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2019年7月25日
【米大統領選が強く意識された米連邦債務上限引き上げの与野党合意】(7月25日配信)
メルマガ 2019年7月25日(木)
おはようございます。
【米大統領選が強く意識された米連邦債務上限引き上げの与野党合意】
【24日の海外市場】
米独の製造業PMIが市場予想を下回り長期金利は低下、NYダウは反落するも、S&P500種とナスダックは過去最高値を更新
- 24日の米金融市場は、ドイツと米国の製造業PMIが市場予想をやや下回り長期金利が低下(債券価格は上昇)しました。NY株式市場は決算が嫌気されたボーイングやキャタピラーなど一部の銘柄の下落が大きく影響し、ダウ平均は前日比80ドル近い下落となりました。S&P500種とナスダックは3日続伸し過去最高値を更新しました。
- NYダウ平均は3営業日ぶりに反落し、前日比79ドル(0.3%)安の27,269ドルと反落しました。低調な決算が売り材料となった建機のキャタピラーや航空機のボーイングが大幅安となり、ダウ平均を押し下げました。ボーイングは3年ぶりの最終赤字に転じたことが悪材料となりました。この2銘柄でダウ平均を121ドルあまり押し下げました。半面、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェース、ビザなど金融株が上昇しダウ平均を支えました。
- ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数は3日続伸し、前日比70ポイント(0.8%)高の8,321と約1週ぶりに過去最高値を更新しました。23日夕に減収減益ながら市場予想を上回る四半期決算を発表した半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TI)が前日比7%の大幅高となり、インテルやクアルコム、エヌビディアなど他の半導体関連株に波及しました。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は前日比3.1%上昇しました。
- S&P500種指数は3日続伸し、14ポイント(0.5%)高の3,019と15日以来ほぼ1週ぶりに過去最高値を更新しました。セクター別では金融やコミュニケーション、情報技術が高く、生活必需品、不動産が下落しました。
- 投資家の不安心理を示す米VIX指数は12.07と前日の12.61から低下、いよいよ12割れも視野に入りました。投資家は過度に楽観的になりつつあることを示します。やや注意が必要です。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:2.04%(前日2.08%)
- ドル円相場:1ドル=108.18-108.20円(前日108.15-108.25円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:27,269.97ドル(前日比-79.22ドル)
- ダウの主な上昇寄与:ゴールドマン・サックス、ビザ、ホームデポなど
- ダウの主な下落寄与:ボーイング、キャタピラー、ユナイテッドヘルス・グループなど
- S&P500種株価指数:3,019.56ポイント(前日比+14.09ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:金融、コミュニケーション、情報技術など
- S&P業種別下落セクター:生活必需品、不動産、素材
- ナスダック総合株価指数:8,321.50ポイント(前日比;+70.1ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,622.02ポイント(前日1,573.27ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):12.07(前日12.61)
商品
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=55.88ドル(前日比-0.89ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,423.6ドル(前日比+1.9ドル)
マーケットが注目したと思われる主な材料
- マークイットが発表した7月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は50.0と6月の50.6から低下し、2009年9月以来の低水準となった。米経済の約12%を占める製造業は、米中貿易摩擦や世界的な需要低迷の影響を受けている。一方、サービス業PMIは52.2と先月の51.5から回復、市場予想の51.8も上回った。全体の7割強を占めるサービス業は堅調に推移している。総合PMIは51.6と前回の51.5を上回った。
- マークイットが発表した7月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)は51.5と前月の52.2から低下、市場予想を下回った。ドイツの製造業PMIは43.1と前月の45から低下し、7年ぶりの低水準を記録した。
- 6月の新築一戸建て住宅の販売戸数は、年率換算で64万6,000戸と、前月比7%増加した。市場予想は66万戸。一方、過去3カ月分の数字は下方修正されるなど、住宅ローン金利の低下などにかかわらず住宅市場は足踏みの状態が続いている。
【今日のポイント】
米大統領選が強く意識された米連邦債務上限引き上げの与野党合意
- トランプ大統領は22日、今後2年間の連邦政府の歳出と債務の大枠について与野党で合意したと発表しました。米メディアによると、2020年会計年度(19年10月から20年9月)と21会計年度の裁量的経費の歳出権限を計3,200億ドル(約35兆円)引き上げるほか、連邦債務上限の効力を21年7月まで停止するという内容です。
- この報道を受け、23日のNY外為市場で主要6通貨に対するドル指数は約5週間ぶりの高値水準に上昇し、ドル円相場は1ドル=108.15円のドル高・円安となりました。23日のNYダウは前日比177ドル高となり史上最高値に迫るなど投資家心理の改善に大きく寄与しました。
- 今回の合意は3つの点で好材料です。第1に合意がなければ19年10月から始まる20年度の裁量的経費の歳出権限は前年度比1,260億ドル減少する、いわゆる「財政の崖」が回避されました。合意によりむしろ同490億ドル増加となる模様です。第2に2020年11月の大統領選直前の同年9月末が成立期限の21年度予算についても、裁量的経費の歳出権限の総枠で合意したことから、大統領選直前の政府閉鎖リスクはほぼ封鎖されます。
- 第3に連邦債務上限の効力を21年7月まで停止したことにより、この9月中にも生じかねなかった支払い義務不履行が回避されただけでなく、20年と21年の所得税還付集中期(2-3月)や20年11月の大統領選前の資金枯渇による支払い義務不履行は回避される見込みです。パウエルFRB議長が不透明要因の一つに挙げていた債務上限問題は解消されました。このことは、米景気の不確実性材料が一つ後退したわけで、FRBの金融政策にも影響するかもしれません。
- 米議会は8月5日から夏季休暇入り(9月6日まで)の予定で、時間が限られていました。国防費は共和党が、教育など非国防費は民主党がそれぞれ増額を求めていましたが、20年の大統領選を強く意識してバラマキ色の強い妥協案で合意しました。夏季休暇明けとなる9月2日のレーバーデー(労働者の日)以降、 米大統領選のキャンペーンが本格化するため、両党とも早期妥結に向けて歩み寄った格好です。
- 民主党・共和党に限らず大統領選の最大のアピールポイントは景気と株価動向です。今後、トランプ大統領は米中貿易交渉、日米貿易交渉、米EUの自動車協議、(FRBの専管事項ですが)米金融政策など米景気・株価に影響する政策判断はすべてにおいて大統領選に勝利するためにどのタイミングで、どうアクションを起こすかを狙っているはずです。
- 今回の合意で米景気悪化リスクが後退し、当面の実体経済や金融市場にプラスになると考えられます。春先以降に悪化しつつある米製造業の経営者心理にも好影響を与えると思います。世界経済にとってもプラス材料となります。なお、当面の懸念は後退したものの、新規国債の増発による将来の米財政悪化は避けられない点がリスク材料です。
東京株式市場
- 日経平均株価:21,709.57円(前日比+88.69円)
- TOPIX:1,575.09ポイント(前日比+6.27ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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