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おはようございます。
【先週の急騰・急落はメジャーSQによるポジションの影響か】
14日の東京市場は大幅反落、日経平均は500円近い下落となりました。要因は中国の11月の小売売上高、日銀短観、12月メジャーSQ(株価オプションと株価指数先物の特別清算日)、クリスマス休暇入り前のポジション調整の4つが影響したと考えられます。先週末のニューヨーク市場の下落の影響で17日の日経平均は安く始まりそうですが、14日の急落には特殊要因もあり割引いて考える必要があります。
【中国の小売売上高】
- 中国の11月の小売売上高は前年同月比8.1%増となったものの、伸び率は前月(8.6%増)からさらに縮小し、2003年5月以来、15年半ぶりの低水準となりました。11月にはインターネットの大規模セール「独身の日」があったのもかかわらず、小売売上高を押し上げらなかったので、中国の個人消費はかなり弱いのではないかというメディアの解説です。しかし、当然ですが、大規模セールがわかっているならばその日に買えば良いわけで、近年は大規模セールの前にかなりの買い控えがあることが知られています。マーケットの解説は正しいとは言えません。中国経済は全体的に減速傾向にあることを中国政府は認めています。だからこそ中国政府は過剰債務の削減を急がず、逆に夏以降は金融緩和と財政を組み合わせた景気対策を打ち出しています。経済のソフトランディングに舵を切り替えたのです。「15年半ぶり低水準」のニュースのヘッドラインに過剰に反応してしまった感じは否めません。
【日銀短観】
- 日銀短観の第一印象は、足元は「意外に良い」です。2018年度の想定為替レートを9月短観の1ドル=107.40円から109.41円に円安方向に修正したことや、西日本の大型台風、北海道の地震など、夏場の天候による下振れ要因が後退したことで多くの業種で業況判断DIが改善しました。大企業製造業の業況判断DIはプラス19(前回比変わらず)と4期ぶりに下げ止まり、大企業非製造業はプラス24(前回比+2)と改善しました。非製造業ではインバウンド関連や運輸関連の景況感が上向きました。
- しかし3カ月後の「先行き」は米中貿易摩擦の影響や国内消費の低迷などで、多くの業種で警戒感がにじみでています。大企業製造業の先行きはプラス15(変化幅-4)、同非製造業は、プラス20(同-4)、全規模全産業は「最近」のプラス16(同+1)から先行きはプラス10(同-6)といずれも悪化を見込んでいます。売上・収益計画は想定為替レートの修正で18年度の上期は上方修正となったものの、下期は下方修正となっています。株式市場はDIの先行き警戒見通しと下期の業績の下方修正を懸念した可能性があります。
日銀短観↓
【メジャーSQ】
- 株価指数先物や株価オプション取引には、決済期日というものが決められています。現物の株式のように、何年も保有という事はできません。そのため、満期日前までに反対売買を行わなければならないのですが、反対売買を行わない場合にSQ=特別清算指数で決済されることになります。反対売買を満期日までに行わない場合に使われる精算価格のことをSQと呼んでいます。株式先物・株価指数オプション取引の最終決済を行うための清算指数のことを言います。オプション取引は毎月の第2金曜日、先物取引は3月・6月・9月・12月の第2金曜日がSQ日に当たります。オプションと先物のSQが重なる場合を『メジャーSQ』と呼んでいます。14日はこのメジャーSQに当たります。特別清算指数は金曜日の日経平均の寄り付き価格で決まります。
- 特別精算値が高ければ利益を得られる投資家もいますし、精算値が低ければ利益を得られる投資家もいます。そのために、ヘッジファンドなど海外投資家を中心に日経225に思惑の売買が入って乱高下するケースは過去にもありました。日経平均は先週の12日(水)に前日比+454円高、13日(木)は同+213円高と、大きな買い材料もないのに2日間で約667円も急騰しました。SQ値を高くしたい投資家が木曜日まで指数寄与度の高い銘柄を買い上がった反動が金曜日に表れたと考えられます。14日の急落はメジャーSQという需給の大イベントに向けたポジションが影響した可能性が高いと思います。ただし、大きな建て玉が一度に決済できるため、次の3ヵ月(3月のSQまで)を買いで勝負したい投資家は大量に仕込むチャンスでもあります。過去のケースではメジャーSQが相場の転換点(下落してきた場合は反転への起点、上昇してきた場合は反落へ)となったケースもあります。ちなみに日経平均先物12月物のSQ値は21,618円でした。
【クリスマス休暇入り前のポジション調整】
- 最後はクリスマス休暇入り前のポジション調整です。今週は米FOMCという年内最後の大きなイベントがあります。市場予想から大きく変わるサプライズとなる可能性は低いですが、ポジションを中立に戻して休暇を取る海外投資家は多いはずです。
金曜日のニューヨーク株式市場は大幅反落となりました。シカゴの日経平均先物(円建て)は21,220円台と金曜日の東証の大引けと比べ155円程度の下落です。月曜日の東京市場で日経平均は下落でスタートすると思われます。ただし、14日の急落がメジャーSQに向けた思惑的な売買とそのポジション調整、そして週末やクリスマス休暇を前にしたポジション調整の要因も大きいのでそこは割引いて考えるべきです。
(以上)
12月14日(金)のニューヨーク金融市場
「14日の米国株、ダウ平均は500ドル近い大幅反落」
- 米国株は全面安の展開で、ダウ30種平均は前日比496ドル安。
- 中国の11月小売売上高が弱かったこと、米中摩擦懸念などから中国関連が安い。
- ミルクにアスベストが混入していたことを知っていたと伝えられたジョンソンエンドジョンソンが同10%下落し1銘柄でダウ平均を同100ドル引き下げた。
- ユナイテッドヘルス・グループ、ボーイング、アップルなど下落寄与度上位5銘柄でダウを約270ドル引き下げるなど値がさ株主導による下落。
- S&P500種セクター別ではヘルスケアが3%超、ITとエネルギーが2%超下落したほか、全11セクターが下落した。ハイテク株主体のナスダック総合は2.26%安と続落。
米長期金利
- 10年国債利回り:2.89%(前日2.91%)
ニューヨーク為替相場
- ドル円相場:1ドル=113.33-113-34円(前日113.50-113.60円)
米主要株価指数
- ニューヨークダウ30種平均:24,100ドル(前日比-496ドル)
- S&P500種株価指数:2,599ポイント(前日比-50)
- ナスダック総合株価指数:6,910ポイント(前日比-159)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,177ポイント(前日1,194ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):21.63(前日20.65)
S&P500種株価指数の主な上昇・下落業種
- 上昇:なし
- 下落:ヘルスケア、情報技術、エネルギー、一般消費財など
ニューヨークダウ30種平均への主な上昇寄与度・下落寄与度銘柄
(ダウ平均変動幅への影響)
上昇寄与:プロクターアンドギャンブル、キャタピラー
下落寄与:ジョンソンエンドジョンソン、ユナイテッドヘルス・グループ、ボーイングなど
国際商品市況
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=51.2ドル(前日比-1.3ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,241ドル(前日比-6ドル)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
マーケットが注目したと思われる材料
【米J&J、発がん性物質混入を隠蔽か】
- 米大手メディアは14日、米日用品大手のジョンソンエンドジョンソンが、70年代からベビーパウダー製品に発がん物質が混入するケースを認識していたと報じた。業績への影響が広がる可能性が指摘されており、米株式市場ではJ&J株が急落。同社株は一時、前日終値比で下げ幅が12%を超える場面があった→ダウ30種平均の最大の下落寄与度銘柄
12月14日の東京株式市場
主要な株価指標~中国の景気懸念で大幅反落~
- 日経平均株価:21,374円 (前日比-441円)、3日ぶりに大幅反落
- TOPIX:1,592ポイント(前日比-24)
- NT倍率(日経平均÷TOPIX):13.43倍(前日13.39倍)
- 東証1部売買代金:31,637億円
- 東証1部年初来高値銘柄数8 /年初来安値銘柄数152
- 東証1部値上がり銘柄数252 /値下がり銘柄数1,826
- 東証1部騰落レシオ:82.04(前日92.22)
- TOPIX33業種
上昇上位:電気ガス
下落上位:鉱業、精密、機械、証券商品など
- 日経平均寄与度(日経平均の変動幅に影響した値幅)
上昇寄与度:菱地所(+1円)、ミツコシイセタン(+0円)、富士フイルム(+0円)など
下落寄与度:ソフトバンクG(‐45円)、東エレク(‐28円)、ファナック(‐20円)など
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