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2019年6月20日
【電撃的な米中貿易交渉再開とマーケット】(6月20日配信)
メルマガ 2019年6月20日(木)
おはようございます。
【電撃的な米中貿易交渉再開とマーケット】
【19日の海外市場】
米FOMCを受け米長期金利は低下しドル安・円高、NYダウは前日比38ドル高
- 19日の米金融市場は、米FOMCで年内の利下げが示唆されたことで長期金利が低下し、外国為替市場では円高が進みました。10年物国債利回りは前日比0.04%低い2.02%に低下(債券価格は上昇)しました。ドル円相場は一時1ドル=107.91円まで円高・ドル安が進みました。金融緩和がリスク資産を後押しするとの期待からNY株式市場の主要3指数は上昇しました。
- NYダウ平均は3日続伸し、前日比38ドル高の26,504ドルと5月3日以来の高値を付けました。S&P500種は同8.7ポイント(0.3%)高、ナスダック総合は同33ポイント(0.42%)上昇しました。S&Pセクター別ではヘルスケア、公益事業、不動産、情報技術が高く、素材、エネルギー、金融などが下落しました。年内の利下げ期待を受け、配当利回りの高い銘柄が多く採用される公益事業や不動産(REIT)の買い材料となり、逆に利ザヤの縮小懸念で金融株の売り材料となりました。
- 米FOMCは一部で期待されたほどハト派的ではなかったものの、声明文で「忍耐強く」の文言が削除され、議長が持続的経済成長のために適切に行動するとしたことでひとまず安心感が広がりました。投資家の不安心理を示す米VIX指数は14.33前日の15.15から低下し、投資家のリスク許容度が高まりつつあります。
- 政策金利見通しでは17人の参加者のうち8人が年内利下げを見込みました。3月時点で利下げ観測はゼロだったため、大幅に利下げ方向に傾いたと受け止められました。FOMCの声明文公表をうけて、ダウは一時、前日比100ドル高まで上げ幅を広げる場面がありました。
- ダウ採用銘柄ではユナイテッドヘルス・グループ、ウォルトディズニー、ビザが買われ、前日に大幅高となっていたボーイング、スリーエム、アップルなどが利益確定売りに押されました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り2.02%(前日2.06%)
- ドル円相場:1ドル=108.05-108.15円(前日108.40-108.50円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:26,504.00ドル(前日比+38.46ドル)
- ダウの主な上昇寄与:ユナイテッドヘルス・グループ、ウォルトディズニー、ビザなど
- ダウの主な下落寄与:ボーイング、スリーエム、ダウ、JPモルガン・チェースなど
- S&P500種株価指数:2,926.46ポイント(前日比+8.71ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:ヘルスケア、公益事業、不動産、情報技術など
- S&P業種別下落セクター:素材、エネルギー、金融、資本財・サービス
- ナスダック総合株価指数:7,987.32ポイント(前日比+33.44ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,407.3ポイント(前日1,406.16ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):14.33(前日15.15)
商品
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=53.76ドル(前日比-0.14ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,348.8ドル(前日比-1.90ドル)
マーケットが注目したと思われる主な材料
- 米FOMCはFF金利の誘導目標を2.25─2.50%に据え置くことを決定した。ただ不確実性の増大などに対応するために年内に最大0.5%ポイントの利下げが実施される可能性があることも示唆。FOMC声明文では、景気拡大を維持するために適切に行動すると表明。これまでの声明にあった金利調整に当たり「忍耐強く」対処するとの文言は削除した。新たに公表した経済見通しでは2019年のインフレ率見通しは1.5%と、3月に示した見通しの1.8%から下方修正した。パウエル議長はFOMC後の記者会見で「不確実性の高まりを踏まえ、景気拡大を保つため、適切な政策対応をとることを検討していく」と述べた。
- USTRのライトハイザー代表は19日、開かれた米下院歳入委員会の公聴会で、中国の劉副首相と今週電話会談する計画だと発言した。6月28ー29日に開催される20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪サミット)期間中、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が会談する前に、同氏とムニューシン米財務長官は劉氏と直接対面する予定。
【今日のポイント】
電撃的な米中貿易交渉再開とマーケット
- 18日に発表された電撃的な米中貿易交渉の再開方針を受け、19日の東京株式市場は、日経平均が一時390円近く値上がりしました。引けは前日比361円高の21,333円と5月10日以来、約1ヵ月半ぶりの高値で終えました。18日のNY株式市場でダウ平均が前日比353ドル上昇する中で、特にファーウェイへの取引規制の緩和に期待した買いが入り半導体関連が大きく反応したことで、東京市場も電機・半導体、機械株に一斉に買いが入りました。日経平均上昇寄与度上位には東京エレクやファナック、TDKが上位に入り、業種別騰落では非鉄金属や機械など市況関連や景気敏感株が上位に入りました。
- ヘッジファンドの動向に詳しいストラテジストによると、今回は習国家主席からの電話協議は事前予告なく設定されました。2020年11月の米大統領選への再選出馬正式表明を18日に予定(オーランド)していたトランプ大統領は、協議の進展よりも交渉再開を優先したといわれます。米中首脳会談には対中国強硬派のナバロ大統領補佐官やボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の同席は見送られる模様です。
- 6月に入り米中首脳会談に関する報道が減り、対中、対北朝鮮に関する意外な報道が目立ちました。ブルームバーグの報道によると、ペンス米副大統領は中国の天安門事件から30年の記念日にあたる6月4日に同国の人権問題を批判する演説を行う予定だったものの、トランプ大統領の介入で延期されました。トランプ大統領はG20首脳会議に合わせて中国の習国家主席と会談する可能性を睨み、その前に中国側の反発を買う事態を避けるため、副大統領の演説を延期させた模様です。
- 一方、中国共産党は17日、習国家主席が20から21日まで北朝鮮を公式訪問すると発表しました。このタイミングで米中首脳会談の開催が決まったわけです。中国は北朝鮮を対米貿易交渉のカードの一つに使う可能性も想定されます。
- 米中とも景気の先行きは厳しく、特に中国は6%を下回るような経済成長率の減速は避けなければなりません。深刻な雇用問題に直結する恐れがあるためです。米中とも貿易戦争を鎮静化させたいという点では一致しています。G20首脳会議まであと1週間あまりとなるギリギリのタイミングで首脳会談が決まったことは、ここで合意するというよりも交渉再開を優先し、話し合いで継続協議をするという落としどころになるのではないかと思われます。
- トランプ政権は17日、中国からの輸入品3,000億ドルに追加関税を課すという関税第4弾に関する公聴会を始めました。第4弾は中国への輸入依存度が高く代替調達も難しいなど、これまでの制裁関税で避けてきたスマホやノートPC、食料品、衣料品など消費財が全体の4割を占めます。米半導体工業会は公聴会でスマホなど完成品に関税を課せば、半導体を含むサプライチェーン全体に影響が及ぶと懸念を表明しました。値ごろ感のある衣服や玩具も中国からの輸入が大半で値上げと販売減につながるとの懸念があります。物価上昇を通じて米経済の支えである個人消費を直撃しかねません。
- トランプ大統領は中国との交渉次第では関税第4弾を課す構えです。しかし関税第4弾が景気減速や有権者の反発を招けば大統領選の逆風になりかねません。過去の大統領選2期目の選挙で再選できなかったケースは3回しかなく、それはすべて米国がリセッションとなったケースでした。トランプ大統領はこの点をよく承知しているはずです。
東京株式市場
- 日経平均株価:21,333.87円(前日比+361.16円)
- TOPIX:1,555.27ポイント(前日比+26.6ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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