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2018年12月14日
【トランプ米大統領が12月以降、保護主義にアクセルを踏んだ理由】(12月14日配信)
おはようございます。
【トランプ米大統領が12月以降、保護主義にアクセルを踏んだ理由】
- 12月1日の米中首脳会談では2,000億ドル相当の中国製品に対する25%の追加関税が一旦猶予され、新たに中国の構造改革に関する5分野で協議を開始することで合意しました。期限は2019年2月28日までの90日間です。合意できなければ米国は追加関税を発動するとしています。
- トランプ米大統領が12月以降、保護主義にアクセルを踏んでいるように見えるのは11月の米中間選挙が影響している可能性があると思います。共和党は議会上院で過半数を維持したものの、下院では議席を失い過半数を失いました。追加減税などいくつかの政策はほぼ実現できなくなりました。逆に民主党の協力が得やすいのは、景気対策ではインフラ投資であり、通商政策では保護主義的政策です。特に次世代通信5Gなどで技術的な覇権を狙う中国を標的にした保護主義政策を優先する戦略に切り替えたのではないかと思います。
- 1990年代前半の日米通商交渉で貿易不均衡が最大の政治テーマになりました。当時、悪役にされたのは巨額の貿易黒字を稼いでいた日本の自動車産業でした。当時のクリントン米大統領(民主党)は1995年5月、日本車になんと100%の関税を科す案を公表しました。米通商法301条に基づく調査開始から日本が譲歩して決着するまで1年近くかかっています。
- 中国の構造改革を巡る5つのテーマ(技術移転の強要の是正、知的財産権保護、非関税障壁の是正、サイバー攻撃の停止、サービス・農業分野の市場開放)は民主党内に支持する議員も多いと思います。今回棚上げされた「中国製造2025」の見直しや「南シナ海の軍事拠点化」の見直しなどのテーマは数年単位のテーマとなる公算が高いでしょう。実現できるかも不透明です。
- ただし、米中協議は米国が中国に対して90日間の猶予を与えたように、一気に進めるというよりも小休止を挟みながら悪化していくのではないかと考えられます。短期で結果を求めた場合、中国だけでなく米国経済にも影響が避けられない恐れがあるためです。すなわちニューヨーク株式市場の大幅下落につながりかねないわけです。米国の大統領にとっては支持率も重要ですが、それ以上に国民の金融資産が影響を受ける株式市場は経済政策上、最も重要なメルクマールのはずです。
- 12月11日の米株式市場でニューヨークダウ30種平均は昨年末の水準をわずかに下回ってきました。中小型2000銘柄で構成する「ラッセル2000種」株価指数は同6.2%下落しています。8月に付けた高値からは17%下落しました。米株式市場からは警戒信号が発信され始めています。このタイミングで中国は「中国製造2025」を見直すことを検討しているとメディアは伝えました。米国の次の一手に注目です。
以上
12月13日(木)のニューヨーク金融市場
「13日の米国株はまちまちの展開、ダウ平均は前日比70ドル高」
相場のポイント
- 13日の米国株は続伸、ダウ工業株30種平均は前日比70ドル高、ナスダック総合株価指数は同27ポイント安で引けた。
- 中国が「中国製造2025」を見直す方針や中国による米国産大豆の大量購入などを複数のメディアが報じ、米中の交渉が進展しているとの期待につながった。
- 朝方発表の週間の新規失業保険申請件数は市場予想以上に大幅に前週から減った。米労働市場の引き締まりが続いているとの観測が米景気の減速懸念の後退につながった。
- アナリストによる投資判断引き上げでプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が高く、テキサス州に新たなオフィス拠点を建設すると発表したアップルにも買いが先行した。
米長期金利
- 10年国債利回り:2.91%(前日2.91%)
ニューヨーク為替相場
- ドル円相場:1ドル=113.50-113.60円(前日113.24-113.25円)
米主要株価指数
- ニューヨークダウ30種平均:24,597ドル(前日比+70ドル)
- S&P500種株価指数:2,650ポイント(前日比-0.5)
- ナスダック総合株価指数:7,070ポイント(前日比+27)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,194ポイント(前日1,198ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):20.65 (前日21.46)
ニューヨークダウ30種平均への主な上昇寄与度・下落寄与度銘柄
(ダウ平均変動幅への影響)
- 上昇寄与:マクドナルド、スリーエム、プロクターアンドギャンブルなど
- 下落寄与:ナイキ、ボーイング、アメリカン・エキスプレスなど
国際商品市況
- ニューヨークWTI原油先物1バレル=52.58ドル(前日比+1.4ドル)
- ニューヨーク金先物1トロイオンス=1,247ドル(前日比-2.6ドル)
データを参照したサイト(ダウ30種銘柄の上昇・下落寄与度はこちら↓)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
マーケットが注目したと思われる材料
【11月の米財政収支は2,050億ドルの赤字】
- 11月の米財政収支は2,050億ドルの赤字となった。市場予想は1,880億ドルの赤字だった。歳出が前年同月から18%増加、歳入は1%減少。今会計年度の累積赤字は51%拡大して3,050億ドルと前年度の同期間の2,020億ドルから大幅増
【米失業保険の新規申請、大幅減少】
- 米労働省が発表した新規失業保険申請件数(季節調整済み、8日までの1週間)は20万6,000件となり、前週の改定値から2万7,000件減った。市場予測(22万5,000件程度)を大きく下回った。2週連続の減少で、9月15日以来約3カ月ぶりの低水準→米労働市場環境は引き続き堅調なことを示唆
【スイス中銀、マイナス金利据え置き】
- スイス中銀は13日の金融政策決定会合で、民間銀行から受け入れる預金に課すマイナス金利を0.75%に据え置いた。2018年のインフレ率予測は0.9%で維持したが、2019年は0.5%と9月時点の0.8%から下方修正、2020年のインフレ率も1.2%から1.0%に下方修正
【ノルウェー中銀、政策金利を0.75%で据え置き】
- 中銀は、来年3月の利上げを目指すと表明。9月時点の予測に沿った内容となった。中銀は世界経済への懸念が強まる中、将来の利上げが従来の計画に比べてややペース鈍化するとの見通しを示した
12月13日の東京株式市場
相場のポイント
- 13日の日経平均は前日比213円高と2日続伸
- 中国がハイテク産業を育成する「中国製造2025」政策を見直すと報道され、米中貿易摩擦への懸念が後退
- 海外ヘッジファンドの買戻し観測も
主要な株価指標
- 日経平均株価:21,816円 (前日比+213円)
- TOPIX:1,616ポイント(前日比+10)
- NT倍率(日経平均÷TOPIX):13.49倍(前日13.45倍)
- 東証1部売買代金:23,993億円
- 東証1部年初来高値銘柄数9 /年初来安値銘柄数47
- 東証1部値上がり銘柄数1,583 /値下がり銘柄数482
- 東証1部騰落レシオ:92.22(前日87.79)
- TOPIX33業種
上昇上位:鉄鋼、金属製品、海運など
下落上位:水産農林、電気ガス、ゴム製品など
- 日経平均寄与度(日経平均の変動幅に影響した値幅)
上昇寄与度:ファーストリテイ(+51円)、ユニー・ファミマ(+24円)、武田(+9円)など
下落寄与度:ソフトバンク(‐13円)、花王(‐4円)、信越化(‐3円)など
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