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2019年5月21日
【日本の1-3月期実質GDPは予想外のプラス成長、しかし輸入の落ち込みはリーマンショック以来最大】(5月21日配信)
メルマガ 2019年5月21日(火)
おはようございます。
【日本の1-3月期実質GDPは予想外のプラス成長、しかし輸入の落ち込みはリーマンショック以来最大】
【20日の海外市場】
NY株式市場は主要指数がそろって続落、半導体関連が大幅下落
- 20日の米金融市場は、ドル円相場は110円台で取引され、長期金利は前週末と比べてやや上昇しました。NY株式市場は中国関連に安いものが目立ち、特に大型IT関連や半導体関連が大きく下落しました。欧州でもドイツの大手半導体株が大幅下落し、ドイツ株式指数(DAX)は大幅続落となりました。当面、ハイテクセクターはファーウェイ問題に影響を受けることは避けられない見込みです。
- NYダウ平均は続落し、前週末比84ドル(0.33%)安の25,679ドルと続落しました。米企業が中国通信機器メーカー、ファーウェイへのサービスや部品の供給を止めると伝わり、半導体株など取引の多い銘柄が売られました。アップルが同3%下落しダウ平均を1銘柄で40ドル引き下げました。ボーイングやスリーエムなど中国向け売上高の大きい銘柄の下げも目立ちました。半面、保険大手のユナイテッドヘルス・グループやアメリカン・エキスプレス、JPモルガン・チェース、ベライゾンがダウを支えました。
- アルファベット(グーグル)がファーウェイとの取引を停止する見通しと伝わりました。半導体大手のクアルコム、ザイリンクスなど半導体メーカーも同様の対応を取ると報じられ、収益を圧迫するとの懸念が投資家心理を冷やしました。ダウ採用銘柄のインテルは同2.9%下落しました。ナスダック総合は同113ポイント(1.46%)下落、フィラデルフィア半導体指数は同4%下落しました。
- 一方、通信大手のベライゾン・コミュニケーションズはプラス1.6%と大幅に上昇し、ダウ平均の支えになりました。米連邦通信委員会(FCC)のパイ委員長が米携帯電話3位のTモバイルUSと同4位のスプリントの経営統合の承認を委員会に薦める考えを示したと伝わりました。米携帯電話市場の競争が緩和する思惑が強まりました。
米国金融市場の主な指標
金利・為替
- 米10年国債利回り:2.41%(前日2.39%)
- ドル円相場:1ドル=110.06-110.07円(前日110.01-110.02円)
株式相場
- ニューヨークダウ30種平均:25,679.9ドル(前日比-84.10ドル)
- ダウの主な上昇寄与:ユナイテッドヘルス・グループ、アメリカン・エキスプレス、IBMなど
- ダウの主な下落寄与:アップル、スリーエム、ボーイングなど
- S&P500種株価指数:2,840.23ポイント(前日比-1.93ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:公益事業、金融、エネルギー
- S&P業種別下落セクター:情報技術、不動産、素材、コミュニケーションなど
- ナスダック総合株価指数:7,702.38ポイント(前日比-113.91ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,345.58ポイント(前日1402.01ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):16.31(前日15.96)
商品相場
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=63.1ドル(前日比+0.34ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,277.3ドル(前日比+1.6ドル)
米国市場に影響したと思われる主な材料
- 米シカゴ連邦準備銀行が20日発表した4月の全米活動指数は前月から0.5ポイント低下しマイナス0.45となった。マイナスは2カ月ぶり。同指数はゼロを下回ると米経済の成長ぶりが過去の平均を下回っていることを意味する。4月の数値は経済活動が鈍化したことを示した。米経済成長の実体により即しているとされる3カ月の移動平均は、前月から0.08ポイント低下のマイナス0.32で、3カ月連続でマイナス圏となった。
- グーグルは19日、「我々は(米政府の)指示に従っており、影響を精査している」との声明を発表した。ファーウェイに一部ソフトウエアの供給を制限する可能性があることを示唆した。独半導体大手も部品供給を一部停止した。ファーウェイはスマートフォン(スマホ)の基本ソフト(OS)にグーグルの「アンドロイド」を採用。米商務省によるファーウェイに対する輸出規制が16日に発効したことに対応する。
【今日のポイント】
1-3月期実質GDPはプラス成長、しかし輸入の落ち込みはリーマンショック以来最大
- 消費税増税の判断材料の一つとされた1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率でプラス2.1%と市場予想のマイナス0.3%に反し増加しました。GDP統計の発表をきっかけに円相場はじわり下落し、株式市場では日経平均が一時180円近く上昇しました。
- GDP成長率への寄与度をみると内需がプラス0.1%、外需が0.4%とともにプラスを維持しました。外需の内訳は輸出が前期比年率で2.4%減となりGDPを0.4%押し下げた一方、輸入が同4.6%と大きく落ち込み、GDPを0.9%も押し上げました。輸入の前期比年率の落ち込みはリーマンショック直後の2009年1-3月期以来10年ぶりの大きさです。日本の内需がそれだけ弱かったことを示しており、とても楽観できる状況ではありません。
- 安倍首相の側近中の側近と言われる萩生田自民党幹事長代行は16日、メディアとのインタビューで再び消費税延期の可能性に言及しました。発言内容は4月の発言と同様のものであり、6月短観(7月1日発表予定)を判断材料として、増税延期の必要性を訴えるものでした。ただし、今回は延期の条件としてかねて挙げてきた「リーマンショック級の出来事」に関し、「予兆が十分考えられるならば、そこで決断することはおかしなことではない」とも述べており、先行きに対する予想の立て方次第で延期判断を下すことにも含みを持たせました。
- 読売新聞調査研究本部の小田客員研究員は、安倍首相は衆参同日選を意識しており、首相の衆議院解散戦略は「勝てる戦場を選ぶこと」だと分析しています。野党共闘の行方を見極め、自公維3党の議席をどう確保するかがポイントだという読みです。
- 同紙の4月の世論調査で、令和の日本が良い方向に進むと「思う」人の割合は58%にのぼります。令和という新しい時代を迎えお祝いムードも高まっています。安倍内閣支持率は54%と回復しています。自民党支持率は40%を得て、立憲民主党は4%、共産党3%、国民民主党の1%を大きく引き離しています。
- 20日の報道では、公明党大阪本部が維新の会が主張する「大阪都構想」に大筋で賛成する方針を大阪維新の会に伝えていたことが報じられています。維新の会が先日の府知事・市長のダブル選挙を制したことから方針を転換したと伝えられます。維新の会は公明党が都構想への反対姿勢を崩さない場合、次期衆議院選で公明党の現職議員のいる関西6選挙区で対立候補を立てる考えを繰り返していました。明らかに衆議院解散を意識した公明党の対応と言えるでしょう。
- 2020年は東京五輪・パラリンピック(7~9月)が予定されます。米国では11月に大統領選挙があります。2021年は9月に安倍首相の自民党総裁任期満了、10月に衆議院議員の任期満了となります。任期ギリギリの解散は追い込まれ解散といわれ選挙には不利です。こう考えると2019年はタイミングとしては悪くありません。
- マーケットのメインシナリオは、消費税増税は「延期されない」ですが、日本の内需の弱さが1-3月期のGDPで改めて確認されたうえに、米中関係の悪化、金融市場の反応なども影響するため、現状では延期の可能性が高まっていると思われます。G20において米中首脳に物別れが生じれば増税延期は十分あり得るシナリオと思われます。関連するイベントは6月26日の通常国会会期末、6月28-29日のG20首脳会議、準備期間を考えると7月1日公表の6月短観が最後の判断のタイミングと言えそうです。
東京株式市場
- 日経平均株価:21,301.73円(前日比+51.64円)
- TOPIX:1,554.92ポイント(前日比ポイント+0.67)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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