メルマガ
2019年5月10日
【重要な水準に来たドル円相場】(5月10日配信)
メルマガ 2019年5月10日(金)
おはようございます。
【重要な水準に来たドル円相場】
【日経平均の価格ポイント】
【衆参同日選と株式市場】
【9日の海外市場】
米金融市場はリスクオフムードが継続、S&P500種とナスダックは4日続落
- 9日の米金融市場は、債券が買われ(長期金利は低下)、株式が売られるリスクオフの流れが継続しました。為替市場では1ドル=109.68円台と5日続伸し、ドル円相場は約2ヵ月ぶりの高値で取引されました。米中貿易協議の先行きへの懸念から中国上海総合が1.4%安と続落したことを受けて、ドイツDAXは1.6%安、フランスCACは1.9%安など欧州株式市場も下落した流れが米国市場にも波及しました。
- ダウ工業株30種平均は前日比138ドル(0.54%)安の25,828ドルと反落。朝方は、一時前日比約450ドル安まで売られていましたが、午後に急速に下げ渋りました。トランプ米大統領は9日午後、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席から8日に書簡を受け取ったことを明らかにし、習氏との電話協議を開く可能性に言及したことが買戻しの材料となりました。
- S&P500種は前日比0.3%安、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は同0.41%と、ともに4日続落となりました。
- 投資家の不安心理を示す米VIX指数は19.10と前日の19.40とほぼ変わらず、高止まりしています。半導体のインテルが同5%超下落したほかエヌビディア、マイクロンテクノロジー、クアルコムなど半導体が総じて安く、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は同1.18%下落しました。アップルは同1%の下落となりました。
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.44%(前日2.48%)
- ドル円相場:1ドル=109.68-109.69円(前日110.04-110.05円)
- ニューヨークダウ30種平均:25,828.36ドル(前日比-138.97ドル)
- ダウの主な上昇寄与:シェブロン、ゴールドマン・サックス、ダウなど
- ダウの主な下落寄与:ボーイング、スリーエム、インテル、アップルなど
- ナスダック総合株価指数:7,910.59ポイント(前日比-32.73ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,476.80ポイント(前日1,494.48ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):19.10(前日19.40)
- S&P500種株価指数:2,870,72ポイント(前日比-8.7ポイント)
- S&P業種別上昇セクター:不動産、エネルギー
- S&P業種別下落セクター:素材、情報技術、一般消費財・サービスなど
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=61.70ドル(前日比-0.42ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,285.2ドル(前日比+3.8ドル)
米国市場に影響したと思われる主な材料
- 3月の貿易赤字は前月比1.5%増の500.2億ドルとなり、市場予想の512億ドルを下回った。トランプ米大統領が掲げる「米国第一主義」政策の中心的な課題である対中貿易赤字は16.2%減の207.49億ドルと、2014年3月以来、5年ぶりの低水準になった。
- 4月の米卸売物価指数(PPI)は前月比0.2%上昇、市場予想と一致した。3月は0.6%上昇だった。4月の前年同月比は2.2%上昇と市場予想の2.4%上昇をやや下回った。食品とエネルギー、貿易サービスを除いたコア物価は前月比0.4%上昇し、2018年1月以来の大幅な伸びとなった。4月の前年同月比は2.2%上昇。市場予想の2.4%を下回った。
【今日のポイント】
1.重要な水準に来たドル円相場
- ドル円相場は5月9日に一時1ドル=109.60円と3月25日に付けた109.70円を下回る円高・ドル安水準となりました。日足の一目均衡表では節目とされた先行スパン(雲)の下限(110.30円)を下回り、一旦下値を試しそうなチャートとなりました。この場合、1月31日の108.68円が次のメドとなります。
- ただし、週足の一目均衡表の先行スパン(109.60円)の範囲でギリギリ踏み留まっています。大きく割り込まなければ、109円から112円のレンジで推移する可能性も考えられます。ちなみに月足の一目均衡表では今後、先行スパン(雲)が急速に細くなる形にあるため、来週以降も109円台で推移するとスパンの下(円高方向)に潜りかねず、円高に進みやすくなります。日本株にも影響を与えるため注意が必要です。
2.日経平均の価格ポイント
- 米国株安や円高進行を受け9日の日経平均は21,400円台まで下落しました。節目とされた200日移動平均線21,884円や一目均衡表の基準線21,668円を下回り、次は先行スパン(雲)の上限21,349円が節目となります。昨年12月25日の安値から4月25日の高値まで上昇した値幅のフィボナッチ指数38.2%押しが21,103円水準にあり、意識されそうです。ただし、値上がり・値下がり銘柄のバランスを示す騰落レシオ(25日移動平均)が78.9%と安値圏を示す80%を下回ったことで、全体の調整も進んだイメージはあります。材料次第でいつ反発してもおかしくない状況です。
3.衆参同日選と株式市場
- 安倍首相が就任した1年目の「アベノミクス効果」で2013年の実質GDPとCPIは大きく改善しました。しかし、2014年4月の消費税増税(5→8%)で急ブレーキがかかり失速、日銀の物価目標(CPIでプラス2%)も遠のきました。5月20日に発表される2019年第1四半期の実質GDPはマイナス予想であり、10月の消費増税による景気の減速が懸念されます。政府も本音では10月の消費増税後の消費の落ち込みを警戒しているものと思われます。
- 1月の景気動向指数(一致CI)は2013年6月以来の低水準となりました。「景気の基調判断」のルールに従い基調判断を「足踏み」から「下方への局面変化」に下方修正されました。2月は小幅に持ち直しましたが、5月13日に発表される3月分が前月比マイナスとなれば、基調判断は「悪化」に下方修正されます。
- 3月の日銀短観の大企業・製造業の業況判断DIは前回比7ポイントも低下した「プラス12」となりました。中国経済の減速や米中貿易摩擦等で外部環境が悪化していることが大きい要因です。業況判断DIの水準は安倍首相が消費税率引き上げの延期を表明した2014年11月の直前の短観のDI(プラス13)よりも低い水準にあります。
- こうした状況下において消費税増税回避に向けた政局が注目されます。萩生田幹事長代行の「増税延期なら信を問う」発言(4月18日)以降、自民党内に衆院を解散し参院選と同日選挙となる「衆参同日選」への待望論が浮上していると報道されました。考えられる理由は以下の通りです。
- 高い安倍内閣支持率(4月の読売新聞世論調査、「支持する」が54%と今年最高)
- 2020年7月開催の東京五輪前に衆院解散は現実的でない
- 2021年10月の衆院議員の任期満了に近づくと「追い込まれ解散」とみられ不利
- 野党の選挙態勢が整っていないなかで大勝できる可能性がある
- 参院選に出馬を予定する議員からは、衆院選候補の支援組織がフル稼働し、相乗効果で集票効果が高まるとの期待
- 新時代への祝賀ムードが残るうちに解散したほうが良いと、「令和元年選挙」への期待、等
- 自民党は元号が「令和」に変った1日から広報戦略を刷新。高い内定率を背景に若者の内閣支持率がかなり高いことを意識して「#自民党2019」と名付け、10代のアーティストやダンサーを起用したPR動画をネットで流す計画です。
- 今のところ増税延期のシナリオは可能性として小さいと思われますがゼロではなく、今後の経済指標や内外政治情勢次第では突如、延期表明となる可能性は否定できません。
- 消費増税は国際協調の観点からも批判を浴びそうです。現在世界経済は大幅な減速局面にあり、主要国は景気浮揚のために財政支出拡大の動きが相次いでいます。米国では4月30日、トランプ大統領と民主党が総額2兆ドル(約220兆円)規模のインフラ投資で合意しました。実現すれば2017年12月に成立した大型減税に次ぐ財政拡張政策です。
- 中国は昨年から財政と金融の両輪で景気刺激策に舵を切りました。ユーロ圏でも景気浮揚とインフラの老朽化に対応するためにドイツなどで拡大的な財政政策が採用されようとしています。イタリアなど欧州各国ではポピュリスト政党の隆盛に対する対応策という面もあります。こうした中で日本だけが緊縮財政に踏み切る格好となります。日本が議長国となる6月28日のG20首脳会議(大阪市)を前に重大な決断を迫られそうです。
- 10月からの消費増税は法律として成立しています。景気減速懸念があるとはいえ、これを覆すには「国民に信を問う」という「大義名分」で衆議院の解散総選挙が必要になります。2005年の「郵政解散」以降、「解散総選挙は株高」のジンクスがあります。2005年以降の5回の解散総選挙と株式市場(日経平均)は相性が良く、衆院解散前の安値から、総選挙の高値まではすべて上昇、平均すると約20%前後上昇する経験則があります。
東京株式市場
- 日経平均株価:21,402.13円(前日比-200.46円)
- TOPIX:1,550.71ポイント(前日比-21.62ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
(お願い)
海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。
閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。
以上
—–** アナリスト・トレーニング **—–