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メルマガ 2019年5月29日(水)
おはようございます。
【6月のG20での米中首脳会談「開催」への期待は続く】
【28日の海外市場】
投資資金は株式から国債にシフト、米長期金利は2.26%まで低下
- 28日の米金融市場は長期金利が低下(国債価格は上昇)し、NYダウ平均は前週末比200ドルを超える下落となりました。欧州の政治リスクや米中貿易交渉の不透明感を受け、投資マネーは株式から安全資産としての国債にシフトしました。
- ドイツ経済の減速や欧州政治の不透明感などを受け独連邦債10年物の利回りは一時マイナス0.153%まで低下(国債価格は上昇)しました。米国債も買われ米長期金利は一時2.26%まで低下、5月23日の水準を下回り2017年10月以来、1年8ヵ月ぶりの低水準となりました。
- NYダウ平均は前週末比237ドル安の25,347ドルと反落しました。前週までの下落を受けた値ごろ感から買いが先行しましたが、米中貿易摩擦が長引くとの見方が根強く、午後は売りが優勢になりました。
- トランプ米大統領が28日、「米国は(中国と取引する)準備はできていない」と発言、米中交渉が長引くとの観測が広がりました。米長期金利が低下し、利ざや縮小の思惑からゴールドマン・サックスは同1.8%安、JPモルガン・チェースは同1%の下落となるなど金融株が下げました。
- ダウ採用のアップル、マイクロソフト、シスコシステムズなどハイテク関連も総じて下落、インテルは同2.2%安となりました。アルファベット、フェイスブック、アマゾンは小幅に上昇したためナスダック総合株価指数は前週末比29ポイント(0.39%)安と反落したものの、下落率はNYダウ(-0.93)を下回りました。
- 半導体関連はAMDが同10%近く上昇したものの、マイクロン・テクノロジーが同3.1%安、クアルコムが同1.3%安、ブロードコム、エヌビディアが下落。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は0.89%の下落となりました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:2.26%(前日2.32%)
- ドル円相場:1ドル=109.28-109.29円(前日109.54-109.55円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:25,347.77ドル(前日比-237.92ドル)
- ダウの主な上昇寄与:ビザ
- ダウの主な下落寄与:ユナイテッドヘルス・グループ、ゴールドマン・サックス、スリーエム、P&Gなど
- S&P500種株価指数:2,802.39ポイント(前日比-23.67ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:コミュニケーション
- S&P業種別下落セクター:生活必需品、公益事業、ヘルスケア、不動産など
- ナスダック総合株価指数:7,607.35ポイント(前日比-29.66ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,300.30ポイント(前日1,311.97ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):17.50(前日15.85)
商品
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=59.14ドル(前日比+0.51ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,277.1ドル(前日比-6.5ドル)
米国市場に影響したと思われる主な材料
米消費者信頼感指数は市場予想を上回る
- コンファレンス・ボード(CB)が発表した5月の米消費者信頼感指数は4.9ポイント上昇の134.1と市場予想の130.0を上回り、昨年11月以来の高水準を付けた。4月の129.2も上回る。現況指数が200年12月以来約18年ぶり、期待指数も6ヵ月ぶりに高い水準となった。堅調な労働市場と賃金上昇が指数の改善を支えている。ただし米中貿易摩擦の影響が今回の統計に完全に反映されていない可能性がある。
- 欧州連合(EU)の欧州委員会が28日発表した5月の景況感指数は105.1と、前月改訂値の103.9から上昇。市場予想は104.0だった。輸出受注と事業環境はマイナスが続いたものの、生産期待の大幅な向上を背景に鉱工業景況感が改善した。国別では、ユーロ圏3大経済国のドイツ、フランス、イタリアのすべてで前月を上回った。
米連邦住宅金融庁(FHFA)が28日発表した1~3月期の全米住宅価格指数(季節調整済み)は前期比1.15%の上昇となり、2014年4~6月期以来の低い伸び率となった。前年同期比でも5.05%の上昇で、4期連続で上昇ペースが鈍化した。
【今日のポイント】
6月のG20での米中首脳会談「開催」への期待は続く
- 米中問題の悪化により2国間の貿易合意に対する期待感はかなり低下しています。しかし、過度に悲観的になる必要もないと思います。それはNY株式市場が調整色を強めるとトランプ大統領の態度は軟化する傾向にあること、そして6月下旬のG20首脳会議(大阪開催)で米中首脳会談が開催される可能性は完全に消えたわけではないからです。
- 来年の米中間選挙に向けて迅速な対応をしている米国に対して、中国は長期的な姿勢で構えることが可能だとの見方があります。しかし中国側にも時間的な余裕があるとは考えにくく、6月下旬の米中首脳会談「開催」に対する期待は続くと思われます。
- 米政府は5月15日、米企業が許可なく中国のファーウェイと取引することを禁じると発表しました。21日には監視カメラ大手のハイクビジョンに対して同様の措置が取られました。両社は既に安全保障上の問題を理由に昨年8月、「2019年度米国防権限法」に基づいて、米国政府機関との取引を禁じる中国企業(5社)としてリストアップされています。今回は米民間企業に対しても速やかな対応を迫る格好となりました。2社以外の残る3社にも適用される可能性があります。
「2019年度米国防権限法」(2018年8月13日に成立)
規制対象5社
ファーウェイ:スマホ端末世界2位、通信基地局世界最大手
ZTE:スマホ端末、通信基地局大手
ハイクビジョン:監視カメラ世界最大手
ダーファテクノロジー:監視カメラ世界2位
ハイテラ:警察や防災・鉄道・船舶向け無線の世界最大手
規制の内容
米政府機関は2019年8月以降5社製品、および5社製の部品を含む製品の調達を禁止する。さらに2020年8月以降は5社製品を社内で使用している米国内外企業との取引も禁止へ。
- 政府の規制を受けてファーウェイとの取引中止を公表した企業リストを見ると、ファーウェイの生産に大きな影響を与える可能性が高く、事実上の禁輸措置には長期間耐えられない可能性が高いと思われます。また中国ハイテク企業の取引排除がグローバルに拡大すれば中国の雇用に影響が出ることが避けらず、よって中国側にも時間的余裕はあまり残されていないと見ることができます。依然として両国共に合意に向かう動機は残されていると考えられます。
- 一方、中国のハイテク企業の生産減少が日本や米国の取引先(半導体、電子部品、ハイテク素材、工場のFA危機等)の業績に与える影響はこれから顕在化する可能性があります。中長期的に見れば欧州や米国など中国以外でファーウェイに代わる新たなライバル企業が台頭し、日米の企業の部品などの需要はそちらにシフトする可能性はあるものの、短期的には影響は避けられないと思われます。
- 日米株式市場では当面、外需関連よりも内需関連(ソフトウェア、電力・ガス、通信、鉄道など公益株やREIT等)、景気敏感や市況関連といったシクリカルよりも景気に影響されにくい食料品や医薬品などディフェンシブに投資資金が向かいやすいと思われます。
【ファーウェイとの取引を停止した主な企業】(ロイター報道)
アルファベット(ハードウェア・ソフトウェア・技術的サービス)
ルメンタム・ホールディングス(光学部品)
コルボ(半導体)
アナログ・デバイシズ(半導体デバイス)
インファイ(半導体)
アーム(半導体設計)
パナソニック
なお、ブルームバーグによると下記のメーカーは従業員に対して追って連絡があるまで重要なソフトウェアや部品をファーウェイに提供しないと伝えた。
インテル
クアルコム
ザイリンクス
ブロードコム
東京株式市場
- 日経平均株価:21,260.14円(前日比+77.56円)
- TOPIX:1,550.99ポイント(前日比+3.99ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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