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マーケットコメント
2018年10月15日 【米S&P500種株価指数は7営業日ぶりに反発】
(本日は後半に「イタリア財政懸念の関連イベントのリスク」について記載しています)
10月12日(金)のニューヨーク金融市場
相場のポイント
- 12日の米株式市場で全体の値動きを示すS&P500種総合株価指数は前日比で約1.5%上昇、7営業日ぶりに反発した
- S&P500業種別で情報技術は3%超上昇し全体をリードした。アップルとマイクロソフトがそれぞれ3%上昇。銀行など金融株指数は小幅に上昇した。金融機関の決算が概ね良好な結果となり、この日の安値からは大幅に値を戻した。業種別で下落したのは不動産のみ1業種
- ニューヨークダウは前日比287ドル高で引けた。ダウは朝方410ドル以上上昇した後、一時マイナス圏に押し戻されたが、終盤に買い直され結局大幅高。本格化する決算発表を前に買戻しの動きが強まった
- ナスダック総合指数は前日比2.2%上昇とS&P500やダウの上昇率を上回った。アマゾン・ドット・コムやアルファベットなど前日まで大きく売られたハイテク大型株が買い戻された
- 投資家心理を示す米VIX指数はNYダウがマイナス圏の際に一時26.8まで上昇したが、大引けは21.3と前日比低下して終了
- 米長期金利は3.16%、ドル円相場は小動きだった
米長期金利
- 10年国債利回り:3.16%(前日3.13%)
ニューヨーク為替相場
- ドル円相場:1ドル=112.15~25円(前日112.12円)
米主要株価指数
- ニューヨークダウ30種平均:25,339ドル(前日比:+287ドル)
- S&P500種株価指数:2,767ポイント(前日比+38)
- ナスダック総合株価指数:7,496ポイント(前日比+167)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,253ポイント(前日1,229ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):21.31(前日24.98)
S&P500種株価指数11業種の主な上昇・下落業種
- 上昇:情報技術、一般消費財、コミュニケーション、ヘルスケアなど
- 下落:不動産のみ1業種
ニューヨークダウ30種平均への主な上昇寄与度・下落寄与度銘柄
(ダウ平均変動幅への影響)
- 上昇寄与:アップル、ビザ、マイクロソフトなど
- 下落寄与:JPモルガン・チェース、シェブロン、トラベラーズ・カンパニーズなど
国際商品市況
- ニューヨークWTI原油先物
1バレル=71.34ドル(前日比+0.3ドル)
- ニューヨーク金先物
1トロイオンス=1,222ドル(前日比‐5.6ドル)
データを参照したサイト
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
金融市場に影響したと思われる材料
- トルコの裁判所は12日、テロ関連の罪で有罪判決を受け拘束されていた米国人牧師のアンドリュー・ブランソン氏を釈放する決定を下した→米・トルコの関係改善に向けた重要な一歩となる可能性があり、金融市場に一定の安心材料となる
- 米大手銀3行、7~9月期は2ケタ増益。JPモルガン・チェースの純利益は前年同期比24%増、シティグループは同12%増。米景気拡大や税制改革を受けて企業の設備投資や個人消費が堅調で貸し出しが拡大した。またコスト削減や法人税率引き下げが収益を押し上げた→ニューヨーク株式市場が先週まで波乱となるなか、決算発表の先陣を切った銀行の好決算は投資家心理の安定に寄与
- 中国の9月の対米貿易黒字が過去最高。12日に中国税関総所が発表した9月の対米貿易黒字は前年同月比21%増の341億ドルとなり、単月としては過去最高となった。8月に続き過去最高。米国からの輸入が減る一方、輸出が追加関税の駆け込み前で増加したため黒字が拡大→金融市場は米中貿易交渉のマイナス材料と見做す可能性がある。しかし、季節的に10月以降は中国から米国向けのクリスマス需要向け製品の出荷が一巡することと、追加関税実施による対米輸出への影響を併せて考えると、今後対米貿易黒字は減少していく可能性も
- 米ミシガン大学が12日に発表した10月の消費者態度指数は99.0と前月比1.1ポイント低下、市場予想(100.0)をやや下回った。「現況指数」は114.4で前月比0.8ポイント低下、「今後の見通し」は89.1で1.4ポイント低下→米国の家計金融資産残高は株式市場に大きく依存しており、米国株の下落は家計の消費マインドを冷やす。10月の株価下落の影響はこれから表面化することが予想される。今後、他の消費マインド指標が悪化する可能性がある
当面の東京株式市場のポイント
- 14日の読売新聞は1面トップで「消費増税 来年10月実施」を掲載、2面でも解説記事を載せている。15日には日本経済新聞が1面と社説で扱っている。読売新聞は、15日に2018年度第1次補正予算案を閣議決定する際に、安倍首相が増税実施の決意表明と具体的な増税対策を支持する、と報じている→消費増税は来年の相場の最大のリスク材料と位置付けられる。特に海外投資家は注目している。過去の消費増税実施(1997年4月、2014年4月)の際、数カ月前から経済の先行きリスクが警戒され、株式市場は下落に転じている。具体的な増税対策の中身が注目される
- 12日のニューヨーク株式市場が反発したことで東京市場にも買戻しの動きが継続すると見られる。週の前半はアップダウンが予想されるが株価は底値を探る展開が予想される
- 日経平均、TOPIXともに9月以降の株価上昇の起点となった9月7日から10月2日に高値を付ける15営業日の上昇分(日経平均で+8.8%、TOPIXで+7%)を、10月11日までのわずか6営業日ですべて失うなど急落となり、投資家心理は大きく冷えた
- 日経平均(12日終値は22,694円)でみると、取引時間中に26週移動平均線(22,432円)と200日移動平均線(22,507円)を一時下回ったが、12日時点では超えて引けている。中長期トレンドを維持するためにはこの2つの長期移動平均線と中期(80日)移動平均線(22,711円)の維持が必須条件
- 日経平均の予想PERは12日に13.0倍まで低下し、アベノミクス相場の下限にまで低下してきた。企業収益から見て割安感が台頭している
- ストキャスティクスが一桁台に低下するなど短期のテクニカル指標も沈静化しつつある。短期的には押し目買いが入る水準にきたと考えられる
- 投資家心理を示す米VIX指数は低下したとはいえ、まだ21台と不安定な状況を示唆する20を超えている。今週はどの水準で落ち着くのかがポイント。仮に同指数が10~15ゾーンに低下すれば投資家心理が大きく変わることを示唆する
- 今週は米国で9月の小売り売上高、9月鉱工業生産指数、同設備稼働率、9月の景気先行指標総合指数等が発表される。市場予想比で強めのデータが出れば米長期金利が波乱要因となる可能性も
- 今週の早い時期に米財務省の「半期為替報告書」の議会提出が予想される。内容次第では中国人民元やドル円相場の変動要因となり、金融市場の波乱要因となる可能性もある
- ムニューシン米財務長官が13日、通貨安誘導を制限する「為替条項」の導入を日本に求める考えを示唆しており、為替市場では神経質な材料となりそう
- 17日の米FOMC議事録(9/25-26日分)の公表も市場の注目材料
- 欧州では15日にイタリアがEUの執行機関である欧州委員会に2019年度の予算案を提出する予定(「最近の話題」を参照*)。財政赤字が拡大する内容になるとみられ、債務削減を求める欧州委員会との対立が深まるリスクがある。イタリアの長期金利は先週一時3.7%と約4年8カ月ぶりに高い水準まで上昇した。今週、一段高となればイタリア国債を大量に保有する欧州銀行株が下落し金融市場に影響を与える可能性がある
10月12日の東京株式市場
主要株価指数
- 日経平均株価:22,694円 (前日比+103円)
- TOPIX:1,702ポイント(前日比+0.5)
相場のポイント
- 12日の東京株式市場は反発、日経平均は前日比103円高で引けた
- 11日の米国株安や株価指数オプションのSQに関連した売りで日経平均は前日比267円安で寄り付いた。その後は値ごろ感からの買いが入り徐々にマイナス幅を縮小。アジア株の上昇や日銀のETF買い入れの思惑などから引けにかけてプラスに転じた
- 日銀はインデックス型ETFを703億円買い入れた。4日連続の買い入れで10月以降5日目
- 東エレクなど半導体関連が大幅上昇、ソフトバンクGや安川電など直近で大幅に売り込まれた銘柄に買いが入った
- 上昇業種は任天堂などのその他製品、機械、通信などが上位
主要な市場内指標
- NT倍率(日経平均÷TOPIX):13.33倍(前日13.27倍)
- 東証1部売買代金:3兆3,416億円
- 東証1部年初来高値銘柄数/年初来安値銘柄数:6/186
- 東証1部値上がり銘柄数/値下がり銘柄数:1,130/926
- 東証1部騰落レシオ:98.40(前日96.35)
- TOPIX33業種
上昇上位:その他製品、機械、通信など
下落上位:保険、陸運、電気ガスなど
- 日経平均寄与度(日経平均の変動幅に影響した値幅)
上昇寄与度:ソフトバンク+49円、東エレク+22円、ファナック+16円など
下落寄与度:ファーストリテイ-44円、ユニ-・ファミマ-16円、アステラス薬-7円など
最近の話題「イタリア財政懸念の関連イベントのリスク」
~イタリアの財政リスクは12月末のイタリア議会での予算採決まで続く可能性のあるイベント~
イタリアの財政懸念が強まるときの予想されるマーケットの反応
- イタリア国債売り(金利上昇)→安全資産としてのドイツ国債の買い(金利低下)と米国債買い(金利低下=米長期金利の上昇を抑える材料となるので注目)
- イタリアの銀行株の下落→ユーロ圏の銀行株の下落→欧州全体の株価下落に波及
- ユーロ売り→ドル買いとリスクを回避するために円に買いが入りやすい
【イタリア財政懸念関連のイベント】
10月15日まで:欧州委員会へイタリアが予算案を提出
同 22日まで:欧州委員会がイタリア予算案に関するイニシャルレビュー発表予定
同 26日まで:格付け会社S&Pがイタリアの格付け評価を発表予定(現在:Baa-安定的)
同 31日まで:格付け会社ムーディーズがイタリアの格付け評価を発表予定(現在:Baa2-ネガティブ
11月30日まで:欧州委員会がイタリア予算案への意見表明
12月31日まで:イタリア議会で予算採決
出所:各種資料より作成
(注意:現時点の予定であり、変更される可能性があります)
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