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2019年6月3日
【引き続き不安定な相場展開か、しかしドルの短期テクニカル指標は底入れを示唆】(6月3日配信)
メルマガ 2019年6月3日(月)
おはようございます。
【引き続き不安定な相場展開か、しかしドルの短期テクニカル指標は底入れを示唆】
【31日の海外市場】
ダウが前日比350ドル超下落し6週続落 対メキシコ関税を嫌気
- 31日の海外の金融市場は世界的にリスクオフのムードが強まり債券買い・株式売りが進みました。米独の長期金利が一段と低下(債券相場は上昇)、特にドイツの10年物国債利回りはマイナス0.21%まで低下(債券価格は上昇)し、約3年ぶりに過去最低を更新しました。
- 米長期金利は2.12%(前日は2.21%)まで低下し、NYダウは前日比354ドル安の24,815ドルと大幅反落となりました。S&P500とナスダック総合指数もそれぞれ同1.32%安、同1.51%安となり、主要3指数そろっての大幅反落となりました。NYダウの終値は1月29日以来、約4カ月ぶりの安値となりました。週間ではNYダウは6週続落し、2011年6月以来の長期続落を記録しました。
- 米中貿易戦争の激化・長期化見通しに加え、トランプ米大統領が突如「メキシコからのすべての輸入品に5%の関税を課す」と発表したことが新たな株式売り材料となりました。メキシコからの輸入比率の高い自動車株やビール株が大幅に下落したほか、米長期金利の低下を受けて金融株も軒並み下落しました。メキシコに多くの工場を持つ米GMは終値ベースで前日比4%、フォード・モーターは同2%下げました。金融のゴールドマン・サックスは同2.6%下落しました。
- 外国為替市場ではメキシコペソが急落、1ドル=19.6ペソ近辺と、関税表明前から0.45ペソほどドル高・ペソ安の水準で推移しました。リスク回避の円買いも進み、対ドルの円相場は1ドル=108円35銭付近と円高・ドル安が進んでいます。
- 世界的な景気リスクを受けて原油先物価格は大幅に下落、NY市場のWTI原油先物価格は前日比5.5%下落、1バレル=53.5ドルとここ1ヵ月で約10ドルも下落しました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:2.12%(前日2.21%)
- ドル円相場:1ドル=108.36-108.37円(前日109.60-109.61円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:24,815.04ドル(前日比-354.84ドル)
- ダウの主な上昇寄与:ボーイング、ゴールドマン・サックス、アップルなど
- ダウの主な下落寄与:マクドナルド
- S&P500種株価指数:2,752.06ポイント(前日比-36.80ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:不動産、公益事業
- S&P業種別下落セクター:コミュニケーション、エネルギー、情報技術など
- ナスダック総合株価指数:7,453.15ポイント(前日比-114.57ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,296.18ポイント(前日1,315.29ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):18.71(前日17.30)
商品
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=53.50ドル(前日比-3.09ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1311.1ドル(前日比+18.7ドル)
米国市場に影響したと思われる主な材料
- 4月の米個人消費支出(PCE)価格指数は前月比0.3%上昇と、2018年1月以来15ヵ月ぶりの大幅な伸びとなった。4月の前年同月比は1.5%上昇と、3月の1.4%上昇から加速した。最近の物価の弱含みが一時的とする米連邦準備理事会(FRB)の主張に沿う動き。しかし、最近、原油価格が下落しており今後の物価上昇率は鈍化する可能性もある。
- 中国国家統計局が31日発表した5月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.4と節目の50を下回った。市場予想は49.9だった。予想以上の悪化となり、中国の製造業の活動は再び低迷していることを示唆している。
【今週のポイント】 (6月3日-6月7日)
引き続き不安定な相場展開か、しかしドルの短期テクニカル指標は底入れを示唆
- 今週の東京株式市場は引き続き直近の安値圏で不安定な展開が想定されます。日経平均は5月の安値20,751円を下回ったため、次のメドとしては20,300~20,500円のゾーンが意識されます。
- 米中の貿易摩擦・覇権争い激化・長期化が予想される中、新たにメキシコとの政治的軋轢が加わり、投資家はリスク回避姿勢を強めています。為替相場が日銀短観3月調査の想定為替レート1ドル=109.50円を下回ってきたことで、投資家は業績の下方修正を織り込み始めた可能性があります。
- 今週は月替わりでISM製造業景況指数や米雇用統計など米国を中心に重要な景気指標の発表が多く、環境が急変した5月の米経営者心理への影響が注目されます。31日に発表となった中国の5月製造業PMIは49.4と節目の50を下回るなど、再び失速の気配が出てきました。
- 米長期金利が急速に低下する中、パウエルFRB議長の講演やECB理事会、週末にはG20財務相・中銀総裁会議など重要なイベントを控え、金融政策の思惑も高まりやすいと思われます。独長期金利が過去最低のマイナス金利まで低下したこともあり、海外ファンド筋は米債券買い・ドル買い/株式売り・商品(原油)売りのポジションを短期で増やした可能性があります。しかし金利低下のスピードがやや速く、イベントを前にポジションを一斉に巻き戻す可能性はあります。
- 当面の日経平均(31日の引け値20,601円)の価格ポイントは以下の通りです。31日の終値は昨年12月の安値から今年4月の高値までの上昇幅の半値押し(20,655円)を下回ってきました。他の重要な支持線も下回ってきたため、次は20,300~20,500円のゾーンが意識されます。2月8日の安値20,315円がサポートラインとして意識されます。
- 国内機関投資家は一般的に3月の月中平均値(日経平均株価は21,415円)を新年度(4月~)の株式運用の簿価と認識しています。31日はこの水準を大きく割り込んできたため、株式に買いを入れる年金資金のリバランスの買いが入りやすいレベルとなってきました。6月の株主総会を控えて企業の自社株買いも入り易く、日銀のETF買いと合わせて相場の下支えとなるでしょう。
- ドル円相場(31日は108.77円)は日経平均と連動して動くため注目されます。今後の水準は1月31日の108.68円、1月31日の107.52円が意識されます。短期的なテクニカル指標(ストキャスティクス等)は、ドルが安値圏にあることを示唆しており、下げ止まりからポジションの巻き戻し次第ではドルの反発の機会も近いと思われます。
- NYダウ平均(31日の引け値24,815ドル)は株価チャートのバランスが悪くなってきました。25日移動平均線、200日移動平均線、日足の一目均衡表の転換線も下向きになってきており、反発に転じても上値が抑えられやすくなっています。下値のポイントは週足一目均衡表基準線の24,224ドル、次は2018年6月27日に付けた24,117ドルが目安となります。
- なお、中長期の視点で見るとNYダウ平均は2018年から2019年にかけて、26,600~26,800ドル台で3回高値を付ける「三尊天井」(2018年1月26日26,616ドル、同10月3日26,828ドル、2019年4月23日26,656ドル)に近い形となっています。23,500ドルを下回ると「三尊天井」が確定し、2018年と19年が歴史的な高値となる可能性が出てきます。現時点ではそこまでの心配は必要ありませんが、米中貿易戦争が一段と悪化し、米企業収益に決定的な影響が出るようですとシナリオが変わってきます。注意したいところです。
今週の重要イベント
(6月3日-6月8日)
3日(月)
- 米5月ISM製造業景況指数
- 米4月の建設支出
- 米5月の自動車販売
- トランプ大統領、英仏訪問(~6日)
- アップル年次開発者会議(~7日)
- 1-3月期法人企業統計
4日(火)
- 米4月の製造業受注指数
- 米4月の耐久財受注(確報値)
- ユーロ圏CPI、失業率
- FRB「枠組み」会合(~5日、シカゴ)
- パウエルFRB議長の講演
- ウイリアムズNY連銀総裁の講演
- 豪州金融政策決定会合
- 中国「天安門事件」から30年
- マネタリーベース
5日(水)
- ベージュブック(地区連銀経済報告書)発表
- 米5月のADP雇用統計
- 米5月のISM非製造業景況指数
- クラリダFRB副議長講演
- ボウマンFRB理事議会証言
- 3月4日発動〈特別会計措置〉期限
- 豪州1-3月期GDP
- 欧州委員会、イタリア財政見直し→EU財政規律違反通告?
- 英中銀〈次期〉総裁候補応募締め切り(10月指名意向)
6日(木)
- 米新規失業保険申請件数(5月31日)
- 1-3月期非農業部門労働生産性、単位労働費用(確報値)
- 米4月貿易収支
- ウイリアムズNY連銀総裁の講演
- 国際金融協会(IIF)、春季会合(~7日、東京)→カーニー英中銀総裁、黒田日銀総裁講演
- ECB理事会
- 規制改革推進会議(首相官邸)
7日(金)
- 米5月非農業部門雇用者数変化、5月失業率
- 米4月消費者信用残高
- 中国外貨準備高
- 4月家計調査
- 4月毎月勤労者統計
- 4月外貨準備高
- 4月景気動向指数
- FOMC開催(18-19日)前「ブラックアウト」期間(8日~)
- メイ英首相、保守党「党首」辞任
- サッカーFIFA女子W杯フランス大会(~7月7日)
8日(土)
- G20貿易・デジタル経済相会合(8-9日、つくば市)
- G20財務相・中銀総裁会議(8-9日、福岡市)
(注)太字は注目されるイベント
(予定であり変更の可能性があります)
東京株式市場
- 日経平均株価:20,601.19円(前日比-341.34円)
- TOPIX:1,512.28ポイント(前日比-19.70ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
(お願い)
海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。
閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。
以上
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