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2019年7月3日
【米景気の最大のリスクは企業部門、特に設備投資の動向に警戒が必要】(7月3日配信)
メルマガ 2019年7月3日(水)
おはようございます。
【米景気の最大のリスクは企業部門、特に設備投資の動向に警戒が必要】
【2日の海外市場】
世界的な金融緩和観測が後押しS&P500種は連続して最高値更新
- 2日の米金融市場は、世界的に緩和的な金融環境が続くとの見方から債券が買われ(金利は低下)、NY株式市場の主要指数は続伸しました。長期金利は1.97%と再び2%割れとなり、ドル円相場は1ドル=107.85円と108円の大台を割り込みました。
- NYダウ平均は3日続伸し、前日比69ドル高の26,786ドルと過去最高値である昨年10月3日以来の高値で引けました。S&P500種株価指数は4日続伸し、過去最高値を2日連続で更新して引けました。
- 欧州連合(EU)は欧州中央銀行(ECB)総裁に積極的な金融緩和を支持してきたラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事を指名しました。オーストラリア準備銀行(中央銀行)は2日、政策金利を過去最低の年1.00%に引き下げると決定しました。世界的に緩和的な金融環境が続くとの思惑が広がりました。株式市場への資金流入が続くとの期待が株式相場を支えました。
- ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数は5日続伸しました。アップル、アルファベット、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックスなど大型IT関連が堅調に推移しました。投資家の不安心理を示す米VIX指数は12.93とついに13ポイントを割り込み4月23日以来の低水準となりました。
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は前日比1.38%下落しました。中国ファーウェイに対する制裁緩和が限定的なものになるとの見方が広がり、前日の急反発から一転して利益確定売りとなりました。ブロードコムが同1.6%安、ザイリンクス同2.9%安、エヌビディアが同2.3%安、オン・セミコンダクタ-は同2.7%と下落しました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:1.97%(前日2.02%)
- ドル円相場:1ドル=107.85-107.95円(前日108.40-108.50円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:26,786.68ドル(前日比+69.25ドル)
- ダウの主な上昇寄与:マクドナルド、ビザ、ユナイテッドヘルス・グループ、ベライゾンなど
- ダウの主な下落寄与:ボーイング、シェブロン、キャタピラーなど
- S&P500種株価指数:2,973.01ポイント(前日比+8.68ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:不動産、公益事業、コミュニケーションなど
- S&P業種別下落セクター:エネルギー、金融、素材、資本財・サービスなど
- ナスダック総合株価指数:8,109.09ポイント(前日比+17.93ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,476.83ポイント(前日1497.55ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):12.93(前日14.06)
商品
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=56.25ドル(前日比-2.84ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,408.0ドル(前日比+18.7ドル)
マーケットが注目したと思われる主な材料
- ナバロ米大統領補佐官(通商担当)は2日、米CNBCテレビのインタビューで、中国の通信機器最大手、ファーウェイに対する制裁緩和に関して「短期的に年10億ドル未満の少量の半導体をファーウェイに販売すること」だと指摘した。同社は全世界の企業から年670億ドルの部材を調達しており、制裁緩和は限定的になる見通し。半導体関連に利益確定売りの材料となった。
【今日のポイント】
米景気の最大のリスクは企業の設備投資
- 7月1日に発表となった米6月のISM景況感指数は51.7と前月の52.1から一段と低下し、2016年10月以来、2年半ぶりに低い水準となりました。市場予想の51は上回りましたが、好不況の境目となる50に接近しました。
- 内訳をみるとやや心配な指標が出てきました。ISMの新規受注指数は前月比2.7ポイント低下の50と15年12月以来の低水準となりました。15年8月に中国が人民元を切り下げた「チャイナショック」後の景気減速局面以来の低い水準です。この頃米ISM製造業景況指数は4ヵ月連続(15年11月~16年2月)で50を割り込んでいます。ISMの新規受注指数は米企業業績との連動性が高く、市場の利益予想も下振れする公算が大きくなります。
- 米景気の持続的シナリオにおける最大のリスクは企業の設備投資です。米中貿易摩擦の影響で企業収益の伸び率が鈍化することで、企業が設備投資を抑制し、資本政策の再構築を余儀なくされることです。ISMの新規受注指数を6ヵ月先行させると米国の設備投資の先行指数といわれる、非国防資本財受注の前年同月比と連動します。先週発表された5月の同国防資本財受注は前月比0.4%増と、こうした懸念はまだありませんが、6月以降の同指標やほかの設備投資関連指標には警戒が必要です。
- 一方、GDPの70%強を占める個人消費は今のところ堅調に推移しています。米国の失業率は3.6%とほぼ完全雇用状態にあり、平均時給も前年同月比で3.1%上昇していることが旺盛な消費需要を支えています。株価など資産価格が今年前半に大きく回復したことも追い風となっています。
- 米FRBの利下げに関して、年内に0.75%かまたはそれ以上(1%)の利下げの蓋然性が高まるには、予想以上の米景気の減速か物価上昇率の鈍化、またはデフレ(物価下落)のシナリオが必要です。市場でよく聞かれる、景気後退に備えるための「予防的利下げ」の名目での利下げであればせいぜい0.5%程度と考えられます。予想以上の景気減速があるとすれば企業部門の心理悪化と設備投資の先送りと思われます。7月15日の週から米企業の19年4-6月期決算発表が始まりますが、足元の関税引き上げによる企業収益動向が注目されます。
東京株式市場
- 日経平均株価:21,754.27円(前日比+24.3円)
- TOPIX:1,589.84ポイント(前日比+4.99ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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