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2019年3月22日
【米3月FOMCは市場予想を上回るハト派の内容】(3月22日配信)
おはようございます。
【米3月FOMCは市場予想を上回るハト派の内容】
【21日の海外市場】
21日の米国株は大幅上昇、ダウは200ドルを超える大幅反発、半導体関連が急騰
- 21日の米金融市場は、長期金利がやや上昇しドルが買い直されました。NY株式市場は主要3指数とも大幅に上昇しマーケットはリスクオンとなりました。FOMCでの市場予想を上回るハト派スタンスを受け、株式市場への資金流入期待が高まりました。20日にダウを押し下げた金融セクターは、21日は下落が限定的でした。半導体関連が急騰し大型IT株も堅調でリスクを取る動きが続いています。
- NYダウは前日比216ドル(0.84%)高の25,962ドルと大幅反発で引けました。S&P500種は同1.09%高と反発しました。アップルが同3.6%高、マイクロソフトが同2.3%高、シスコシステムズが同1.2%高となるなどハイテク関連が上昇しました。ホームデポ、トラベラーズ・カンパニーズがそれぞれ2%超の大幅上昇となりました。金融株は、JPモルガン・チェースは続落したものの、ゴールドマン・サックス、アメリカン・エキスプレスは反発しました。
- 21日の債券市場は長期金利が2.53%と前日の2.52%から上昇(債券相場は下落)しました。ドル円相場は110.79円と前日の110.65円からややドル高・円安となりました。他通貨とドルの相対的な強さを見るドルインデックスは2週ぶり大幅高となりました。
- アドバンスド・マイクロ・デバイシズは8%超の上昇、マイクロン・テクノロジーは9%超の上昇、ザイリンクス、エヌビディア、ブロードコムなど半導体関連が大幅高となりました。ダウ採用のインテルも1.5%高となりました。ナスダック総合は同109ポイント(1.42%)高の7,838と5日続伸で引けました。マイクロンは20日の決算発表で年後半の需要回復見通しを示したことが好感されました。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は同3.5%高く引けました。アルファベットやアマゾン・ドット・コムなど大型IT銘柄も堅調で、投資家の不安心理を示す米VIX指数は13.63と前日13.91から低下しました。
- 国際商品市場ではWTI原油先物は0.25ドル高の1ドル=59.98ドルで引けました。一時60.39ドルと18年11月以来の高値となりました。
- 米2月の景気先行指数は111.5となり、前月から0.2%上昇しました。2018年9月以来5カ月ぶりの上昇で市場予測(0.1%上昇)を上回りました。
- 米フィラデルフィア地区連銀が発表した3月の連銀業況指数はプラス13.7と、前月のマイナス4.1から大きく上昇、市場予想(プラス6)も上回りました。内訳は強弱まちまちで新規受注指数はプラス1.9と、前月のマイナス2.4から改善。一方、従業員数指数は9.6と前月の14.5から低下。支払価格指数も19.7と、同21.8から低下しました。半年先の景況指数は21.8と、前月に比べて9.5ポイント低下、出荷と新規受注の見通しが大きく落ち込んだことが響きました。米景気は引き続き底堅く推移しているものの、経営者の先行きのマインドは慎重な姿勢にあると考えられます。
【今日のポイント】
米FOMCは予想を上回るハト派の内容
- 20日の米FOMCにおいて米FF金利の誘導目標は年2.25~2.50%のまま据え置かれました(全会一致)。2019年の想定利上げ回数はこれまでの2回からゼロ回に引き下げられました。20年は「1回の利上げ」となっています。今回の米FOMCは市場予想を上回るハト派の内容だったと評価されます。
- FOMCが提示した2019年の米実質GDP成長率は2.1%(前回2.3%)、20年は1.9%(同2.0%)と前回から下方修正されました。長期経済見通し(中央値)は、実質GDP成長率は1.9%と前回(1.9%)の見通しが維持されました。失業率は4.3%と前回(4.4%)から引き下げられました。インフレ指標として重視するPCE価格指数伸びは2.0%と前回(2.0%)見通しが維持されました。
- FOMCは同時に発表した付属文書で、バランスシートの縮小ペースを5月に鈍化させ始めると表明。9月末には縮小を停止することを明らかにしました。その後はポートフォリオを「当面、ほぼ同じ」規模で維持する可能性が高いとしています。
- FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は「明らかな政策変更の必要性が生じるような雇用やインフレの見通しを得るまでには、まだしばらく時間がかかる」と述べ、「政策調整を急ぐ必要はない」と利上げ休止の姿勢を改めて強調しました。一方で、米景気に関しては「良い状況にある」や「見通しは明るい」と繰り返し、悲観論を否定しました。
- パウエル議長らは「今後の政策判断は経済データ次第だ」と繰り返しており、FOMC参加者の見方も割れています。20年以降の利上げシナリオは今後の経済成長率やインフレ率がどこまで高まるかにかかっていると思われます。
- FOMCを受けて、米金利先物市場で2020年初めの利下げ予想が強まりました。CMEグループのFed Watch(20日時点)によると、市場が織り込む来年最初の会合での利下げ予想確率は48%と、前日の32%から上昇しました。
- 米FOMCを受けた20日の米債券市場は大幅に買われ(金利は低下)、米10年債利回りは2.525%と年初来で最低水準まで低下、米2年債利回り2.398%とかなり接近しました。長短金利差は一段と縮小しました。
- 20日のNYダウ平均は前日比141ドル安で引けました。小幅安でスタートした後、トランプ大統領の米中協議に対する慎重な発言を受けて前日比217ドル安まで下落しました。その後、市場予想以上にハト派的な内容となったFOMCの結果を受けて同42ドル高まで反発しました。ダウの引き下げ寄与はゴールドマン・サックスが約46ドル、JPモルガン・チェースが約15ドル、アメリカン・エキスプレス約12ドルと金融3銘柄でダウの下落の半分に相当する約73ドル引き下げました。半面、ボーイングや、アップル、ホームデポ、マクドナルドなどがダウを押し上げました。
- ただし、上述したように21日のNY株式市場は大幅上昇となりました。FRBの緩和を強化する姿勢に対して特にハイテク関連が好反応となりました。
- 22日の東京株式市場は反落が予想されます。21日のシカゴの日経平均先物は21,430円と20日の東京市場の引け値から178円下落しています。円高による自動車や機械といった輸出関連の下落と米金融株の下落を織り込む展開が予想されます。
- 一方、21日のNY市場で半導体関連が大幅高となったことや大型IT関連の堅調な動きは東京市場を支えそうです。金融や輸出関連の売り一巡後は、日経平均は回復が予想されます。日銀のETF買いの思惑や配当取りの売買も予想されるため、後場は下げ渋ることが予想されます。
3月21日(木)
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.53%(前日2.52%)
- ニューヨーク市場ドル円相場:1ドル=110.79-11.80円(前日110.65-110.66円)
- ニューヨークダウ30種平均:25,962.51ドル(前日比+216.84ドル)
- ナスダック総合株価指数:7,838.96ポイント(前日比+109.99ポイント)
- S&P500種株価指数:2,854.88ポイント(前日比+30.65ポイント)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,441.83ポイント(前日1,393.01ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):13.63(前日13.91)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=59.98ドル(前日比+0.25ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,307.3ドル(前日比+5.6ドル)
東京株式市場 3月20日(水)
- 日経平均株価:21,608.92円(前日比+42.07円)
- TOPIX:1,614.39ポイント(前日比+4.16ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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