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2019年2月20日
【世界の銀行株に影響を与える欧州中銀(ECB)の長期資金供給オペの償還対応】(2月20日配信)

おはようございます。

 

【世界の銀行株に影響を与える欧州中銀(ECB)の長期資金供給オペの償還対応】

 

 

【ニューヨーク市場】  19日の米国株は主要指数が揃って続伸、ナスダック総合は7日続伸

 

  • 19日のニューヨークの金融市場は引き続き株式市場が堅調で主要株価指数は続伸しました。WTI原油先物は5日続伸するなど国際商品相場も上昇しました。米ドルが英ポンドに対して下落し、ドルの代替通貨と言われる金先物価格は大幅に上昇しました。米住宅市場の指標が改善し、米小売り企業の好決算も買い材料視されました。ただし、今週ワシントンで継続開催される米中貿易協議を前に、買い手控えムードが強いようです。また先週15日にNYダウはほぼ3カ月ぶりの高値で終えた後とあって、目先の利益確定売りも出やすく、上値追いは限定的でした。  

 

  • 債券市場は長期金利が2.63%と先週末の2.6%から低下(相場は上昇)しました。ドル円相場は110.50ドル台と小動きでした。

 

  • NYダウは前日比8ドル高の25,891ドルと続伸しました。好決算を発表したウォルマートが買われ、ウォルト・ディズニーやプロクター・アンド・ギャンブルも堅調でした。アップルが高く、アルファベットやアマゾン・ドット・コム、ネットフリックスなど大型ネット関連株も買われるなどハイテクも堅調でした。ナスダックは7日続伸となりました。投資家の不安心理を示す米VIX指数は14.88と先週末の14.91から低下、投資家心理は改善傾向が続いています。

 

  • 小売最大手のウォルマートが発表した2018年11月~19年1月期決算は既存店売上高が年末商戦期としては約10年ぶりの高い伸びとなり、1株利益もアナリスト予想を上回りました。株価は2.2%上昇、ダウを約14ドル押し上げました。

 

  • ロイターの報道によると、トランプ米大統領は19日、中国との通商協議は順調に推移しているとしたうえで、3月1日の合意期限の延長について検討していることを示唆しました。また中国が関税引き上げ回避に向け、迅速に行動しようとしていると述べました。

 

  • 米ニューヨーク(NY)連銀の調査で、米消費者が今年は昨年よりも消費を拡大させる可能性があることが分かりました。NY連銀の昨年12月の消費者期待調査によると、米家計消費の伸びの予想平均は2.8%と、昨年の2.3%から上昇。教育水準が高校卒業かそれ以下の消費者の間で伸びが高くなるとの予想になりました。米GDPの約7割を占める個人消費が経済を支えることが期待されます。

 

  • 全米住宅建設業協会(NAHB)が19日発表した2月の住宅市場指数は62で、前月の改定値から4ポイント上昇しました。2カ月連続の上昇で市場予測(59程度)を上回りました。消費者の景況感の回復と住宅ローン金利の低下で住宅事業者は再び先行きに強気な姿勢に転じています。

 

 

【今日のポイント】 

 

世界の銀行株に影響を与えるECBの長期資金供給オペの償還対応

 

  • 米FRBのハト派姿勢への転換が大きな話題となっています。その影に隠れがちですが、ECB(欧州中銀)も最近の域内経済の減速を受けて、金融政策正常化に対して慎重姿勢に転換しつつあります。例えば1月のECB理事会で景気見通しへのリスク判断を「概ね均衡している」から「下向きに転じている」に下方修正し、緩和継続の必要性を強調しました。

 

  • ドイツの10-12月期実質GDP成長率は前期比「ゼロ成長」と、7-9月期のマイナス成長から2四半期連続のマイナス成長は免れたものの、回復が遅れています。イタリアは10-12月期の実質GDPが2四半期連続のマイナス成長となり、テクニカルリセッション入りとなりました。

 

  • ここで注目されるのが、過去にECBが実施してきた域内銀行に対する長期資金供給オペの償還対応です。2020年以降に順次償還となるため、ECBが新たな長期資金供給オペを導入するかが注目されています。2月15日にECBのクーレ理事がこの政策の導入に前向きな発言を行い、ドイツDAX、フランスCACが前日比1.8%上昇、スペインの株価指数も同1.9%上昇しました。同日、NYダウが前日比443ドル(1.7%)上昇した際に、S&P500種セクター別で金融が+2.0%と最大の値上がりセクターでしたので、クーレ理事の発言が米国の金融株にも影響したことは明らかです。今週、日本のメガバンク株が堅調に推移している理由の一つと思われます。

 

  • 2008年のリーマンショックとその後の欧州債務危機など相次ぐ金融危機を乗り切るため、ECBは域内の金融機関の資金繰り支援として、長期の資金供給であるLTRO(長期資金供給オペ)の規模と期間を拡大させてきました。2008年3月に満期6ヵ月のLTROを開始、2009年5月に満期1年のLTROを開始、2011年12月からは満期3年のLTROの実施を決定しました。2014年6月は満期4年のTLTRO(貸し出し条件付き資金供給オペ)、2016年3月は満期4年のTLTRO第二弾(TLTROⅡ)を実施しました。LTRO、TLTROは金融機関の資金調達に重要な役割を果たしてきたわけです。これが2020年以降に順次償還となるため、ECBが新たなTLTROを導入するかに注目が集まっていました。

 

  • ECBのバランスシートは2月8日時点で約4兆7,000億ユーロですが、このうち約7,200憶ユーロはLTRO・TLTROによる金融機関貸し出しです。ECBは2015年に国債等を対象とするQE(資産買い入れプログラム)を開始したため、最近のバランスシートの拡大は同プログラムに依るものです。しかし、昨年末にQEは終了したため、バランスシートは増えなくなりました。今後、約7,200億ユーロ以上のTLTROが2020年以降に順次償還すれば、バランスシートは減少していくことになります。欧州金融機関の資金繰りに影響しかねず、世界の流動性にも影響を与えることになります。一旦落ち着いた世界の株式市場の波乱材料となるため、世界の投資家が注目しています。

 

  • 市場が注目していた1月のECB理事会で、ドラギ総裁は記者会見でTLTROが議題に取り上げられたことは認めたものの、明確な見解は示しませんでした。しかし、クーレ理事が2月15日の講演で「(新たなTLTRO導入は)あり得る」と発言したことで、株式市場は金融株中心に大きく反応したわけです。

 

  • TLTROⅡによる資金調達額を見るとイタリア(33%)、スペイン(23%)で56%を占め、フランス(15%)、ドイツ(12%)が続きます。各国銀行の資産に占めるTLTROの割合はイタリアが6.5%、スペインが6.3%、ポルトガルが5.3%、ギリシャ3.8%と南欧の金融機関が高いシェアを占めます。

 

  • 欧州の株式市場は金融セクターのウエイトが高いため、仮に新たな長期資金供給オペの導入が実現すれば株式市場にはポジティブ材料となります。一方で為替市場ではユーロの売り材料(相対的にドルの買い材料)となりそうです。今週公表される1月のECB理事会の議事要旨や3月7日のECB理事会を含む政策イベントには注目です。

 

 

2月19日(火)

 

米国金融市場の主な指標

 

  • 米10年国債利回り:2.63%(前日2.66%)
  • ニューヨーク市場ドル円相場:1ドル=110.56-110.57円(前日110.40-110.41円)
  • ニューヨークダウ30種平均:25,891.32ドル(前日比+8.07ドル)
  • ナスダック総合株価指数:7,486.77ポイント(前日比+14.36ポイント)
  • S&P500種株価指数:2,779.76ポイント(前日比+4.16ポイント)
  • 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,348ポイント(前日1,351ポイント)
  • 米VIX指数(恐怖指数):14.88(前日14.91)
  • ニューヨークWTI原油先物1バレル=56.09ドル(前日比+0.50ドル)
  • ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,344.8ドル(前日比+22.70ドル)

 

 

東京株式市場

 

  • 日経平均株価:21,302.65円(前日比+20.80円)
  • TOPIX:1,606.52ポイント(前日比+4.56ポイント)

 

データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)

https://nikkei225jp.com/nasdaq/

 

 

 

(お願い)

海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。

閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。

 

以上

 

 

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