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imasara証券・金融用語

いまさら聞けない証券・金融用語
ネットの受け売りじゃ本当の意味は解らない
今日も今更くんは、やさしい先輩に真っ向質問です!

2018年12月25日
『FAANG』

今更くんの肩越しから先輩が覗き込むと今更くんが映画のチケットを見ている。

(先輩)

今更くん、映画見に行くの?

(今更くん)

びっくりした!あ、はい、「ハリーポッター」の次シリーズの『ファンタスティック・ビースト』の2作目です。
子どもの頃から見ていた「ハリーポッター」の新シリーズなので嬉しくて。

(先輩)

ぼくも好きだったから、あの世界がまた見られると思うと嬉しいね。
(少しかしこまって)
ところで、ここで問題です。
「ハリーポッター」シリーズで唯一登場する実在の動物は何でしょう?

(今更くん)

え、実在する動物ですか?えっと、あ、分かりましたよ先輩!
半巨人のハグリットの飼い犬「ファング」ですね?!

(先輩)

正解!では、第二問!
米国市場の「ファング」と言えば何でしょう?

(今更くん)

えー、米国市場のファングですか?分かりません!

(先輩)

ちょっと、もう少し考えようよ(苦笑)
米国市場の「ファング」は「FANG」といって米国市場を牽引する銘柄の頭文字を並べたものだよ。
主にIT系の企業だけど、さて、
第三問!その企業を全て答えなさい!

(今更くん)

うーん、IT系で「FANG」ですか…「F」は、「Facebook」!

(先輩)

正解!じゃ、「A」は?

(今更くん)

「Amazon」!そして、その流れでいうと「G」は「Google」ですか?

(先輩)

大正解!(笑)

(今更くん)

でも、「N」は何だろ?「ナイキ」じゃないですよね?

(先輩)

「N」は「Netflix」だね。

(今更くん)

あ、ネットで映画配信をしている会社ですね。

(先輩)

そうだね、中国などの一部の国や地域を除いて世界中に展開しているオンライン動画の配信会社だね。
それらの企業を「FANG」としているけど、これに「アップル社」を加えて「FAANG」と呼ぶこともあるよ。

(今更くん)

確かに有名な会社ばかりですけど特にピックアップされている理由は何んですか?

(先輩)

いずれも、大規模なネットサービスを行っている事だね。
ビッグデータを取り込む事が得意だし、独自のデータから新たなビジネスモデルの提案やビジネス化を進める事ができるので影響力は半端ないからね。

(今更くん)

でも、「アップル」はネットサービスのイメージが薄いですね。

(先輩)

いやいや、iPhoneのユーザー数は全世界で9億人以上(2018年11月現在)いるんだぜ、そして全員が無料のクラウド5GBを付与されていて、その10%が有料サービスを申し込んだとしても9,000万人がアップルのクラウド(iCloud)の有料ユーザーとなるんだ。

(今更くん)

なるほど、桁違いですね!
うーん、「FAANG」畏るべしですね、でも何か足らないような…「マイクロソフト」や「Intel」なんかは、何故、入らないのですか?

(先輩)

良いところに気がついたね、「マイクロソフト社」は、「MANT」という括りで呼ばれている。

(今更くん)

マント?透明マント…じゃ、いえ、なんでもありません(汗)

(先輩)

ぼくも「透明マント」と「忍びの地図」は欲しいよ(笑)
残念ながらそのマントじゃなくて、「Microsoft」「Apple」「Nvidia」「Tesra」の頭文字で「MANT」。

(今更くん)

ちょっと「FAANG」とは業態が違いますね、どちらかと言うとITというより製造業ですね。
でも、こちらにも「アップル」が入っていますね。

(先輩)

そうだね、iPhoneを品切れさせないために新機種の世界在庫を1億台以上、準備すると云っていた時期もあったよ。

(今更くん)

ちょっと待ってください、日本の人口くらいの在庫って…1台1,000ドルとして一千億ドル!

(先輩)

うん、世界中にある部品調達の相手先と組立などの下請け企業を考えると超巨大な製造ツリーになるね。

(今更くん)

ところで、「Tesra」は電気自動車として有名ですけど、「Nvidia」はどんな企業ですか?

(先輩)

「Nvidia社」はパソコン等に搭載されるGPUとばれる画像処理専門のチップのトップメーカーだね。
GPUは、主にパソコンのグラフィックボードに載っている主要チップで、動画の描画速度や反応の早さが重要なゲームマシンなどで多く使われている。最近では、仮想通貨の発掘作業にも使われていた。

(今更くん)

「描画速度」?「発掘」?…GPUってパソコンのCPUみたいなものですか?

(先輩)

ぼくも、あまり詳しく無いけど、パソコン等に搭載されているCPUは、日本語でいうと「中央演算装置」と呼ばれ、例えば、キーボードのキーを1つ押すだけでも様々な計算=演算をCPUが行っている。
でも、パソコンが登場した頃のCPUの性能は今ほど高性能ではなくて、パソコンの基本的な動作の演算処理はCPUがやるけど、スピーカーから音を出すとか、モニタ画面に表示するとかは「拡張ボード」と呼ばれる別付けの基盤というか、その基板上のチップが主な処理を行っていたんだ。

(今更くん)

そのチップがGPU何ですね?でも、ぼくのパソコンはそういうの付いていませんけど?

(先輩)

うん、パソコンの歴史はマザーボードと呼ばれるCPUや様々なコントロールチップが載ったメイン基板の歴史とも云えて、時代を追うごとに音声や描画の機能をマザーボードに取り込み集約する事によって、パソコンの価格を大幅に下げることができたんだ。
一般事務として使うパソコンには、必要最低限の機能が揃っているから拡張ボードは必要がないからね。

(今更くん)

つまり、ゲームをする人とか動画を扱う人とかが基本性能では足りなくてGPUが載った拡張ボードをパソコンに追加するんですね?

(先輩)

そうだね、動画などのコンテンツが充実することによりパソコンの描画性能への要求が厳しくなり、様々なメーカーがしのぎを削るようにグラフィックチップの開発を行った。
ぼくらが「Youtube」や「Netflix」などの動画を高画質で淀みなく見る事ができるのは、急速に発展したグラフィック技術の発展のおかげだね。
特に2000年頃、複雑で沢山の並列的な処理をしなくてはいけないグラフィック処理の基準をクリアできる製品が「Nvidia社」によって生まれ、それを「GPU」と呼んだんだ。

(今更くん)

そうか、「Nvidia社」が特に「MANT」として特別に括られる理由もわかりますね。

(先輩)

でも、GPUの販売トップシェアは実は「Intel社」で「Nvidia社」じゃないんだよ。

(今更くん)

「Intel社」って、あの「Intel入ってる」のIntelですか?

(先輩)

そう、グラフィック機能を内蔵している現在のCPUの分をGPUとしてカウントすると7割が「Intel社」製となり、別付けの拡張カードを製造しているメーカーと言う意味では、「Nvidia社」がトップだね。
他にもCPUメーカーである「AMD社」が「Nvidia社」を追随するかたちだね。
そう言えば、昨年(2017年)王者「Intel社」が販売台数で「AMD社」に追い抜かれたな(遠い目)

(今更くん)

また、黄昏れて(笑)
先輩、あまり詳しく無いとかいってましたけど、パソコンの事、メチャメチャ詳しいじゃ無いですか?
もしかして、パソコンオタクだったんじゃないですか?

(先輩)

な、何言ってるの!そんなの常識でしょ(汗)

(今更くん)

そうですか?なんか詳しすぎる気もしますけど(笑)

(先輩)

と、とにかく「FANG」は米国市場でも特別な企業で、米国経済を牽引していることは間違いが無い。
でも、確かに「FANG」は他の企業に比べ大きな成長を遂げているけど、「FANG」の中でもかなりの温度差もあるし、そもそも「FANG」の構成企業が、どこまで同じ括りの中でいられるかは分からない。

(今更くん)

FacebookやAmazonが廃れるというのは、想像できませんけど…

(先輩)

何言ってるの!?1970年代にGEやGMが僅か30年の間に今の状況になるなんて誰も考えもしなかったろ?パソコンが各家庭にあるというのもそうだし、そのパソコンもタブレットやスマホに置き換えられ、名刺交換よりもLINEアカウントの交換をしなかった方が悔いが残るなんていう人もいる。
大事なのは、「FANG=成長、安全」みたいなステレオタイプにならず、一つ一つ検証し、変動する理由をキチンと明確にして置く必要があると思うんだ。

(今更くん)

なるほど、少し前まではスマホで買い物したり海外出張の人間を含め週末の飲み会の出欠とるなんて考えもしなかったですね…
ああ!

(先輩)

ど、どうしたの?

(今更くん)

『ファンタスティック・ビースト』が、あと5分後に始まる時間です(涙)

(先輩)

今更くん、なんでボールペンを振ってるの?

(今更くん)

「姿くらまし」の呪文で一瞬で映画館まで移動できないかなって…。

(先輩)

あのさ、諦めてないで早く映画館へ行った方がいいよ(笑)

(今更くん)

先輩!お先に失礼しまぁーす!

(先輩)

間に合うかな…あれ、チケット忘れてる…って、これ明日じゃん(大笑)
おーい、今更くーん!

 


<ちょっと解説>

株価下落と「FAANG」の功罪
最近(2018年12月現在)の『FAANG』の下落が顕著になっている。
一時「アップル」や「アマゾン」も時価総額で1兆ドルの大台にのせていたが12月21日時点で「アップル」は7,152億ドル、「アマゾン」は6,735億ドルに大きく減少した。
このところの他を振り切るような上昇の理由は、世界の投資家(投資信託や年金資金、ヘッジファンドなど)が「FAANG」銘柄を一定以上保有しないと運用成績が株価指数(S&P500種やナスダック総合)に負けてしまう(アップルが採用されるNYダウも同様)ためで、株価指数が上昇すればするほど「FAANG」銘柄に買いが入り、更にナスダックやS&P500種株価の上昇が加速という構図だった。
ところが、一転して下げに転じると今度は損失が雪だるま式に増えていくので、我先にと売らざるを得なくなり、下落するスピードも加速してしまった。

利益を上げ続ける「FAANG」
ただし、2000年頃のITバブル崩壊時の状況とは少し異なる。
当時は利益が大して出ていないのに株価だけが上がり、多くの銘柄の株価収益率PERが100倍以上だったのに比べ、現在のIT銘柄は凄まじい利益を上げている。
例としてPERはアップルの12倍、フェイスブックの22倍、グーグルの53倍と落ち着いている。
(ただしアマゾン(217倍)やネットフリックス(191倍)は成長期待が強いので高い)

ここ数年の下落の背景には、前記の理由や買われ過ぎではないか、という心理的の反映もあるが、一方で、極端な動きをみせる市場動向に対し冷静に対応し、ヒステリックな反動をせず「FAANG」そのものへの「神格化」しない判断も必要となるだろう。

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