メルマガ
2019年1月31日
【J-REIT市場は当面安定的に推移する可能性が高い】(1月31日配信)
おはようございます。
【J-REIT市場は当面安定的に推移する可能性が高い】
【ニューヨーク市場】
米国市場は大幅高、NYダウは434ドル高
- 30日の米株式市場は大幅続伸、NYダウは前日比434ドル高の25,014ドルと12月4日以来の高値で引けました。上げ幅は一時500ドルを超えました。米FRBは30日のFOMCで追加利上げを見送りました。声明文で利上げに対する慎重姿勢が改めて確認できたことで買い安心感が広がり、一段高となりました。午前中は前日に決算を公表したアップル株が買われハイテク全般に買い戻しが入りました。好決算を発表したボーイング株がダウの上昇をけん引しました。
- 米FRBのパウエル議長は、30日のFOMC後の記者会見で今後の金融政策については「慎重に進めることを保証する」と述べ、従来の利上げシナリオを見直す考えを強調しました。パウエル議長は「次の利上げには、何より物価上昇を確認する必要がある」と述べました。
- FRBは資産縮小に関連した声明文も別枠で公表して「経済活動や市場動向に応じて、バランスシートの正常化の詳細を修正する用意がある」と明示しました。前回12月の記者会見でパウエル議長は「資産縮小は順調で見直す必要はない」とコメントしましたが、方針転換に踏み切った格好です。株安などが再発すれば、資産縮小のペースの減速や一時停止などが視野に入りそうです。
- 米航空機大手ボーイングが30日発表した2018年10~12月期決算は売上高、純利益とも第4四半期の過去最高を更新しました。18年12月期通期の売上高、純利益も過去最高を更新するなど好調でした。米中貿易摩擦や中国の景気減速が懸念材料ですが、同社CEOは「中国の旅客市場は国内総生産(GDP)の伸びを上回っており、航空機需要は引き続き力強い」と述べました。2019年12月期も増収増益見通しです。ボーイングの株価は前日比6.2%上昇し1銘柄でダウを約154ドル押し上げました。マクドナルドの2018年10~12月期決算は、コスト抑制の効果で純利益が前年同期比2倍超の増益となりました。株価は下落となりました。
- 全米不動産協会(NAR)が発表した2018年12月の仮契約住宅販売指数は99.0で、前月の改定値から2.2%低下、14年4月以来4年8カ月ぶりの低水準となりました。前年同月比でも9.8%低下しており、前年同月比での低下は12カ月連続です。株式市場の変動による消費者景況感の軟化、住宅価格の高騰、住宅ローン金利の上昇が影響しました。中古住宅販売の先行指標と言われ、今後の住宅市場の動向には注意が必要です。
- 1月の民間版雇用統計は民間部門雇用者数が前月比21.3万人増と、市場予想の17.8万人増を上回りました。 米労働市場が引き続き堅調であることが示されたほか、労働市場が35日間に及んだ政府機関の一部閉鎖により大きな影響は受けなかったことも示されました。
- 米FRBの利上げペースが鈍化する見通しから、米長期金利は2.7%を割り込み2.67%と前日の2.71%から低下、ドル円相場は一時109円台を割り込む108.90台で取引されました。円高は東京株式市場の上値を抑える材料となります。
- 投資家の不安心理を示す米VIX指数は17.66と前日の19.13から大きく低下しました。ハイテク株が多く取引されるナスダック総合は2.2%高と大幅上昇。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は2.8%高で引けました。FRBの政策変更が投資家心理を改善させ、ハイテク株を押し上げた格好です。
【今日の東京市場のポイント】
東証マザーズ上場のバイオ関連の下げ止まりがカギ
- 本日の東京市場で、日経平均は反発の見通しです。米国の株価上昇を受け投資家心理に安心感が広がりそうです。ただし、新興市場は、昨日急落したマザーズ市場の影響が尾を引く可能性があります。
- 30日の東京マザーズ指数は前日比8%も急落し、日経平均にも影響を与えました。東証マザーズ市場の時価総額首位で指数寄与度が高いサンバイオ株に売りが膨らみストップ安比例配分となりました。大日本住友製薬も後場の取引時間中は値つかずでストップ安となりました。
- サンバイオは再生細胞医薬品の不調を発表したことが急落のきかっけで、同社と新薬を共同開発する大日本住友は1銘柄で日経平均を25円も押し下げました。そーせいなどバイオ株が軒並み警戒売りに押された。
- サンバイオは本日も売りが予想され、新興市場を中心に中小型株にはまだ厳しい展開が想定されます。信用の投げ売りなどにより、短期的には値持ちの良かった銘柄ほど売りに押される可能性もあります。
- 一方、昨日の株価反応で注目されたのはハイテク関連です。米アップルの時間外の上昇を好感して太陽誘電や村田製作所が大幅高。好決算の信越化学に買いが入り、SUMCOも連れ高しました。下げ圧力がかかるバイオ関連と上昇期待のハイテク関連で綱引きになりそうです。
【今日のポイント】
J-REIT市場は当面安定的に推移する可能性が高い
- 2018年は多様なリスク資産が下落した中で東証REIT指数(J-REIT・不動産投資信託)は底堅く推移しました。年間騰落率は6.7%上昇と日経平均の12%下落と比べて成績が際立ちます。特に市場が大荒れとなった18年12月も2.4%の下落にとどまり、10%を超す大幅下落となった日経平均と比べても良好でした。J-REITの業績が堅調に推移していることや、堅調な不動産市況を背景とした配当成長余地が評価されていると考えられます。30日のJ-REIT指数は1,837と昨年末の1,774から3.5%上昇、日経平均の同2.7%を上回る堅調な推移となっています。米FRBは海外経済動向や金融市場に配慮しながら、当面引き締めペースを緩めると考えられます。当面、J-RIET指数は安定的に推移する可能性が高いと思われます。
- 金融資産としてのJ-REITの特徴は、一般の株式と比べて配当金(分配金)が高く、安定している傾向があります。REITは長期に安定した賃料を生む不動産が投資対象で、利益の90%を分配すれば法人税が課税されません。また、実物の不動産投資と比べて手軽に投資できます。少額で優良な物件に分散投資ができるほか、株式市場で時価での売買が可能な点も特徴です。
- J-REITの投資主体別売買動向をみると、2018年は通年で海外投資家が3,057億円の買い越しと、2007年の3,928億円に次ぐ、大きな買い越しとなりました。同期間で海外投資家は株式市場(現物市場)で5兆7,000億円も売り越したことと対照的です。特に昨年9月以降、海外投資家は4ヵ月連続で買い越しました。J-REITは2017年にTOPIXの上昇率と比べ大きく劣後(アンダーパフォーム)しており、割安感が強まっていたことと、米金利低下とNY株式相場の下落で東京株式市場が不安定化する中で、配当利回りの魅力が高い点が見直された背景と思われます。特に、10月以降の米長期金利の低下を受けて、海外投資家が株式の一部資金をJ-RIETに振り向けた可能性が高いと思われます。
- グローバルな観点で見てもREIT市場は堅調です。1月25日時点で各国のREIT市場の価格の騰落率をみると、グローバルREIT(S&P500 REIT指数)は3ヵ月前比+3.3%、6ヵ月前比+2.1%、1年前比+6.0%と好調です。地域別ではユーロ圏と英国を除く主要国のREITがプラスの成績となっています。つまり、過去1年間に大きく乱高下しながら結局下落した株式とは対照的に、グローバルREITは上げ下げを繰り返しながら、概ね右肩上がりで推移してきたと言えます。
- グローバルREITを支える理由は、1.業績の安定感、2.金利上昇懸念の後退、3.投資価値の面からの割安感がある、の3点です。REITの収益の源泉はテナントから得られる賃料です。次回の改定(オフィスで2-3年、商業施設では5-7年)までは変動しない固定賃料がその多くを占めており、一般の企業に比べて業績が安定する傾向があるとされます。例えば「丸の内の大家さん」と言われ、ビル賃貸収入が売上高の4割超を占める三菱地所をイメージしていただければわかります。
- 先進国のREITの配当利回り(18年12月末)は4.7%もあります。米国REITの平均配当利回りは4.59%(同)と米10年国債利回り(2.76%)を大きく上回ります。日本のREITの平均配当利回りは4.02%(同)と長期金利(0%)と比べて格差が歴然としています。従って世界的に長期金利が低下すると相対的にREITの投資魅力が高まり価格上昇要因となります。逆に金利が上昇するとREITの投資魅力は低下します。
- 2018年10月にかけて米長期金利は一時3.2%台まで上昇しましたが、その後は米大型減税効果の剥落や米中貿易摩擦などによる米景気減速懸念で2.5%台まで低下しました。世界的にREITの人気が高まったのは米長期金利の低下が背景と思われます。なお、グローバルREITのPBR(株価純資産倍率)は1.52倍と2010年以来の低い水準にあり、投資尺度からは割安感があると判断されます。
- グローバルREIT市場の時価総額は約1.20兆ドル(約131兆円、18年12月末)で、このうち米国REIT市場は7,840ドルと全体の約65%を占めます。グローバルREITの時価総額は日本の株式時価総額・約600兆円の5分の1しかないので、株式や投資適格債など代表的な金融資産と比べて市場規模は小さく、REITの流動性(売買代金や時価総額)は高いとは言えません。投資の際のリスク・リターン分析で、REITのリスクは株式並みに高いと言われます。つまり流動性に欠けるため、価格変動率が株式並みに高いということです。不動産ブームが来ればREIT価格は上昇しますが、ブームが終われば資金が引き上げられ、価格は急落することもあります。
- 米FRBが利上げを一時的に停止し、保有する資産の縮小ペースを見直すかもしれないという観測が高まれば、REITの追い風となるかも知れません。しかし、世界最大のREIT市場をもつ米国の不動産向け融資の頭打ちや、景気減速に伴う不動産市況の悪化リスクには注意が必要です。一般的に、金利が上昇する局面では借入金が多い不動産業の収益にはマイナスです。銀行の融資姿勢が厳しくなれば不動産価格にも逆風です。米国の景気とFRBの金融政策、米長期金利が今後のカギと言えそうです。
1月30日(水)
ニューヨーク市場の主な指標
- 米10年国債利回り:2.67%(前日2.71%)
- ニューヨーク市場ドル円相場:1ドル=109.00-109.01円(前日109.33-109.34円)
- ニューヨークダウ30種平均:25,014ドル(前日比+434ドル)
- ナスダック総合株価指数:7,183ポイント(前日比+154ポイント)
- S&P500種株価指数:2,681ポイント(前日比+41ポイント)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,271ポイント(前日1,236ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):17.66(前日19.13)
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=54.23ドル(前日比+0.92ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1315.5ドル(前日比+0.3ドル)
東京株式市場
- 日経平均株価:20,556円(前日比-108円)
- TOPIX:1,550ポイント(前日比-6ポイント)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
(お願い)
海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。
閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。
以上
—–** アナリスト・トレーニング **—–