいとは限らず、将来の見通しと確実性の最大化という双方の兼ね合いを図るよう認識せねばならない」と語りました。堅調な景気と金融緩和の長期化は適温相場(ゴルディ・ロックス)をイメージさせます。
- 中国の2月PMIは49.2と3ヵ月連続で境目の50を割り込みました。市場予想の49.5を下回り約3年ぶりに低い水準です。中国の経済活動が停滞していることを示しました。ただし、春節休暇が含まれる月であるため若干割引く必要があるかもしれません。
【今日のポイント】
FRBの資産縮小プログラムとNY株式相場
- パウエル米FRB議長は27日の米上院金融サービス委員会で「資産縮小を年内に終了する。近く公表する」と述べました。同議長が資産縮小の終了時期に言及したのは初めてで、タイミングとしては3月の次回FOMCで最終決定されると見られます。資産縮小の停止時期とされた「年内」の正確な時期は不明ですが、10~12月中と考えられます。
- FRBの総資産は2017年10月から段階的な保有債券の償還により、2月20日時点の規模はピークの4.5兆ドルから4兆ドルを若干下回る水準まで縮小しています。
- FRBが総資産の縮小を開始する前の計画では、昨年10月から毎月500憶ドルの債券を償還させる方針でした。毎月500億ドルのペースで減らしていけば、2019年末に3.4兆ドル程度、20年には3.0兆ドル、22年には2.5兆ドル程度まで縮小する計画でした。しかし、昨年12月に金融市場が大きく動揺したため、パウエルFRB議長は縮小プログラムの見直しを表明、その詳細が注目されています。
- 仮にこの500億ドルの削減が2月を基点に10月まで続くと仮定すると、総資産の縮小額は4,000億ドルとなります。一方で流通通貨は経済規模の拡大に応じて増加傾向にあり、こちらは総資産の増加要因となります。名目経済成長率並みに増加すると仮定すると、今後8ヵ月間で450億ドル程度の資産増加要因となります。総資産の縮小要因と増加要因を合算すると10月には総資産は3,550憶ドル減少し、総資産の規模は3.6兆ドル程度が着地点となります。
- ただし、現実のFRBの保有債券の償却は18年10~12月期の平均で500億ドルを下回っています。一方、流通通貨はドルが基軸通貨ということもあり、国内だけでなく国外でも保有されており、流通通貨は年4%を超えるペースで増加、2016年以降は平均6%程度で増加しています。これらを考慮すると10月時点の総資産の規模は3.7兆ドル強となります。
- 問題はマーケットの反応です。市場はFRBの総資産の規模で金融市場の資金余剰(金余り度合い)をイメージするため、いくらで着地するかによってマーケットの反応は変わってきます。市場予想よりも大きい水準で着地する見通しであればNY株式市場にはプラス材料。市場予想よりも小さければ株式の売り材料と捉えられます。
- 現時点のシナリオは以下の通りです。
【ベストシナリオ】3月のFOMCで総資産縮小のプログラムのガイダンスが正式に発表され、資産縮小の終了時期の詳細が明確になる。年内終了で総資産の着地は3.6~3.8兆ドル
【基本シナリオ】3月のFOMCで詳細を含めたガイダンスを発表。年内に終了し総資産の規模は3.5~3.6兆ドル
【ワーストシナリオ】3月のFOMCでガイダンスは発表されるものの、詳細は公表されないケース
- 上述しました試算「10月時点の総資産の規模は3.7兆ドル強」が正しければ、ベストシナリオと受け止められ、NY株式市場の上昇要因と考えられます。3月のFOMC(19~20日)に向けてNY株式市場には期待値が高まる可能性があります。
2月28日(木)
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.71%(前日2.68%)
- ニューヨーク市場ドル円相場:1ドル=111.38-111.39円(前日110.98-110.99円)
- ニューヨークダウ30種平均:25,916.00ドル(前日比-69.16ドル)
- ナスダック総合株価指数:7,532.53ポイント(前日比-21.98ポイント)
- S&P500種株価指数:2,784.49ポイント(前日比-7.89ポイント)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,350.20ポイント(前日1,349.87ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):14.78(前日14.70)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=57.22ドル(前日比+0.28ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,316.1ドル(前日比-5.1ドル)
東京株式市場
- 日経平均株価:21,385.16円(前日比-171.35円)
- TOPIX:1,607.66ポイント(前日比-12.76ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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