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2019年4月18日
【指標の好転が相次ぐ中国経済、大規模な経済対策や中央銀行の金融緩和策が奏功】(4月18日配信)
おはようございます。
【指標の好転が相次ぐ中国経済、大規模な経済対策や中央銀行の金融緩和策が奏功】
【17日の海外市場】
17日の米国株は小幅反落、ヘルスケア関連株がダウの重石
- 17日の米金融市場は、長期金利に上昇圧力がかかり、ドル高・円安、NY株式相場は小幅反落となりました。ドル円相場は1ドル=112.13円の年初来高値を上抜け、一時112.17円と4ヵ月ぶりの高値をつけました。17日発表の1~3月期の中国国内総生産(GDP)の伸び率が市場予想を上回り、ドイツなど欧州の長期金利が上昇、米国の債券市場も売り(金利上昇)圧力が強まり、米10年債利回りは一時2.61%と3月16日以来の水準に上昇しました。NY株式市場は決算発表を受けたIBMとヘルスケア株がダウを引き下げました。 反面、半導体などハイテク関連は堅調でした。
- NYダウは前日比3.1ドル(0.01%)安の26,449ドルと小幅反落となりました。S&P500種は同6.6ポイント(0.23%)安で引けました。S&P500種セクター別では情報技術(同+0.58%)や生活必需品(同+0.36%)、一般消費財(同+0.19%)が上昇し、ヘルスケアは同-2.8%と大きく下落しました。
- 長期金利の上昇を受け金融のゴールドマン・サックスが同3%高と続伸しダウを約41ドル押し上げました。スポーツ用品のナイキ、半導体のインテルやアップルなど景気敏感・消費関連が買われました。半面、決算で売上高が市場予想を下回ったIBMが同4.1%下落し、1銘柄でダウ平均を40ドルあまり引き下げました。
- 米医療保険制度の改革が実現すれば業績に悪影響を与えるとの警戒感からヘルスケア株が軒並み下落、製薬のメルクやファイザー、医療保険のユナイテッドヘルス・グループの3銘柄でダウを約58ドル引き下げました。国民皆保険は若者からの支持が高く、20年の大統領選にも立候補している民主党のサンダース上院議員の看板政策です。
- アップルと知的財産紛争で和解した半導体のクアルコムが同12%高と大幅続伸、アップルも同1.9%上昇しました。和解を受けて採算の悪い次世代スマートフォン向け半導体開発からの撤退を発表したインテルは同3.2%上昇しました。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は同1.56%高く引けました。投資家の不安心理を示す米VIX指数は12.60と前日の12.18からやや上昇しました。IT関連ではアルファベット、アマゾンは小幅に上昇し、フェイスブックやネットフリックスが下落しました。ナスダック総合は前日比4.1ポイント安と小幅に反落しました。
- 債券市場は長期金利が2.59%と前日の2.59%と横ばいでした。ドル円相場は1ドル=112.08円と前日の112.00円からややドル高・円安となりました。
- 国際商品市場ではニューヨークWTI原油先物は前日比0.29ドル安の1バレル=63.76ドルで引けました。ニューヨーク金先物価格は同0.4ドル安の1トロイオンス=1,276ドルで引けました。金先物は一時1,275.2ドルと2018年12月以来の水準に低下しました。
- WSJの報道によれば、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が4月29日の週に北京を訪問し、中国の劉鶴副首相は5月6日の週にワシントンを訪れる予定です。米中貿易協議の合意に署名するための首脳会談については、早ければ5月27日に米国で開かれる可能性があるとしています。
- 米FRBが17日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、3月と4月初旬に米経済がわずかないし緩やかなペースで拡大したことが示されました。経済成長ペースに関する表現は、前回のベージュブックと同様でした。貿易を巡って一定の不透明感はあるものの、大半の地区で住宅販売が力強さを増し、製造業を取り巻く環境に明るさがあると報告されました。同報告書は次回FOMCの議論のたたき台となるものですが、現時点で金融政策は据え置きされることが有力視されています。
- 米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は17日、米経済はなお「健全」な成長を遂げられるとし、今年と来年はそれぞれ最大1回の利上げが実施されるとの見方を改めて示しました。同総裁は米国の債券市場で見られた長短金利の逆転については、景気減速の「絶対的な前兆」ではないとし、FRBが抱える大規模なバランスシートが長期債利回りに影響を及ぼしている可能性があるとの見方を示しました。逆イールドが景気後退を示す兆候ではなく、米FRBが国債を大量に保有することによる債券市場の需給が影響しているという主張です。私見でもこの可能性が高いと考えています。
- ドイツ政府は17日、2019年の経済成長率予想を1月時点の見通しであるプラス1.0%からプラス0.5%に引き下げました。製造業の不振による景気減速が鮮明になり過去3ヵ月で2度目の下方修正となりました。アルトマイヤー独経済相は英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感や貿易紛争が経済を圧迫していると指摘しました。ただし、ドイツ自動車生産の底入れや中国経済の明るい指標を受け、最近のドイツ企業の景況感を示す指標は底入れを示唆しており、私見では年前半に底入れとなる可能性は高いと思います。
【今日のポイント】
経済指標の好転が相次ぐ中国
- 最近の中国経済は好転を示唆する指標が相次いでいます。発表された指標で代表的なものを列挙してみます。
- 中国の2019年1~3月の国内総生産(GDP)は実質で前年同期比6.4%増と18年10~12月から横ばいとなった。18年1~3月から4四半期ぶりに減速に歯止めがかかった格好で日本経済新聞社の市場調査の予想平均(6.2%)を上回った。
- 中国の固定資産投資は1~3月に前年同期比6.3%増えた。18年通年(5.9%増)から加速した。不動産の開発投資が堅調だったほか、景気対策でインフラ投資も持ち直しつつある。
- 百貨店やスーパーの売上高、インターネット販売額などを合計した中国の社会消費品小売総額は1~3月に前年同期比8.3%増えた。ただし、自動車の販売不振が足を引っぱり、伸び率は18年通年(前年比9%増)から減速した。
- 中国の工業生産は1~3月に前年同期比6.5%増えた。18年通年(6.2%増)から伸び率は加速した。鉄鋼や化学製品の生産が好調だった。
- 中国国家統計局が発表した政府版3月製造業PMIは50.5と、好・不調の判断の分かれ目とされる50を4ヵ月ぶりに上回った。財新/マークイットが4月1日に発表した民間版3月製造業PMIは50.8と50を上回り、8ヵ月ぶりの水準を回復した。
- 中国税関総署が4月12日発表した3月の貿易統計によると、輸出額(米ドルベース)は前年同月比14.2%増加し、事前予想の7%前後を大幅に上回った。
大規模な経済対策や中央銀行の金融緩和策が奏功
- 中国経済回復の背景は景気刺激策への大転換です。中国人民銀行は1月に預金準備率を2度にわたり引き下げるなど、積極的な金融緩和策を打ち出しています。また中国政府は、3月に開催された第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、大規模な経済対策を発表しました。対策の核となるのは減税と社会保険料引き下げで、その規模は約2兆元(約33兆円)と、2018年当初の約1.1兆元(約18兆円)の約2倍に増額されました。また、地方のインフラ建設推進のために地方債発行枠を拡大し、2兆1,500億元(約36兆円)とすること等も盛り込みました。その効果が表れ始めたと言えるでしょう。
- 振り返ってみれば、中国の経済転換は、米国の貿易制裁による経済への打撃を乗り切るために中国共産党が大胆な景気刺激策に舵を切った間接的な結果であり、歴史上、例を見ない異例な展開と言えます。
- 中国経済の回復はグローバル経済にとっても極めて重要です。政府の積極的な対応が成果を上げつつあることは、資源国であるオーストラリアやブラジルの輸出環境を改善させます。また周辺のアジア新興国経済にとっても追い風となります。さらに中国と貿易を通じて深いつながりがあるドイツの輸出を後押しし、ユーロ圏経済にとっても好影響を与えると考えられます。
- これまでは中国経済の減速→ユーロ圏経済の減速→米国にとっての輸出環境が悪化→米グローバル企業の収益懸念→米企業の業績悪化によるNY株式相場の反落懸念という、流れが連想されていました。しかし、この流れが断ち切られる兆しが出てきました。最近のグローバルな株価上昇はこうした背景があるものと考えられます。
4月17日(水)
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.59%(前日2.59%)
- ドル円相場:1ドル=112.08-112.09円(前日112.00-112.01円)
- ニューヨークダウ30種平均:26,449.54ドル(前日比-3.12ドル)
- ナスダック総合株価指数:7,996.08ポイント(前日比-4.15ポイント)
- S&P500種株価指数:2,900.45ポイント(前日比-6.61ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,557.08ポイント(前日1,533.22ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):12.60(前日12.18)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=63.76ドル(前日比-0.29ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,276.8ドル(前日比-0.4ドル)
東京株式市場
日経平均株価:22,277.97円(前日比+56.31円)
TOPIX:ポイント1,630.68(前日比+4.22ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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