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メルマガ 2019年5月16日(木)
おはようございます。
【米国・中国双方が強気に出る理由】
【15日の海外市場】
米長期金利は1カ月半ぶりの低水準、主要株価指数は続伸
- 15日の米金融市場は、長期金利が大きく低下(債券価格は上昇)しドル円相場はややドル安・円高、NY株式市場の主要3指数はそろって続伸しました。米長期金利は中国の経済指標の下振れや米国の4月の小売売上高の下振れなどが影響し2.37%と1ヵ月半ぶりに低い水準となりました。ドイツの長期金利が低下した影響も受けました。
- ドイツの長期金利は一時マイナス0.13%台と、2016年9月以来2年8カ月ぶりの低水準を付けました。米中貿易摩擦の激化による世界経済の先行き不安が強まっているほか、イタリア財政への懸念が再燃し、安全資産とされるドイツ国債への資金逃避が加速しました
- 15日のNY株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比115ドル(0.45%)高の25,648ドルで引けました。一時同190ドル安まで売られたものの、トランプ米大統領が自動車の追加関税導入への判断を最大6カ月先送りしそうだとの米メディア報道を受け、投資家に安心感が広がり買戻しが加速しました。自動車株価が買われたほか、ダウ採用銘柄では航空機のボーイング、クレジットカードのビザ、ウォルト・ディズニーなどがダウの上昇に寄与しました。
- 投資家の不安心理を示す米VIX指数は16.44と前日の18.06から低下。投資家のリスクテイク姿勢が強まり、アップルは前日比1.2%高、アルファベットは同3.9%高、フェイスブック3%高、アマゾン・ドット・コム同1.7%高など大型ハイテク株の上昇が目立ちました。ブロードコムやAMD、ザイリンクスなど半導体関連も総じて高くフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は同0.81%上昇。ハイテク株の構成比率が高いナスダック総合株価指数は1.13%上昇しました。
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.37%(前日2.41%)
- ドル円相場:1ドル=109.57-109.58円(前日109.64-109.65円)
- ニューヨークダウ30種平均:25,648.02ドル(前日比+115.97ドル)
- ダウの主な上昇寄与:ボーイング、ビザ、アップルなどなど
- ダウの主な下落寄与:スリーエム、JPモルガン・チェース、キャタピラーなど
- S&P500種株価指数:2,850.96ポイント(前日比+16.55ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:コミュニケーション、情報技術、生活必需品など
- S&P業種別下落セクター:金融、素材、公益事業
- ナスダック総合株価指数:7,822.15ポイント(前日比+87.65ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,454.50ポイント(前日1,442.83ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):16.44(前日18.06)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=62.02ドル(前日比+0.24ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,297.8ドル(前日比+1.5ドル)
米国市場に影響したと思われる主な材料
米経済指標は、強弱まちまちだった。中国の経済指標はやや下振れた。
- 米国の4月の小売売上高が前月比0.2%減と、市場予想の0.2%増に反して落ち込んだ。3月は同1.6%増と好調だったが4月は失望する結果となった。小売売上高の下振れで個人消費の先行き懸念が広がり米長期金利は2.37%と大きく低下した。
- 米国の4月の鉱工業生産指数は前月比0.5%低下し、市場予想の同0.1%上昇に反して落ち込んだ。自動車・同部品が2.6%低下。米企業は中国製品に対する最新の追加関税が発効する前に在庫を積み上げており、ここ数カ月間は米在庫が膨れ上がっている。過剰在庫の影響で自動車生産が停滞している自動車や航空機などの生産が減った。鉱工業設備稼働率は1年2ヵ月ぶり低水準の77.9%(前月78.5%)となった。自動車関連の悪化が目立つことから関税の影響が顕在化している可能性がある。
- 5月のNY連銀製造業景況指数は前月比7.7ポイント上昇の17.8となり、市場予想(8.0)を大幅に上回った。新規受注や出荷が好調で2カ月連続の上昇となった。個別項目では「新規受注」が9.7で前月より2.2ポイント上昇したほか、「出荷」は7.7ポイント上昇の16.3だった。今後6カ月の景況見通しは30.6で、前月より18.2ポイント上昇した。製造業全般では経営者の心理は悪化していない可能性を示唆している。
- 全米住宅建設業協会(NAHB)が15日発表した5月の住宅市場指数は66で、前月の改定値から3ポイント上昇した。2カ月連続の上昇で、2018年10月以来7カ月ぶりの高水準に回復し、市場予想(64程度)を上回った。住宅ローン金利の低下で住宅建築業者の景況感が回復しつつある。
- 中国国家統計局が発表した4月の鉱工業生産は前年同月比5.4%増と、前月から伸びが鈍化し、市場予想を下回った。このほか、4月の小売売上高は前年比7.2%増と伸び率は3月の8.7%から縮小した。中国政府高官が追加の経済対策の発動を示唆したことで15日の上海総合は前日比1.9%高で引けた。
- ドイツ連邦統計庁が発表したドイツの第1・四半期の国内総生産(GDP)速報値は前期比0.4%増となり、3四半期ぶりにプラス成長を回復した。15日の独DAX指数は同0.9%の上昇となった。
- メディア大手のロイターは、トランプ米大統領が自動車と自動車部品に対する追加関税導入を巡る決定を最大6カ月先送りする可能性がある、と報じた。商務省は2月、通商拡大法232条に基づく自動車関税についての報告書をトランプ大統領に提出したが、報告書が勧告する措置について今月18日までに最終決定することになっている。NY株式市場の買い材料となった他、ユーロ相場の買戻し材料となった。
【今日のポイント】
米国・中国双方が強気に出る理由
4月末の米中閣僚級貿易協議は合意が見送られ、事実上の継続協議となりました。米国・中国がそれぞれ強気に出ている理由、そしてリスク要因を考えてみましょう。
【米国が強気に出ている理由】
1. 米経済が極めて好調に推移している
2. NY株式市場が過去最高値圏にあるなどトランプ政権の経済政策や通商政策に対して市場の評価が高まっていた
(S&P500種株価指数は4月30日に史上最高値を更新)
3. トランプ大統領の支持率が46%(4月のギャラップ社の調査)と就任以来最高になった。うち共和党支持者の支持率は91%と18年11月に次ぐ高さ
4. 米国のインフレ率がFRBの目標を下回っており、景気が減速した場合はトランプ大統領がFRBに対して追加緩和を迫ることができるとの読み
(米国経済のリスク要因)
- 新たな関税が課されると一部の企業ではコストを顧客に転嫁できずコストアップ要因となり、企業収益の悪化につながるリスクがある
- 関税によるコストを顧客に転嫁する計画の企業(例えばアップル)の場合、消費者は以前よりも高い価格を支払うことになり、それ以外の商品やサービスに費やす費用が少なくなる(消費の抑制→経済の下押し要因)
- ある企業は顧客に対して関税によるコストを転嫁しようとするが、顧客が購入を控え需要が失われる(例えば自動車など高額商品)
- 関税によって中国からの安価な輸入コストの低い供給者から財を購入することで、米国の物価の安定に寄与してきたが、今後はインフレリスクが出てくる。
【中国が強気に出ている理由】
1. 昨年来の経済対策(金融緩和、インフラ投資、所得税率引き下げ、製造業の増値税率引き下げ、法人税率の引き下げ、企業の手数料の引き下げなど)で景気の底入れが明確となりつつある
2. 上海総合指数が年初来急上昇するなど経済回復に対する市場の評価も高まっていた
3. 中国は米国が知的財産権や技術移転に関して突き付けている要求に対して例外を設けたいと考えている。トランプ政権の終焉を「辛抱強く待つ」作戦に切り替えた可能性がある。中国のある高官は「時間は我々の側にある」と述べた。
(中国経済のリスク要因)
- 今回の2,000億ドル分の税率を10%から25%に引き上げた場合、中国の経済成長率へのマイナス影響は1%程度と大きくなる(OECDの試算)
- 中国の対米輸出の減少が現実になると中国の巨額の貿易黒字が縮小に向かい、外貨準備高(多くがドル資産)が積み上がらなくなる。外貨準備高は中国経済や人民元の信用の裏付けともいえるため、中国経済への先行き不安が高まる
- グローバル企業が東南アジアなどで新たにサプライチェーン(供給網)の再構築に動き出すと、「世界の工場」としての中国の位置づけが揺らぎ、投資や輸出に影響し、経済成長率が大きく低下する恐れがある
東京株式市場
- 日経平均株価:21,188.56円(前日比+121.33円)
- TOPIX:1,544.15ポイント(前日比+9.17ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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