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2019年6月11日
【FRBは景気後退を防ぐ予防的利下げに踏み切るか】(6月11日配信)

メルマガ 2019年6月11日(火)

 

おはようございます。

 

【FRBは景気後退を防ぐ予防的利下げに踏み切るか】

 

 

【10日の海外市場】  

 

NYダウは6日続伸、ナスダックも続伸し半導体や大型IT関連が高い

 

  • 10日の米金融市場はNYダウが6日続伸、リスクオンの展開となりました。米国が7日夜、メキシコからの全輸入品への関税発動を見送ると発表したことで投資家心理が改善、安全資産としての債券を売り、株式を買い戻す動きが強まりました。米10年国債利回りは2.15%(前週末2.08%)と大きく上昇、ドル円相場は108.42円で取引されました。
  • NYダウ平均は6日続伸、前週末比78ドル(0.3%)高の26,062ドルで引けました。26,000ドル台を回復するのは5月6日以来1ヵ月ぶり、ダウ平均の6日続伸は2018年5月に8日続伸して以来、1年1カ月ぶりの連続上昇記録となります。
  • トランプ米大統領が7日夜、メキシコからの全輸入品への関税発動を見送ると発表、米国を巡る貿易摩擦が一段と厳しくなるとの見方が後退し、投資家心理が改善しました。金利上昇を受けゴールドマン・サックスが2%超上昇、アップルやスリーエム、アメリカン・エキスプレスなどが買われました。
  • S&P500種指数は前週末比13.39ポイント(0.47%)上昇。一般消費財、情報技術、金融が買われ、公益事業、不動産などが下落しました。
  • ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は前週末比81ポイント(1.0%)高の7,823と4日続伸しました。アルファベットが前週末比1.3%上昇、アマゾン・ドット・コムが同3.1%上昇しました。クアルコムは同2.6%高、マイクロン・テクノロジーが同2.7%高、エヌビディアは同2%高など半導体株の上昇が目立ちました。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は同2.5%上昇しました。投資家の不安心理を示す米VIX指数は15.94と前週末16.30から改善しました。

 

 

米国金融市場の主な指標

 

金利・為替

  1. 米10年国債利回り:2.15%(前日2.08%)
  2. ドル円相場:1ドル=108.42-108.43円(前日108.18-108.19円)

 

株式相場

  1. ニューヨークダウ30種平均:26,062.68ドル(前日比+78.74ドル)
  2. ダウの主な上昇寄与:ゴールドマン・サックス、アップル、スリーエムなど
  3. ダウの主な下落寄与:マクドナルド、ユナイテッド・テクノロジーズ、ベライゾンなど
  4. S&P500種株価指数:2,886.73ポイント(前日比+13.39ポイント)
  5. S&P業種別上昇セクター:一般消費財、情報技術、金融など
  6. S&P業種別下落セクター:公益事業、不動産、コミュニケーション
  7. ナスダック総合株価指数:7,823.17ポイント(前日比+81.07ポイント)
  8. フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,413.89ポイント(前日1378.81ポイント)
  9. 米VIX指数(恐怖指数):15.94(前日16.30)

 

商品

  1. ニューヨークWTI原油先物1バレル=53.26ドル(前日比-0.73ドル)
  2. ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,329.3ドル(前日比-16.8ドル)

 

 

マーケットが注目したと思われる主な材料

 

  • 米ニューヨーク連銀が発表した5月の調査によると、1年先のインフレ期待が0.1ポイント低下の2.5%と2017年末以来の水準に低下した。3年先のインフレ期待も0.1ポイント低下の2.6%となった。インフレ期待の低下は米連邦準備理事会(FRB)の利下げを巡る決定に影響を及ぼす可能性がある。
  • 米労働省が発表した4月の求人労働移動調査(JOLTS)は、非農業部門の求人件数(季節調整済み)が744万9,000件で前月から2万5,000件減少した。求人数は2018年11月(762万6,000件)に過去最高を記録して以来横ばいになっており、労働需要の伸びの鈍化を示唆した。
  • 英国立統計局(ONS)が発表した4月の月次国内総生産(GDP)は前月比0.4%減と、市場予想を下回った。自動車生産が統計開始以来、最大の落ち込みを記録した。欧州連合(EU)離脱を控えた操業停止が影響した。

 

 

【今日のポイント】 

 

FRBは景気後退を防ぐ予防的利下げに踏み切るか

 

  • 6月4日、パウエルFRB議長が米景気拡大維持のために「適切に行動する」と発言したことを、市場は「利下げ」が近いと解釈し、その後NY株式市場は大きく上昇しました。市場の期待に応えた以上、もはやその手を引っ込めることは困難と思われます。
  • 今月のFOMC(18・19日)では利下げが実施される可能性は低いと思われるものの、次回7月のFOMCでの「利下げ」の可能性を示唆するものと思われます。当面、12日の消費者物価指数(市場予想:コア前年比+2.1%)や、14日の小売売上高(前月比+0.6%)など5月の指標が注目されます。先週末の米雇用統計の非農業部門の新規雇用者数が市場予想を下回ったように、冴えない内容となれば利下げ期待が一段と盛り上がり、NY株式市場は目先の高値を試す可能性もあります。
  • 利下げは金利面から見た株価の相対的な投資魅力を高めるため、「利下げ→株高」の反応は短期的には正しいのですが、株式市場は中長期的には実体経済(ファンダメンタルズ)を反映するため株式市場が過度な楽観姿勢を強める場合は注意が必要です。つまり、FRBが利下げに転じるということは実体経済が回復への力を失っている可能性があると判断しているわけで、業績への懸念が高まる恐れがあります。
  • 仮に利下げを実施しても金融政策の効果が顕在化するには1年かそれ以上のタイムラグがかかる場合があります。つまりFRBが早期に利下げを実施しても実体経済がすぐに持ち直すとは限らず、過去には景気が持ち直す前に景気後退となった例もあります。
  • 仮にこれから実施される利下げが、景気の落ち込みを未然に防ぐ予防的利下げであると市場が認識し、実際にこれから発表される経済指標が改善し、再び回復軌道に復帰できるシナリオであれば株価は持続的な上昇が期待できます。1990年代に具体的な事例があります。
  • 1994年12月のメキシコ危機後に米債券市場で逆イールド(米10年債利回りとFF金利の逆転)が起き、FRBは利下げに踏み切りました。また、1998年7月にアジア通貨危機、その後にロシア危機が起きた後の逆イールド(同)の時にもFRBは利下げに踏み切りました。この2つのケースは、海外で起きた経済ショックが米景気に悪影響を及ぼす前にFRBは予防的に利下げを実施し、景気後退を回避した例として有名です。FRBの柔軟な政策対応で景気後退を回避した事例です。
  • 今年の金融市場は米中貿易協議の交渉難航、英国政治リスクの高まりからBrexitの先行きも極めて不透明です。既に実施された米国と中国の追加関税の影響も米消費者の購買力を奪い、米企業のコストアップに影響を与えると予想されます。米企業経営者の心理次第では設備投資や雇用の採用に慎重になり、現在好調な米個人消費に影響を与え、景気後退に繋がるリスクは否定できません。
  • 今回のFRBの対応は景気後退を未然に防ぐ予防的利下げと考えられますが、成功するのか、手遅れなのかは現時点で判断できません。目先、リスクオンが続き、NY株式市場が高値を更新し、日本株式も追随したとしてもこうしたリスクシナリオも頭の隅に置くべきです。
  • 短期の投資家はともかく、中長期目線の投資家は慎重な投資スタンスを継続することが必要です。株式であれば相対的に下値抵抗力が高いディフェンシブストックや、連続増配銘柄など、値上がり益よりもインカムを重視した戦略、先進国の国債など安全資産を組み入れた分散投資を徹底し、外貨資産には円ヘッジを掛けることなどが考えられます。

 

 

東京株式市場

 

  • 日経平均株価:21,134.42円(前日比+249.71円)
  • TOPIX:1,552.94ポイント(前日比+20.55ポイント)

 

 

データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)

https://nikkei225jp.com/nasdaq/

 

 

(お願い)

海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。

閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。

 

以上

 

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