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2018年12月20日
【米利上げを決定、いずれ株式市場に配慮する政策も】(12月20日配信)
おはようございます。
【米利上げを決定、いずれ株式市場に配慮する政策も】
- 米FRBは19日のFOMCで3カ月ぶりの利上げを決め、FFレートを2.25-2.50としました。先行きの利上げシナリオも公表し、2019年の想定ペースを従来の3回から2回に引き下げました。20年までに利上げを停止する可能性も示唆しました。米金利上昇やドル高、世界経済の減速などで米景気の下振れリスクを意識したことや、米国のインフレ率に過熱感がないことが背景と考えられます。米FOMCの決定は市場の事前予想に近いと思います。
- FOMCを前にした金融市場は欧州の政治リスクや中国経済の減速などを背景に、極端なリスク回避の姿勢が強まっていました。具体的はニューヨーク株式の下落と米長期金利の低下(国債相場の上昇)です。さらにWTI原油先物価格が直近に急落しました。
- 10月以降のニューヨーク株式の下落によって、イエレン前FRB議長が指摘した株価の割高感は解消しました。米国のコアCPIが伸び悩むなかで原油先物価格が下落したことは先行きのインフレ懸念の後退を示唆します。金融市場では事前に9月FOMC会合における2019年の利上げ回数(3回程度)の引き下げや、長期均衡金利(3.00%)の引き下げを織り込んでいました。
- 米国はもともと自国第一主義ですが、過去には海外の事象が自国経済に悪影響を及ぼすような場合は、米FRBは金融政策を柔軟に実施、経済と株式市場を支えた実績があります。
- 米国が戦後最長の景気拡張期間となったのは1991年~2001年にかけての120ヵ月です。米国が1993年に金融危機を脱した後に米FRBは94年から利上げを開始しました。しかし、95年から98年にかけてメキシコ危機、アジア通貨危機、ロシア危機が起きた際にはFRBは2回の利上げ停止と1回の利下げ等、弾力的な対応を実施し米国株式をサポートしました。現在も米FRBはニューヨーク株式の下落の背景やその影響を注目して分析していると思われます。
- 今回のFOMCの結果を受けた米長期金利は2.75%に低下、株式市場は急反落しています。株式市場が期待していた「米景気には強気を維持、しかし金融政策はハト派」の判断ではなかったことや、FRB議長の会見で米経済成長の減速に言及したこと、さらに米FRBのバランスシートを縮小する政策にも変更がないことを強調したことを材料視しています。
- ドル円相場は112.40円台で前日比大きな変化はありません。投資家の不安心理を示す米VIX指数が高いため、マーケットは不安定ですが、米FRBが株式市場の下落を気にし始めたことは確かだと思います。今後の株式市場次第では資産縮小政策の停止など株価対策も話題に上がってくると思われます。
12月20日(水)のニューヨーク金融市場
「20日の米国株、ダウ平均は前日比351ドル安、年初来安値を更新」
- 19日の米株式相場は反落し、ダウ30種平均は前日比351ドル安の23,323ドルで引けた。2017年11月以来、約1年1カ月ぶりの安値。米FOMCの声明などを受け米FRBが市場の期待ほど利上げに慎重な「ハト派」寄りではないと受け止められた。
- パウエル議長がFOMC後の記者会見で世界景気の減速懸念に言及し、世界経済の先行き不透明感が改めて意識されたことも株売りを促した。また金融政策の正常化で進める資産圧縮について「変更はない」と発言し、金融環境の引き締まりが意識された。
- ダウ平均ではアップルや航空機のボーイング、建機のキャタピラーなど景気敏感とみなされる銘柄の下げが目立った。
- セクター別では一般消費財、情報技術、資本財サービスが下落上位となった。
- 景気に敏感なハイテク関連も安く、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は同4.2%と大幅下落となった。
米長期金利
- 10年国債利回り:2.75%(前日2.81%)、5月下旬以来7カ月ぶりの低水準
ニューヨーク為替相場
- ドル円相場:1ドル=112,43-112.44円(前日112.50-112.51円)
米主要株価指数
- ニューヨークダウ30種平均23,323ドル(前日比-351ドル)
- S&P500種株価指数:2,506ポイント(前日比-39)
- ナスダック総合株価指数:6,636ポイント(前日比-147)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,127ポイント(前日1,177ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数)25.58:(前日25.58)
S&P500種株価指数の主な上昇・下落業種
- 上昇:なし
- 下落:一般消費財、情報技術、資本財サービスなど
ニューヨークダウ30種平均への主な上昇寄与度・下落寄与度銘柄
(ダウ平均変動幅への影響)
- 上昇寄与:ベライゾンのみ
- 下落寄与:ボーイング、アップル、スリーエムなど
国際商品市況
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=47.20ドル(前日比+0.96ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,256ドル(前日比2.8ドル)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
マーケットが注目したと思われる材料
【FRBが3カ月ぶり利上げ、来年は2回にペース減速】
- 米FRBはFOMC会合でFF金利を2.25─2.50%に引き上げることを決定した。利上げは予想通り。FRBが示した2019年の利上げ回数の見通しは2回。9月に示した前回見通しの3回から減少したことで、市場のボラティリティーが高まり、世界的な成長が鈍化する中、FRBの引き締めサイクルが終盤に差し掛かっている可能性があることが示唆された。FRBが示した最新の経済見通しでは、経済成長率は、19年は2.3%、20年は2.0%になると予想。19年については前回の2.5%から下方修正となる。インフレ率については、19年は1.9%とし、前回の2.0%からやや引き下げた。
【米11月中古住宅販売、前月比1.9%増 前年比は大幅マイナス】
- 11月の米中古住宅販売戸数(季節調整済み)は、年率換算で前月比1.9%増の532万戸.市場予想である0.6%減の520万戸に反して2カ月連続のプラスとなった。11月の前年同月比は7.0%減と、2011年5月以来の大幅な落ち込みとなった。
12月20日の東京株式市場
相場のポイント
- 20日の東京市場で日経平均は前日比127円安の20,987円で引けた
- 心理的節目の21,000円を割り込み3月26日以来9カ月ぶりの安値
- ドル円相場が112円台前半の円高で推移
- 本日新規上場したソフトバンク(SB)の初値が公開価格を下回り、その後も断続的な処分売りが続いたことで投資家心理が悪化した
主要な株価指標
- 日経平均株価:20,987円 (前日比-127円)
- TOPIX:1,556ポイント(前日比-6)
- NT倍率(日経平均÷TOPIX):13.49倍(前日13.51倍)
- 東証1部売買代金:28,046億円
- 東証1部年初来高値銘柄数2/年初来安値銘柄数692
- 東証1部値上がり銘柄数883/値下がり銘柄数1,171
- 東証1部騰落レシオ:78.55(前日74.53)
- TOPIX33業種
上昇上位:空運、建設、精密、機械、ガラス土石など
下落上位:鉱業、電気ガス、石油石炭、医薬品など
- 日経平均寄与度(日経平均の変動幅に影響した値幅)
上昇寄与度:テルモ(+5円)、スズキ(+5円)、アドバンテ(+4円)など
下落寄与度:ファーストリテイ(‐37円)、東エレク(‐22円)、ユニー・ファミマ(‐19円)など
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