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2018年10月5日
【米長期金利の上昇でリスクオフムードが広がりNYダウは一時350ドルを超す下落】(10月5日配信)
マーケットコメント
2018年10月5日 【米長期金利の上昇でリスクオフムードが広がりNYダウは一時350ドルを超す下落】
10月4日(木)のニューヨーク金融市場
相場のポイント
- 米長期金利の上昇で株式、商品などリスク資産が売られ、リスクオフのムードが広がった
- 連日まで過去最高値を更新していたこともあり金利上昇が利益確定売りのきっかけに
- 米国債利回りの上昇で米国株式(益利回り=PERの逆数)と比較感で株式の割高感が意識されるとの思惑が広がりPERの高いハイテク銘柄などに売りが広がった
- アルファベット(グーグル)やアマゾン・ドット・コム、アップルなどハイテク銘柄が売られ、ナスダック総合は前日比1.8%下落とS&P500種の下落率を上回る
- 金利上昇が住宅市場の逆風になる懸念で住宅関連のホームデポがダウを引き下げた反面、金利上昇が収益の追い風になるJPモルガン・チェースなど金融株は買われた
- 投資家の心理を示す米VIX指数は前日比大幅高となった
- 為替はリスク回避のドル安・円高で推移
米長期金利
- 10年国債利回り3.187%(前日3.183%)
一時、3.23%と2011年5月以来、7年5カ月ぶりの高水準まで上昇(価格は下落)
ニューヨーク為替相場
- ドル/円相場1ドル=113.90円(前日114.53円) と114円割れ
米主要株価指数
- ニューヨークダウ30種:26,627ドル(前日比:‐200ドル)
- S&P500種株価指数:2,901ポイント(前日比‐23)
- ナスダック総合指数:7,879ポイント(前日比‐145)
- 米フィラデルフィア半導体指数(SOX指数):1,347ポイント(前日1,372ポイント)
- 米VIX指数(恐怖指数):14.22(前日11.61)
S&P500種株価指数の主な上昇・下落業種
- 上昇:金融、公益事業
- 下落:情報技術、一般消費財サービス、コミュニケーションなど
ニューヨークダウ30種平均への主な上昇寄与度・下落寄与度銘柄
(ダウ平均変動幅への影響)
- 上昇寄与:トラベラーズ・カンパニーズ、JPモルガン・チェース、マクドナルドなど
- 下落寄与:ホームデポ、アップル、ユナイテッドヘルス・グループなど
国際商品市況
- ニューヨークWTI原油先物
1バレル=74.33ドル(前日比‐2.08ドル)、米株安で投資家心理が冷え、同じリスク資産としての原油も下落、前日に4年ぶりの高値まで買われており利益確定売りが出やすかった
- ニューヨーク金先物
1トロイオンス=1201ドル(前日比‐1.3ドル)
データを参照したサイト
https://nikkei225jp.com/nasdaq/
金融市場に影響したと思われる材料
- 米長期金利が上昇、米10年国債利回りは一時3.2%台、米30年国債利回りは一時3.39%台まで上昇し、2014年9月以来の高値水準→住宅ローン金利などに影響する懸念が浮上
- 米8月の製造業新規受注額は前月比2.3%増、2カ月ぶりの増加で市場予想の中心(+2.2%)をやや上回った。設備投資の先行指数といわれる「航空機を除く非国防材」の受注額は同0.9%減と5カ月ぶりの減少
- 米ブルームバーグによると、アップルやアマゾン・ドット・コムなど約30の米企業が、中国製の特殊な半導体が組み込まれたサーバーを経由して情報流出の脅威にさらされていた可能性があると報じた。部品供給網の穴をつき中国政府が米向けハード機器に「スパイ」を埋め込んだ形で、事実であれば米中摩擦に拍車をかけかねない→ハイテク悪材料と意識された
- ペンス米副大統領が11月中旬に来日。北朝鮮や貿易問題を協議する模様で、麻生副総理・財務大臣と「日米経済対話」を開く。対中国へのけん制も
当面の東京株式市場のポイント
- 米長期金利が3.2%台まで上昇してきたことでさすがに世界の金融市場には警戒感が広がっている。週末の米雇用統計への警戒感もあるが、今回の米長期金利の上昇が継続するのか、一時的なのか、米国株式市場や新興国市場への影響など一旦立ち止まって点検する時かもしれない
- 日米の長期金利の上昇でこれまでの物色に変化が出る可能性がある。金利上昇で買われやすい銘柄は、金利高で業績がメリットを受ける金融株や、これまで割安に評価されてきたバリュー銘柄、さらに金利高を株価が好感しやすい金利感応度が高い銘柄など
- 逆に警戒されやすいのは株価収益率(PER)が割高に評価されている銘柄で、主に成長性の高いハイテク関連やSNS、インターネット関連が多い。REITや配当利回りが高い銘柄も金利上昇で相対的な投資魅力が低下するため、ポジションを落とす対象となる
- JPX日本取引所グループが発表した投資部門別売買で9月第4週に海外投資家は現物で3,770億円の買い越しとなった。2週連続の買い越しで1月第1週(4,851億円)以来の買い越しの大きさ
参照したサイト(JPXグループ)
- 日経平均は24,000円の大台を割り込んだ。次の安値水準のポイントは23,500円程度。9月19日に空けた窓(23,481~23,670円)埋めが目安。日経平均25日移動平均値は23,282円(4日)にあり、市場が注目する水準
10月4日の東京株式市場
主要株価指数
- 日経平均株価:23,975円 (前日比‐135円)
- TOPIX:1,801ポイント(前日比‐1.5)
相場のポイント
- 東京市場では日経平均が続落し前日比135円安の23,975円で終えた
- 9月27日以来、1週間ぶりで24,000円の大台を下回って引けた
- 日米の長期金利が上昇し債券と比べた株式の割高感が意識された模様。3日の米長期金利が7年3ヵ月ぶりの高水準となり、4日の日本の長期金利も一時0.155%と2年8カ月ぶりの高水準となった
- 金利上昇が追い風となる金融株が買われたことで、本日は銀行と保険がTOPIX業種別値上がりの上位となった。原油先物価格の上昇を受け石油石炭など資源関連も買われた
- 反面、医薬品、化学、食品など内需・ディフェンシブが安く、化粧品などインバウンド関連の下落が目立った
主な市場内指標
- NT倍率(日経平均÷TOPIX):13.31倍(前日13.37倍)
- 東証1部売買代金:3兆1,077億円
- 東証1部年初来高値銘柄数/年初来安値銘柄数:42/48
- 東証1部値上がり銘柄数/値下がり銘柄数:1236/800
- 東証1部騰落レシオ(前日):111.68(前日109.93)
- TOPIX33業種
上昇上位:銀行、石油石炭、保険など21
下落上位:医薬品、化学、その他製品など12
- 日経平均寄与度(日経平均の変動幅に影響した値幅)
上昇寄与度:ソフトバンクG+16円、ダイキン+3円、日立建+2円など
下落寄与度: ファーストリテイ-20円、資生堂-15円、中外薬-14円など
市場で話題になっているテーマの解説
- なぜ米国の長期金利が上昇したのか
- (1) パウエル米FRB議長の講演。パウエル議長は2日の講演で現在の米経済が拡大する状況は「かなり長期間にわたり続く可能性がある」と発言。低水準の失業率に伴う物価の上昇に備え「段階的な利上げの継続が必要」と述べた。さらに今後の金融政策について「我々は中立金利を超える可能性があるが、恐らくまだ中立金利には程遠い」と継続的な利上げを示唆した
- (2) 強い米経済指標。3日に発表された米9月のISM非製造業景況指数と、民間版雇用統計といわれるADP雇用統計が市場予想を大幅に上回った
- (3) イタリアの財政赤字懸念の後退
- (4) 本邦投資家の米国債投資が鈍化する可能性。3日のドル円のヘッジコスト(3ヵ月物)は3.08%程度。仮に米国債をヘッジ付き外債として投資した場合、ネット利回りは1%を割り込むなど投資魅力が低下した。今後、ヘッジ付き外債投資は減少する可能性が強い。一方でヘッジ無し外債(オープン外債)投資の比率は高まると予想される
- 米長期金利上昇で米国経済の腰折れリスクは
- (1) 米国の名目経済成長率(実質成長率+インフレ率)と米長期金利の関係が重要。
- (2) 1980年代以降、米名目成長率が米長期金利を上回っている時は経済の腰折れリスクは台頭せず、米株式市場も堅調に推移している。
- (3) 名目成長率は企業に例えれば、米国の資産に投資した時の収益率であり、長期金利は「投資資金の調達コスト」を表す。この差分が「米国での投資から得られる利ザヤ」である。この投資利ザヤがマイナスとなれば企業の設備投資や家計の住宅投資が変調をきたす。これを織り込むため株価が下落し景気の先行き懸念のサインを発信するわけだ。
- (4) 現状は3.1%程度の米長期金利で調達した資金を米国経済に投じれば4%の収益率が得られる。利ザヤは1%近くある。ちなみに実際の4~6月期の米経済成長率は実質で前期比年率4.2%だった。インフレを加味すれば名目ベースでは6%を超す成長率。7-9月期も実質4%前後を維持すると予想する専門家が多い。ニューヨーク株式が底堅さを維持する最大の理由と考えられる。
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