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2019年2月26日
【売られ過ぎからの回復を狙う】(2月26日配信)
おはようございます。
【売られ過ぎからの回復を狙う】
【ニューヨーク市場】 25日の米国株は続伸、NYダウは先週末比60ドル高
- 25日のニューヨークの金融市場は、米長期金利は上昇(債券相場は下落)、ドル高、株価上昇とリスクオンの流れが続きました。トランプ米大統領が24日、中国製品への関税引き上げの延期を表明、米中貿易交渉の合意に向かっているとの期待が高まり、海外から米国市場に資金が入っています。25日の上海総合指数が先週末比5.6%高と大幅上昇、ドイツDAX指数も5日続伸となるなど世界の株式市場が好感しました。
- 投資マネーが債券から株式市場にシフト、長期金利は上昇(債券相場は下落)しました。投資家のリスク許容度が上昇し円を売ってドルを買う動きが強まり、ドル円相場は1ドル=111.04円台とドルは年初来高値を更新しました。
- NYダウは先週末比60ドル高で引けました。ナスダック総合やS&P500種もそろって続伸しました。報道によると、中国の産業補助金など構造問題で意見の隔たりは依然大きいものの、トランプ大統領は「(次回の米中首脳会談が合意文書に)署名する会談になる」と強調し、決着に改めて意欲を表しました。中国売上高比率が高いキャタピラーやボーイング、工業製品・事務用品のスリーエム(3M)などの上昇が目立ちました。
- アップル、フェイスブック、ネットフリックス、アマゾン・ドット・コムなど大型IT関連も上昇、半導体のAMDやザイリンクスも買われました。ナスダック総合は同26ポイント(0.3%)高で引けました。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は0.8%高で引け、ハイテク関連全般に堅調に推移しました。フィラデルフィア半導体指数は昨年12月24日に底を打ってからの上昇率は28%と、S&P 500種株価指数の他のセクター全てを上回っています。半導体関連銘柄の株価の回復はかなり強いと言えます。ちなみにナスダック総合は12月24日の安値から22%上昇しています。
- 米シカゴ連銀が25日発表した1月の全米活動指数は、前月から0.48ポイント低下のマイナス0.43となりました。同指数はゼロを下回ると米経済の成長ぶりが過去の平均を下回っていることを示し、マイナス圏の数値は2018年5月以来8カ月ぶりとなります。米国の1月の経済指標は依然として減速を示すものが目立ちます。
- 全米企業エコノミスト協会(NABE)が25日に公表した調査によると、エコノミストが予想する米国の景気後退(リセッション)入りの時期について、エコノミストの10%が年内、42%が20年中、25%が21年中と予想しました。エコノミストは今年の米景気後退の可能性は極めて低いと見ているようです。
【今日のポイント】
売られ過ぎからの回復を狙う
- トランプ米大統領は24日、中国との貿易交渉で十分な進展があったとして、3月2日に予定していた中国製品の関税引き上げ延期を表明しました。貿易交渉も延長し、両国の首脳会談での最終合意を目指すことになりました。両国は貿易戦争の打開に向けて半歩前進したと言えそうです。
- 経済協力開発機構(OECD)は昨年11月、2019年の世界経済の成長率見通しを発表した際に、米中貿易戦争の経済成長率への影響を試算し発表しています。米国と中国の間の追加関税とマーケットのリスクプレミアムを含めて4段階の影響を試算、経済成長率の下振れの程度を発表しています。
【4つのシナリオ】
(1) 現状の関税が継続するケース
(2) 税率が3月から10%→25%に引き上げられるケース
(3) 米国と中国の間の貿易の全品目の税率が25%に引き上げられるケース
(4) マーケットのリスクプレミアムが上昇する最悪のケース
【試算結果】 (▲は経済成長率への影響がマイナスとなることを示す)
世界経済は(1)のケースで▲0.13%、(2)で▲0.10%、(3)で▲0.20%、(4)で▲0.36%、(1)~(4)を合計すると▲0.8%
米国経済は(1)のケースで▲0.23%、(2)で▲0.19%、(3)で▲0.38%、(4)で▲0.25%、(1)~(4)を合計すると▲1.05%
中国経済は(1)のケースで▲0.34%、(2)で▲0.24%、(3)で▲0.41%、(4)で▲0.36%、(1)~(4)を合計すると▲1.35%
- 仮に3月中の米中首脳会談で合意すれば対中国関税引き上げが延期となるため、経済成長率への影響は、世界経済には▲0.13%、米国経済には▲0.23%、中国経済には▲0.34%にとどまることになります。
- 上海総合指数は米中貿易戦争が悪化した2018年の市場で、過去52週間の高値から同安値まで約31%も下落しました。上記の4つのシナリオでは(3)または(4)の厳しいシナリオを織り込んでいた可能性があります。2月25日の上海総合指数は前週末比5.6%も値上がりした背景は、過度にリスクシナリオを織り込んでいたため、その揺り戻しが起きたと考えられます。
- 同様に米国の経済成長率への影響は▲0.23%にとどまります。NYダウは2018年の相場で過去52週間の高値から同安値まで約19%の下落となりました。こちらも過剰反応だった可能性があります。ナスダック総合は同じ計算で約24%下落しました。株価が行き過ぎていたFANG銘柄の割高なPERの修正や、中国ファーウェイの問題で、大きな取引がある米半導体関連銘柄の下落が影響しましたが、はやり悲観論が行き過ぎていた可能性はあります。
- 日本の株式市場では日経平均が2018年10月の年初来高値から12月の同安値まで約21%下落しました。時価総額の指数であるTOPIXは同26%も下落しました。日本企業は中国での現地生産や、中国企業への部品や半製品の供給など中国企業を経由して世界最大の消費国である米国に輸出しています。米中両国の経済成長悪化の材料を織り込まれやすいと考えられます。
- 米中通商協議は3月中の首脳会談で一定の合意を見る可能性があります。トランプ大統領は2020年の大統領選を意識し、年後半までに公約の成果を求められます。経済の悪化や株価の下落は支持率に直結するため、対決から話し合いによる解決へとスタンスを変えた可能性があります。中国は景気減速を止める方向に舵を切りました。3月の全人代を前に早期合意を目指し市場開放に前向きです。構造問題の解決には時間がかかりますが、交渉継続で時間をかけて話し合うことで決着させると思われます。
- 2019年前半の株式市場は売られ過ぎからの回復を狙う戦略(リバーサル戦略)が機能する可能性が高いと思います。大きく売り込まれた市場ほど買われやすいと考えられます。メドとしては下落幅に対して当面、半値戻し(終値ベース)を目指すと考えられます。上海総合指数の半値戻しは3,011ポイント(25日終値2,961ポイント)、日経平均は21,712円(25日終値21,528円)です。その後は実体経済の回復並びに企業収益の回復の程度に影響され、戻りに格差が生じると思われます。ちなみにNYダウはすでに下落幅の84%を取り戻しています(2月22日時点)。米経済への影響は思った以上に深刻ではないと市場が読み取っている可能性があります。
2月25日(月)
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.66%(前日2.65%)
- ニューヨーク市場ドル円相場:1ドル=111.04-111.05円(前日110.65-110.66円)
- ニューヨークダウ30種平均:26,091.95ドル(前日比+60.14ドル)
- ナスダック総合株価指数:7,554.46ポイント(前日比+26.92ポイント)
- S&P500種株価指数:2,796.11ポイント(前日比+3.44ポイント)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,375.95ポイント(前日1364.87ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):14.85(前日13.51)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=55.39ドル(前日比-1.87ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,329.70ドル(前日比+0.2ドル)
東京株式市場
- 日経平均株価:21,528.23円(前日比+102.72円)
- TOPIX:1,620.87ポイント(前日比+11.35ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
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閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。
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