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2019年4月12日
【マーケットが楽観的に傾いている時こそIMFレポートで頭を冷やす】(4月12日配信)
おはようございます。
【マーケットが楽観的に傾いている時こそIMFレポートで頭を冷やす】
【11日の海外市場】
11日の米国株は利益確定売りが優勢、ヘルスケア関連の下落がダウの重石
- 11日の米金融市場は、英国のEU離脱再延期の決定や米経済指標が強かったことなどを受け米長期金利は上昇、ドル高、NYダウは小幅反落となりました。株式市場では大手ヘルスケアや医薬品株が下げました。
- NYダウは前日比14ドル(0.05%)安の26,143ドルと小幅に反落しました。S&P500種はほぼ変わらずで引けました。航空機のボーイングが前日比1.4%高と反発しダウを35ドル押し上げました。ホームデポやキャタピラー、ユナイテッド・テクノロジーズが上昇しました。長期金利の上昇を受け金融株も堅調でした。半面、米医療保険最大手のユナイテッドヘルス・グループが同4%強下落しダウを71ドル引き下げました。ドラッグストアのウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、医薬品のファイザーやメルクなどの下落もダウを引き下げました。
- 債券市場は米長期金利が2.49%と前日の2.46%から上昇しました。ドル円相場は1ドル=111.62円と前日の110.95円からドル高・円安となりました。英国の欧州連合(EU)離脱の再延期が決まり、目先は「合意なき離脱」のリスクが後退したとの見方から、英国債が売られ英長期金利が上昇、これを受け、米国債にも売りが先行しました。
- ナスダック総合は16ポイント(0.21%)安い7,947で引けました。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は0.07%安い1,476で引けました。投資家の不安心理を示す米VIX指数は13.02と前日の13.31から低下しました。
- 国際商品市場ではニューヨークWTI原油先物は前日比1.03ドル安い1バレル=63.58ドルで引けました。ニューヨーク金先物価格は同20ドル安の1トロイオンス=1,293ドルで引けました。
- 11日朝発表された3月の卸売物価指数(PPI)が前月比+0.6%と市場予想の+0.3%を上回りました。先週の米週間失業保険申請件数は19.6万人と市場予想の21万人から予想外に減少し、1969年10月以来49年ぶりの低水準となりました。より変動の少ない4週移動平均 は20.7万人でした。引き続き米労働市場の需給はタイトな状況が続いています。
- 米FRBのクラリダ副議長は米経済に関して、昨年の力強いペースからは幾分減速しているが「良好な状態」にあるとの認識を示しました。政策金利については、現行水準で様子を見るという金融当局のメッセージをあらためて表明しました。現在の景気拡大局面が今年半ばに米史上の最長記録を更新する可能性は非常に高いと述べたほか、物価上昇が「抑制された」中で賃金は上昇しつつあると述べました。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は11日、米景気拡大を維持するため慎重に対応する必要があるとの考えを示しました。市場の気掛かりな兆候として米債券の利回り格差と将来のインフレ期待の2点を挙げ、「こうした市場に基く兆候は、景気拡大の維持に向けFOMCに慎重な対応が求められていることを示している」と述べました。二人のFOMCメンバー発言は先日のFOMCの結果をフォローする内容となっています。
【今日のポイント】
マーケットが楽観的に傾いている時こそIMFレポートで頭を冷やす
- 国際通貨基金(IMF)は経済協力開発機構(OECD)や世界銀行、国際決済銀行BIS)と並んで有名な国際機関です。経済見通しに関しては、OECDは傾向としてやや先進国バイアスがあり、世銀は逆に新興国にバイアスがかかっています。IMFはバランスが良くエコノミストなど専門家は定期的に発表されるIMFのレポートを重視します。ちなみにBISは世界の信用(ローン)市場や為替、デリバティブ市場などについて詳しい分析をします。
- 今週はIMFの「世界経済見通し(WEO)」と「金融安定性報告書」が発表されました。IMFは4月と10月に世界経済見通しを発表し、1月と7月に主要国のみフォローアップレポートが発表されます。一般的に金融マン(特に営業職)が読むレポート類はどちらかというと金融商品を提案するために用意された投資環境レポートが多く、やや楽観的に書かれているものを目にしやすいはずです。
- IMFなど国際機関は中立的組織のため、極めて冷静にかつ客観的に分析されており、恐らく金融マンが目にするレポートよりもリスク材料が多く指摘されています。今週発表されたIMFのレポートはまさにリスク材料が盛りだくさんです。頭を一度クリアにして冷静に経済とマーケットに立ち向かうのには良い読み物です。
- 今回のIMFの世界経済見通しでは2017年から18年前半にみられた世界同時回復局面と対称的に世界的に減速傾向であると指摘されています。2019年は景気回復が鈍化すると想定していますが、20年にかけて世界経済の持ち直しを予想しています。
- 2019年の世界の経済成長率は3.3%と、前回1月時点の予想に比べて0.2ポイント下方修正されました。米国は前回の2.5%→2.3%、ユーロ圏は1.6%→1.3%、日本は1.1%→1.0%といずれも下方修正されました。新興国では中国は6.2%→6.3%へ上方修正されましたが、インドは7.5%→7.3%、ブラジルは2.5%→2.1%と下方修正されました。2020年の世界の成長率は3.6%と前回と同水準に据え置かれました。
- IMFはレポートの中で下振れリスクは数多くあると指摘。貿易政策を巡る対立は、急速に再燃して自動車産業など他の分野で緊張を生じさせグローバル・サプライチェーンに多大な混乱を引き起こしかねないとしています。中国の経済成長が思いのほかの下振れする可能性があるし、英国のEU離脱に伴うリスクも相変わらず高いままとコメント。イタリアなどにみられる国と銀行の「破綻のループ」のリスクも含め、いくつもの国々で民間部門と公的部門の多額の債務に絡む金融面のぜい弱性が高い中、リスクオフの動きや合意なきブレグジットなどが引き金となって金融環境が急変しかねないと警鐘を鳴らしています。
- 世界経済の動向は微妙な段階にあります。1月以降、米FRBのハト派スタンスへの転換でニューヨーク株式市場を中心に世界の株式市場はV字型回復を示してきました。マーケットは先行き実体経済の回復を先取りして上昇してきたわけですが、予想通りに実体経済が回復しないとマーケットは調整を強いられます。マーケットが重要視していないものの、意外に重要なリスクがどこにあるかをしっかり押さえておきましょう。
- 「金融安定性報告書」は金融システムの「脆弱性が高まっている」と指摘、市場の楽観論に警鐘を鳴らしています。具体的には4つのリスクを指摘しています。
- 先進国:、格付け企業の債務問題
- ユーロ圏: 南欧銀行の南欧債保有
- 中国:金融不安定化リスク
- 新興市場国: 資金流出懸念
IMFホームページ
減速する経済成長、再加速は不確実2019年4月8日
https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2018/03/20/world-economic-outlook-april-2018
「金融安定性報告書」
国際金融システムの弱点がショックを増幅
膨らんだ債務と急速に変化する世界経済
4月11日(木)
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.49%(前日2.46%)
- ドル円相場:1ドル=111.62-111.63円(前日110.95-110.96円)
- ニューヨークダウ30種平均:26,143.05ドル(前日比-14.11ドル)
- ナスダック総合株価指数:7,947.36ポイント(前日比-16.88ポイント)
- S&P500種株価指数:2,888.32ポイント(前日比+0.11ポイント)
- フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,476.07ポイント(前日1477.16ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):13.02(前日13.31)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=63.58ドル(前日比-1.03ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1293.3ドル(前日比-20.6ドル)
東京株式市場
- 日経平均株価:21,711.38円(前日比+23.81円)
- TOPIX:ポイント1,606.52(前日比-1.14ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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