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2019年6月7日
【米長期金利の低下はFRBに利下げを催促】(6月7日配信)
メルマガ 2019年6月7日(金)
おはようございます。
【米長期金利の低下はFRBに利下げを催促】
【6日の海外市場】
NYダウは4日続伸、原油先物価格が反発し石油株がダウを支える
- 6日の米金融市場は、メキシコへの経済制裁に対する警戒感がやや和らぎ、NY市場の主要3指数はそろって続伸しました。債券市場では過度な警戒感が後退し債券相場が下落し長期金利は若干上昇、為替相場はややドル高となりました。原油先物価格が反発したことで石油株がダウを押し上げました。
- ダウ工業株30種平均は4日続伸し、前日比181ドル(0.71%)高の25,720ドルで終えました。米ブルームバーグ通信が6日午後、「米国がメキシコからの輸入品に対する追加関税の発動を遅らせることを検討している」と報じ、投資家心理がやや和らぎました。ダウの4日間合計の上昇幅は905ドル(3.6%)となりました。
- アップルやボーイング、マクロソフトが買われ、マクドナルド、ジョンソンエンドジョンソンもダウを支えました。米原油先物相場が上昇し、前日は原油安を背景に下げが目立った石油株が軒並み買われました。シェブロンとエクソンモービルの石油2銘柄でダウ平均を約29ドル押し上げました。
- 投資家の不安心理を示す米VIX指数は15.93と前日の16.09から低下しました。アルファベット、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックスなど大型IT関連も総じて堅調で、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は前日比40ポイント(0.53%)高と続伸しました。
- アナリストの投資判断引き上げを受けた半導体大手のAMDが前日比7.8%上昇しました。ブロードコムが同2.6%上昇、エヌビディアは同1.7%高、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズも2%近く値上がりしました。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は同1.3%高と反発しました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:2.11%(前日2.13%)
- ドル円相場:1ドル=108.36-108.37円(前日108.25-108.26円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:25,720.66ドル(前日比+181.09ドル)
- ダウの主な上昇寄与:シェブロン、マクドナルド、アップル、J&Jなど
- ダウの主な下落寄与:ユナイテッドヘルス・グループ、トラベラーズ・カンパニーズ、ナイキ、メルクなど
- S&P500種株価指数:2,843.49ポイント(前日比+17.34ポイント)
- S&P業種別上昇セクターエネルギー、素材、情報技術、生活必需品など
- S&P業種別下落セクター:なし
- ナスダック総合株価指数:7,615.56ポイント(前日比+40.08ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,363.13ポイント(前日1,345.10ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):15.93(前日16.09)
商品
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=52.59ドル(前日比+0.91ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,342.7ドル(前日比+9.1ドル)
マーケットが注目したと思われる主な材料
- 米民間雇用調査会社のチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが6日まとめた米企業・政府機関による5月の人員削減計画は5万8,577人で、前月比46%、前年同月比で86%それぞれ増加した。1月から5月までの5カ月間でみると、小売業の削減計画が最多で、次いで工業製品と自動車が多かった。工業製品は前年同期比で7.7倍、自動車は3.1倍にそれぞれ増加した。
- ECBは6日の理事会で、リファイナンス金利を0.00%、中銀預金金利をマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。金利ガイダンスを変更し、金利据え置きの期間を、従来の「最低2019年末」までから「最低2020年上半期にかけて」に延長した。さらに新型の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO3)に適用される金利を、最も低い場合でマイナス0.3%(中銀預金金利に0.1ポイント上乗せ)とすることも決定した。ドラギ総裁は利下げや追加資産購入の可能性も視野に状況を見守る考えを示した。市場では、ドラギ総裁の利下げに関する踏み込みが浅かったとの見方が広がり、ユーロは対ドルで上昇、ドイツとフランスの株式や債券が売られた。
- ブルームバーグは、米当局はトランプ政権が表明しているメキシコへの関税発動の先送りを検討していると、報じた。中米からの不法移民や違法薬物の流入阻止を巡って両国の協議が続いているためだとしている。投資家心理の改善に影響し株価の上昇材料となった。
- トランプ大統領は6日、中国からの輸入品3,250億ドル相当に追加関税を課す方針に関して、20カ国・地域(G20)首脳会合(大阪サミット)後に決断する考えを示した。フランスのカーンでマクロン仏大統領と会談後、記者団に対し「G20の後に決断する」と発言。「習主席に会う。どうなるか様子を見ることになるが、決定は恐らくG20の後になるだろう」と述べた。
【今日のポイント】
米長期金利の低下はFRBに利下げを催促
- 米金融市場で長期金利(米10年国債利回り)が大きく低下し、FRBが誘導目標とする政策金利である米FF金利の水準を下回ってきました。通常残存期間が長いほど金利が高くなりますが、短い期間の金利と逆転することを「逆イールド」と言います。
- ここで問題となるのは政策金利(FF金利)が長期金利を上回る期間が長く続くと、金融政策が実体経済を冷やす恐れがあることです。5日の米長期金利は2.1%と政策金利(2.25-2.50)の下限を下回っています。政策金利が実体経済(と市場が思っている長期金利の水準)を超えている状態です。いわゆる引き締めの状態と言え、景気にはマイナスの圧力がかかるわけです。
- 経済が過熱状態にあるならば政策金利をどんどん引き上げて景気を冷やす政策を取りますが、現在は米景気に過熱感があるとはいえず、むしろ製造業の景況感は減速しています。
- 市場はすぐに米国経済がリセッション(マイナス成長)になると想定しているとは思いませんが、トランプ大統領が自由貿易連合を組むメキシコに対して、不法移民対策が不十分だとして制裁関税を課すと表明したことに警戒感を強めています。こうした中で金融市場はFRBに対して、対応の遅さに苛立ち始めたようです。
- 当局の金融政策を反映しやすい、より期間の短い2年債利回りは5日に1.851%まで低下し、FF金利よりも0.5%も低くなりました。単純化して言えば市場は0.25%ずつ2回の利下げを想定しているとも言えます。経済の悲観を織り込み始めていると言えます。
- 「逆イールド」は「ISM製造業景況指数の50割れ」とともに、数か月後の景気後退を示唆する2つの重要なサインとして知られています。逆イールドが解消するにはFRBの利下げによって政策金利が低下するか、市場参加者の景気への信頼感が回復して長期金利が上昇するかのどちらかによって解消します。
- 逆イールドによって景気が後退しなかったケースがあります。1994~1995年にかけての金融引き締め期です。90年代初頭に米国がS&L危機(金融危機)を克服して94年からFRBは引き締めに入り7回利上げしました。ところが1994年にメキシコで通貨危機が発生。翌年95年に逆イールドが発生した際にFRBは一転して利下げを実施しました。NY株式市場は一時的に下落したものの、再び上昇軌道に復帰しました。この時米国は景気後退に陥らず、結局、90年代の120ヵ月の戦後最長の景気拡大期間となりました。
- 現状では、FRBは利下げを実施する可能性が高まっています。FRBは市場の期待を裏切ると株式市場が失望し、急落するリスクがあるからです。FRB高官は最近の講演で、金利とインフレ率が低水準にある中で、将来的に景気リスクが高まれば適切に行動すると発言しています。
- 目先の景気指標としては7日の米雇用統計、12日の米CPI、14日の小売売上高などが注目されます。
東京株式市場
- 日経平均株価:20,774.04円(前日比-2.06円)
- TOPIX:1,524.91ポイント(前日比-5.17ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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