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2019年2月15日
【ゾンビとゴースト】(2月15日配信)
おはようございます。
【ゾンビとゴースト】
【ニューヨーク市場】 14日の米金融市場は金利低下・株安、米12月の小売売上高が重石
- 14日のニューヨークの金融市場は米長期金利が低下(債券価格が上昇)し、ドルが下落しました。NYダウは前日比100ドルを超す下落となりました。12月の米小売売上高が市場予想に反し過去9年で最大の減少となり、債券の買い材料、ドルとNY株式の売り材料となりました。
- NYダウ30種平均は前日比103ドル安の25,439ドルで引けました。昨年12月の米小売売上高が減少となり、米景気の減速懸念が強まりました。ダウの下げ幅は一時200ドルを超えました。ナイキやゴールドマン・サックス、スリーエムなど国内景気に敏感な株の売り材料となりました。S&P500種も下落しました。
- コカ・コーラの2018年10~12月期決算は、売上高が6%減となりました。ボトリング事業のフランチャイズ体制の見直しや値上げが響いた模様です。業績悪化を受け株価は急落、1銘柄でNYダウを28ドル引き下げました。一方、前日夕に市場予想を上回る四半期決算と増配を発表したIT(情報技術)のシスコシステムズがダウを押し上げました。
- 2018年12月の米小売売上高は前月比1.2%減と、約9年強ぶりの大幅な減少となりました。18年末に経済が急減速したことを示唆しました。市場予想は0.2%増でした。12月の前年同月比は2.3%増となりました。12月は金融市場の混乱や政府機関の一部閉鎖、大寒波など天候要因が影響したと指摘されています。市場では米実質国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費の減速が懸念されました。ただし、賃金上昇や雇用者数の増加など堅調な労働市場からみると少し意外感があります。政府閉鎖や株価急落が影響している可能性があります。
- 債券市場では長期金利が2.65%と前日の2.70%から低下、ドル円相場は110.45ドル台ドルと前日の110.97ドル台からドル安・円高となりました。投資家の不安心理を示す米VIX指数は16.22と前日の15.65からやや悪化しました。
- 米小売売上高の減少を反映し、アトランタ連銀の経済予測モデル「GDPナウ」の昨年第4・四半期の米国内総生産(GDP)伸び率見通しは年率1.5%と、2月6日時点の2.7%から大幅に下方修正されました。バークレイズとJPモルガンも14日、第4・四半期の米経済成長率予想を引き下げました。 JPモルガンは経済成長率予想(年率)をこれまでの2.6%増から2%に下方修正しました。
- ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事は14日朝、米CNBCテレビのインタビューで「(FRBの)バランスシートの正常化は今年中に終わらせるべきだろう」と述べ、2017年から進めている資産圧縮の終了に言及しました。為替相場が改めてドル安要因と受け止めた可能性があります。
- 画像処理半導体(GPU)大手の米エヌビディアが14日発表した2018年11月~19年1月期決算は純利益が前年同期比49%減となりましたが1株利益は市場予想を上回りました。1株利益が市場予想より悪くなかったという評価で14日の時間外取引でエヌビディア株は上昇しています。
【今日のポイント】
ゾンビとゴースト
- 米労働省が12日発表した2018年12月の雇用動態調査(JOLTS)によると、非農業部門の求人数(季節調整済み、速報値)は前月から16万9,000件増の733万5,000件となり、4カ月ぶりに過去最高を更新しました。求人率(求人数を、雇用者数総計と求人数を足したもので割った比率)は4.7%と過去最高を更新した8月に並ぶ水準となりました。
- 1月の米雇用統計によると米失業者数は653.5万人なので、求人数の方が多いことがわかります。2018年3月以降、求人数が失業者数を上回る状況が続いており、12月までの3ヵ月間でみるとその差は100万人を超える水準となっています。
- 2019年1月の米雇用統計では、政府機関の一部閉鎖を受け失業率は前月から悪化したものの、非農業部門の雇用者数は11ヵ月ぶりの増加幅を記録しており、景気拡大を背景に米国企業の雇用意欲は極めて強いと見られます。今回の求人数にそれが表れています。
- 一方、労働者がより良い仕事を求めて自発的に離職する動きを示す指標の一つである、自発的な離職率は2.3%と、2001年以来約17年ぶりの高水準を維持しています。米国の労働市場では自発的な離職に対して意欲的であることを示しています。
- 米国では職場からある日突然ふらっといなくなる人のことを“ゴースト”と呼ぶそうです。今よりももっと良い条件で働く機会が増えたため、上司に告げずに突然いなくなるケースが多いようです。一方、経営が事実上破綻しているにもかかわらず存続している企業のことを“ゾンビ企業”と言います。世界的に金融緩和の行き過ぎで貸すところがなくなった銀行が貸し続けるため倒産せずに済んでいるわけです。“ゾンビ企業”が存続するなか、労働市場ではゴーストが彷徨っている状況です。
- 昨年後半以降、世界的な景気減速ムードが高まる中、堅調な米国経済の持続性が注目されます。12月の小売売上高は弱い数値となりましたが、堅調な労働市場からみるとやや違和感があります。特殊要因が影響している可能性もあり、慣らしてみる必要があるかもしれません。労働需給が近年になく堅調であるため、米国経済を支える最大のセクターである個人消費には信頼感が引き続き持てると思います。
2月14日(木)
米国金融市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.65%(前日2.70%)
- ニューヨーク市場ドル円相場:1ドル=110.45-110.46円(前日110.97-110.98円)
- ニューヨークダウ30種平均:25,439ドル(前日比-103ドル)
- ナスダック総合株価指数:7,426ポイント(前日比+6ポイント)
- S&P500種株価指数:2,745ポイント(前日比-7ポイント)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,344ポイント(前日1,340ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):16.22(前日15.65)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=54.41ドル(前日比+0.51ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1313.9ドル(前日比-1.2ドル)
東京株式市場
- 日経平均株価:21,139円(前日比-4円)
- TOPIX:1,589ポイント(前日比+0.4ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
(お願い)
海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。
閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。
以上
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