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おはようございます。
【2019年の年初のリスク材料を点検する】
【ニューヨーク市場】 27日の米金融市場は長期金利が上昇、主要株価指数はまちまちの展開
- 27日のニューヨークの金融市場は長期金利上昇、ドル高が進みました。主要株価指数はまちまちの展開です。ニューヨークの株価は今年の高値圏にあり特別な買い材料がないと上値を追えず、利益確定売りが出やすい状況です。
- NYダウは前日比72ドル安の25,985ドルと続落しました。ヘルスケア株がダウの重荷となりました。民主党議員が「メディケア・フォー・オール」(国民皆健康保険制度)の法案を提出したことが悪材料となり、医療保険のユナイテッドヘルス・グループが4%超の大幅下落となり、1銘柄でダウ平均を約87ドル押し下げました。住宅関連のホームデポが2%下落しダウを約31ドル押し下げました。S&P500種は前日比1.52ポイント安、ナスダック総合は同5.21ポイント高とまちまちでした。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は同1.2%安となりました。投資家の不安心理を示す米VIX指数は14.70と前日の15.17から低下しました。
- 国際商品市場では米国の週間原油在庫統計で米国の原油在庫が予想以上の減少となり、WTI原油先物は前日比1.4ドル高い1バレル=56.94ドルで引けました。原油価格の上昇を受け石油大手のエクソンモービルやシェブロンが買われました。
- 債券市場は長期金利が2.68%と前日の2.63から上昇(債券価格は下落)しました。内外金利差が意識されドル円相場は110.98ドルと前日の110.54ドルからややドル高・円安となりました。
- パウエル米FRB議長は27日、下院金融サービス委員会で「資産縮小を年内に終了する方向で検討している。近く公表する」と述べました。同議長が終了時期に言及したのは始めてです。3月の次回会合で最終決定するとみられます。NYの株式市場には一定のサポート材料となった可能性があります。
- 2018年12月の製造業新規受注は0.1%増にとどまりました。機械や電気機器などの需要が低迷したことで予想の0.5%増を下回りました。コア資本財受注も前週発表の速報値より大きく減少し、製造業活動が鈍化しつつあることが示されました。
- 1月の中古住宅販売仮契約指数は、前月比4.6%上昇し103.2と、節目となる100を超えた。エコノミスト予想は0.4%上昇。住宅ローン金利の低下と堅調な雇用市場が需要安定を支えている状況が示唆されました。
- 米通商代表部のライトハイザー代表は27日、米議会下院の歳出委員会の公聴会で、交渉期限の延長を近く正式に公表するという見通しを示しました。米中貿易問題をめぐる交渉について、来月1日までの交渉期限を近く正式に延長することを明らかにし、多くの課題が残り最終的な合意はまだ遠いと、慎重な見方を示しました。特にアメリカが問題視している知的財産権の侵害や、アメリカ企業に対して技術移転を強制する問題など多くの課題が残り、最終的な合意にはまだ遠いという慎重な見方を示しました。
【今日のポイント】
2019年の年初のリスク材料を点検する
- 2019年年初のリスク資産市場のテーマは以下の5つの材料がどう展開するかが注目されました。すなわち
(1) 米国景気の持続性
(2) 米FRBの金融政策の中立化
(3) 米中通商交渉の成立
(4) 中国景気の減速長期化
(5) 欧州政治・経済情勢悪化(英国のEU離脱、欧米自動車摩擦、欧州景気の急減速)
- これが2ヵ月経過したところでどう変化したか点検してみます。
(1) 米国景気の持続性:12月、1月までの米経済指標は悪化が継続していますが、政府機関の一部閉鎖が解除され、FRBが金融政策を見直すと表明したあとに株価上昇が進んだ2月の指標は改善を示しています。例えば26日に発表された2月の米消費者信頼感指数は131.4となり、前回の120.2、市場予想の125を大きく上回りました。政府機関の閉鎖の影響が一時的だったことを示唆しています。今週発表される2月のISM製造業景況指数や来週の2月雇用統計などを確認する必要はありますが、一時の悲観論は大きく後退しています。慎重ながらも先行き強気派が増えている印象です。
(2) 米金融政策の中立化:先週の1月FOMC議事要旨や26日のパウエル米FRB議長の上院での議会証言からは、概ね市場の期待通りに進みつつあります。
(3) 米中通商協議:3月下旬に開催される予定の米中首脳会談で最終合意できるかを確認する必要があります。しかし成果を求めるトランプ大統領は「十分な進展があった」と発言、3月2日に予定していた追加関税の導入は延期しました。可能性としては米中首脳会談において「包括的な米中貿易合意」と宣言され、貿易戦争は一時休戦となる可能性が高そうです。しかし、「産業補助金」や最終合意の「履行状況のチェック(中国が合意に違反した場合の罰則規定など)」など、米中双方に隔たりのある分野は継続協議となる可能性があります。
(4) 中国景気の減速長期化:中国の景気は減速を示す指標が継続しています。しかし、実体経済に数ヵ月ほど先行する習性のある金融の量的指標はすでに回復に転じています。また3月から開幕する全人代では景気を支える政策が強化されると考えられます。専門家の間では4~6月期から回復を見込む向きが増えているようです。
(5) 欧州政治・経済情勢悪化:少しずつ前進しているようです。英国のメイ首相は26日、英国のEU離脱に関して、EU離脱期限の延長を容認する新しい方針を発表しました。離脱期限が迫る中で、期限の延長を選択肢に加えたことで、親EU派や穏健離脱派の批判に応じた格好です。また「合意なき離脱」の是非を問う採決の実施を選択肢に加えたことで、強硬離脱派にも配慮する姿勢を示しました。ポンド相場はEU離脱に対する楽観的な見通しを背景に上昇しました。一方、欧米自動車摩擦と欧州景気急減速は依然としてリスク材料として残ります。
- こうしてみると年初に市場が想定したリスク材料はかなり後退したことがわかります。今後5つのリスク材料の「霧」がすっきり晴れて青空が見えるような状況になれば、リスク資産市場はさらに上値を追うことが予想されます。問題は世界経済が減速傾向を強めており、日米企業の1株利益(EPS)の成長率が1年前と比べて大きく鈍化していることです。利益成長力が鈍いと株価収益率(PER)が上昇する以外に株価上昇は期待できないわけですが、これではカネ余りを背景とするバブル相場となってしまいます。
- 主要国の株式市場が昨年の高値を超えていくには景気減速が止まり、企業マインドや消費者マインドが再び上向き、世界経済の成長率が再加速するシナリオが見える必要があります。そのためには経済規模が世界1位の米国と2位の中国が少なくとも経済分野で活力を取り戻し、米中間の貿易量が再び拡大に向かうことが条件になると思います。
- 2020年は米国の大統領選を控え、中国は所得倍増計画の最終目標年となるため、とても重要な年になります。景気は当然回復局面となっていなければなりません。2020年に米中経済が主導する格好で世界経済が回復するシナリオがあるとすれば、そのタイムラグを考えれば、「2019年前半の底入れ・後半からの回復」→「2020年前半から景気再加速」となる可能性があるように思います。
- ちなみに中国は2021年に中国共産党創立100周年を迎え、2020年以上に重要な年となります。そこを最終着地点として中国共産党は景気をどうコントロールするかが注目されます。
2月27日(水)
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.68%(前日2.63%)
- ニューヨーク市場ドル円相場:1ドル=110.98-110.99円(前日110.54-10.55円)
- ニューヨークダウ30種平均:25,985.16ドル(前日比-72.82ドル)
- ナスダック総合株価指数:7,554.51ポイント(前日比+5.21ポイント)
- S&P500種株価指数:2,792.38ポイント(前日比-1.52ポイント)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,349.87ポイント(前日1366.58ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):14.70(前日15.17)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=56.94ドル(前日比+1.44ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,321.2ドル(前日比-7.3ドル)
東京株式市場
- 日経平均株価:21,556.51円(前日比+107.12円)
- TOPIX:1,620.42ポイント(前日比+3.22ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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