メルマガ
マーケットコメント
2018年11月5日 【米国株4日ぶりに反落、米長期金利の上昇とアップルの下落が重荷】
(本日は後半に「米国中間選挙のシナリオと予想されるマーケットの反応」を掲載しています)
11月2日(金)のニューヨーク金融市場
相場のポイント
- 2日の米株式市場で主要3指数は4日ぶりに反落、ニューヨークダウは前日比109ドル安の25,270ドルで終えた。前日に決算を発表した米アップルが6%超下落し、ダウを約99ドル押し下げた。ダウは朝方200ドル超上昇した後、午後に300ドル超下落するなど荒っぽい展開
- 米国の10月雇用統計が強い内容となり米長期金利が上昇し株式市場の重荷になった。クドロー米NEC委員長が中国との合意について慎重な見方を示したことで、前日に買われた中国向け売上高が大きいボーイングが売られた。インテルは下落しフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は下落した。アルファベット、フェイスブックも小幅に安くナスダック総合は1%の反落となった
- 一方、好決算を発表した石油のシェブロンが買われ、長期金利の上昇が好感されたゴールドマン・サックスも高い
- 投資家の不安心理を示す米VIX指数は19.51と2日連続で20を割り込んでいる
- 2日のニューヨーク債券市場で長期債相場は反落(利回りは上昇)、米10年物国債利回りは3.21%で取引を終えた。米雇用統計の発表を受けて米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続が意識された。為替相場は1ドル=113円台で取引され前日比ドル高・円安の反応
米長期金利
- 10年国債利回り:3.21%(前日3.134%)
ニューヨーク為替相場
- ドル円相場:1ドル=113.15‐113.25円(前日112.65‐112.66円)
米主要株価指数
- ニューヨークダウ30種平均:25,270ドル(前日比‐109ドル)
- S&P500種株価指数:2,723ポイント(前日比‐17)
- ナスダック総合株価指数:7,356ポイント(前日比‐77)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,239ポイント(前日1,258ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):19.51(前日19.34)
S&P500種株価指数の主な上昇・下落業種
- 上昇:一般消費材、金融
- 下落:情報技術、不動産、コミュニケーションなど
ニューヨークダウ30種平均への主な上昇寄与度・下落寄与度銘柄
(ダウ平均変動幅への影響)
- 上昇寄与:シェブロン、ゴールドマン・サックス、マクドナルドなど
- 下落寄与:アップル、ボーイング、IBM、インテルなど
国際商品市況
- ニューヨークWTI原油先物
1バレル=63.14ドル(前日比‐0.5ドル)と5日続落し、一時62.63ドルまで下落。11月5日からイランへの経済制裁が再開するが、米政権が日本など8カ国・地域についてはイラン産原油の禁輸措置の適用除外を認める方針を示し、需給緩和観測が強まった
- ニューヨーク金先物
1トロイオンス=1,223ドル(前日比‐5.3ドル)
データを参照したサイト
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
当面の東京株式市場のポイント
- 米労働省が発表した10月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数が前月比25万人増と市場予想(19万人程度の増加)を大きく上回った。注目された平均時給は前年同月比で3.1%上昇と2009年4月以来となる3%台に乗せた。米利上げを後押しする内容で米長期金利は3.2%台に乗せた。為替市場では1ドル=113円台のドル高・円安で推移。米景気拡大を好感したドル高・円安は東京市場のサポート材料となりそうだ
- 今週の東京市場は引き続き戻りを試す展開が予想される。ただし、米国でのイベント次第でボラティリティの高い展開が予想される。11月6日の米中間選挙は結果次第で上下どちらにも相場変動が大きくなりそうだ。長期金利や為替市場への影響も予想され、結果が判明する11月7日の日本株市場は乱高下する可能性がある
- 日経平均は10月25日の一時21,000円割れが当面の安値となった可能性がある。当面の戻りの力が試される。ポイントは(1)米雇用統計を受けたドル円相場がどこまで回復できるか、(2)9月中間決算発表が今週ピークを迎えるなか、2019年3月期企業業績の着地の全体像、(3)米中間選挙の結果を受けたトランプ大統領と共和党の政策への影響など、がカギとなりそう
- 株価が回復する際の上値のメドは200日移動平均線の22,400円や25日移動平均線(22,689円)、10月相場の下げ幅の半値戻し(22,710円)などが意識される。一方、下値のポイントは大台の22,000円や日経平均予想PER12.5倍の21,850円などが割安水準として意識されるだろう。なお、11月2日の日経平均予想EPSは1,748円と今回の中間決算発表の期間中で最高となった
11月2日の東京株式市場
主要株価指数
- 日経平均株価:22,243円 (前日比+556円)
- TOPIX:1,658ポイント(前日比+26)
相場のポイント
- 2日の東京株式市場は大幅反発、日経平均は前日比556円高の22,243円で取引を終えた。上げ幅は1月4日(+741円)以来、今年2番目で10月22日以来の高値水準。米中通商摩擦の緩和期待や上海総合指数が大幅に4日続伸したことで投資家心理が改善した
- 今月末のG20首脳会談における米中首脳会談に対する期待感が相場の買戻しにつながった。中国での売り上げが大きい建機や、化粧品なインバウンド関連が買われたほか、東エレクやアドバンテなど半導体関連にも強い動きが見られた
- ファーストリテイは1銘柄で日経平均92円押し上げたほか、ファナック、ソフトバンクG、東エレク、テルモの寄与度上位5銘柄で237円押し上げるなど裁定買いによる指数主導の上昇だった
- 通信料金引き下げの収益への打撃が懸念され、前日に急落したNTTドコモやKDDI、ソフトバンクGが途中から急反発し市場に安心感が広がった
主要な市場内指標
- NT倍率(日経平均÷TOPIX):13.41倍(前日13.29倍)
- 東証1部売買代金:3兆5,672億円
- 東証1部年初来高値銘柄数11/年初来安値銘柄数53
- 東証1部値上がり銘柄数1,495/値下がり銘柄数561
- 東証1部騰落レシオ:77.85(前日70.97)
- TOPIX33業種
上昇上位:機械、海運、ガラス土石など
下落上位:パルプ紙、電気ガス、水産農林など
- 日経平均寄与度(日経平均の変動幅に影響した値幅)
上昇寄与度:ファーストリテイ(+92円)、ファナック(+43円)、ソフトバンクG(+43円)など
下落寄与度:スズキ(‐5円)、セコム(‐5円)、ソニー(‐3円)など
米中間選挙のシナリオ(確率は市場予想の平均的な数値)と予想される市場の反応
- メインシナリオ:確率6割程度
上院は共和党が過半数を維持する一方、下院は民主党が過半数を奪回し米議会がいわゆる「ねじれ状態」になる
→市場は「予想通りで織り込み済み」の反応となり、アク抜け感が台頭し初期反応はリスクオンの株高・債券安(金利低下)で反応する可能性。その後、ねじれ議会による政策の停滞感が嫌気されリスクオン相場は徐々に収束か
- リスクシナリオA:確率3割程度
共和党が上院、下院両院で過半数を維持する
→追加減税の期待が高まりリスクオンの株高・債券安の反応か。ただし、好景気下の追加減税で米長期金利が上昇することが予想され株価の上値は重くなりそう
- リスクシナリオB:確率1割程度
民主党が上院、下院両院で過半数を奪還する
→米大統領と米議会がねじれることになり、トランプ大統領の政策は完全に行き詰まるリスクがある。弾劾リスクも現実味を増しかねない。リスクオフムードが蔓延し株安・債券高か
- 注意点は、米中間選挙の速報を受けた東京市場の反応がミスリードとなりかねないこと。2年前の2016年11月8日の米大統領選直後は、日本の昼間に伝わった選挙結果(トランプ氏の逆転勝利)を受けて、日本市場ではリスクオフの円高・株価急落の反応で、9日の日経平均は919円(5.3%)安の大幅下落となった。しかし翌日の米国市場でニューヨークダウが256ドル高(1.40%高)となり、10日の日本市場は前日のリスクオフから一転してリスクオンとなり、日経平均は1,092円(6.7%)高の急反騰となった。
(お願い)
海外市場のデータは取得時のものであり、速報値の可能性があります。
閲覧・購読者自身でご確認いただきますようお願いします。
以上
—– アナリスト・トレーニング —–