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2019年7月11日
【為替市場、1ドル=107円台割れは遠のいたか】(7月11日配信)
メルマガ 2019年7月11日(木)
おはようございます。
【為替市場、1ドル=107円台割れは遠のいたか】
【10日の海外市場】
パウエルFRB議長の議会証言を好感、NY市場の主要3指数は一時過去最高値更新
- 10日の米金融市場は、パウエル米FRB議長の議会証言を受け改めて利下げ期待が膨らみ、NY株式市場ではダウ平均が一時最高値を更新するなど反発、ナスダック総合は過去最高値を更新して引けました。S&P500種は、心理的な節目の3,000を初めて上回る場面がありました。
- NYダウ平均は前日比76ドル(0.3%)上昇し、4日ぶりに反発しました。米FRBのパウエル議長の議会証言などを受けて7月末に利下げに動くとの期待が高まり、幅広い銘柄が買われました。ダウ平均は一時200ドル近く上げ、3日に付けた過去最高値を上回りました。
- ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数は続伸し、前日比60ポイント(0.7%)高の8,202と3日に付けた過去最高値を更新しました。アップルやマイクロソフト、アルファベット、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムなど大型IT関連が軒並み買われました。
- インテルやアドバンスド・マイクロ・デバイシズ、マイクロンテクノロジーなど半導体関連も総じて堅調で、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は前日比0.7%高い1,471ポイントで引けました。利下げ期待を受けて投資家の不安心理を示す米VIX指数は13.03と前日の14.09から改善しました。
- 石油大手のエクソンモービルが前日比1.4%高、シェブロンが1.7%と大幅に上昇し、S&P500種セクター別でエネルギーが最大の上昇率となりました。10日発表した週間在庫統計で、原油在庫は前週から950万バレル減り、WTI原油先物は前日比2.6ドル(4.5%)高となったことが材料となりました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:2.06%(前日2.06%)
- ドル円相場:1ドル=108.40-108.50円(前日108.80-108.90円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:26,860.20ドル(前日比+76.71ドル)
- ダウの主な上昇寄与:シェブロン、ウォルト・ディズニー、アップルなど
- ダウの主な下落寄与:ゴールドマン・サックス、キャタピラー、ホームデポなど
- S&P500種株価指数:2,993.07ポイント(前日比+13.44ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:エネルギー、コミュニケーション、情報技術、生活必需品など
- S&P業種別下落セクター:金融、資本財・サービス、公益事業
- ナスダック総合株価指数:8,202.53ポイント(前日比+60.80ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,471.51ポイント(前日1,461.21ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):13.03(前日14.09)
商品
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=60.43ドル(前日比+2.6ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,412.5ドル(前日比+12.0ドル)
マーケットが注目したと思われる主な材料
10日の二つのFRBイベントはNY株式市場の安心材料となりました。
- パウエル米FRB議長は議会証言で米経済成長の下支えに向け「適切に」行動すると発言した。市場における利下げ期待を追認する内容となった。議会証言要旨は以下の通り(ロイターを引用)。
- 通商を巡る不確実性や世界経済に対する不安、引き続き米経済見通しへの重石
- FRBは米経済成長の下支えに向け「適切に」行動する
- 米経済成長は依然底堅く、労働市場は堅調さが持続し、インフレは2%目標に向かうというのが基本的な見通し
- 弱いインフレ、現在のFRBの予想よりもさらに長引く恐れ
- 米経済成長は第2・四半期に和らいだ。最近数カ月間、海外の一部主要国で経済の勢いが減速したもよう
- 企業投資の伸びは著しく鈍化したもようで、貿易摩擦や世界経済の減速への懸念を反映している可能性
- 第1・四半期の米消費支出の伸びは脆弱だったが、その後持ち直しており、足元では底堅く推移
- 米FRBは10日公表した6月のFOMC議事要旨で「景気の不透明さが続けば、金融緩和が近く正当化される」と明記した。7月末の次回会合での利下げを示唆したもの。議事要旨には「会合参加者は景気の先行きにリスクと不確実性が著しく高まっていると強調した」と指摘。景気の下振れリスクが解消されなければ「多くの参加者が、緩和的な金融政策が近く正当化されると判断した」と踏み込んだ。
【今日のポイント】
為替市場、1ドル=107円台割れは遠のいたか
- 為替市場で円安が進んでいます。10日には1ドル=108.98円までドル高・円安が進みました。6月25日の106.76円からみれば早いペースのドル高・円安です。
- 1つ目のドル高・円安材料は米長期金利の上昇です。7月9日の米債券市場で米10年国債利回りは2.06%と、3日の1.942%から急上昇しました。10日に予定される米FOMC議事要旨(6月開催分)の公表と、パウエルFRB議長の議会証言を前に、債券市場では利益確定売り(債券売り=金利上昇)が強まりました。
- 10日のFRBイベントはマーケットが期待する内容にほぼ近いものでした。パウエルFRB議長の議会証言後、米債券相場は一時買われました(金利低下)が、10年国債利回りは前日と同じ2.06%で引けました。ドル円相場を引き続きサポートしそうです。
- 2つ目のドル高・円安材料は投機筋(ヘッジファンド)の円ポジション(持ち高)です。直近の米商品先物取引委員会(CFTC)の統計では、大幅に円の買い戻しが進みました。具体的には4月30日の約10万枚(1兆2,450億円)もあった円売り越しポジションは、7月2日時点で1,227枚(153億円)と急速に減少しました。為替市場で4月の112.39円から6月の106.76円まで円高が進んだ需給的要因に投機筋のポジションの巻き戻しがあったと思われます。
- ここから投機筋が円の買い越しポジションを積み上げる場合、運用通貨(円)の金利よりも調達通貨(ドル)の金利が高い「ネガティブキャリー」が生じるため、投機筋の円買いの勢いは鈍ると考えられます。1ドル=107円台割れのリスクは一旦遠のいたと考えられます。ここからの円買い(円高)が限定的であると想定すれば、逆に円売り(円安)のポジションを積み上げる投機筋も存在すると思われます。
- ドル円相場の日足一目均衡表は転換線が基準線を上回り、ドル高を後押しする形になりました。11日時点で先行スパン(雲)が109.29円にあり、スパンは徐々に上値を切り下げています。ここをブレイクできればドルは上値を試す展開となりますが、ここで押し戻されると一旦下押しする可能性があります。
- 6月の日銀短観の2019年度大企業製造業の想定為替レートは1ドル=109.35円です。株式市場ではこの水準を今期の業績動向を見るうえでのメルクマールとしており、当面のポイントとなります。
東京株式市場
- 日経平均株価:21,533.48円(前日比-31.67円)
- TOPIX:1,571.32ポイント(前日比-3.57ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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