相場格言
相場格言シリーズ1
「もうはまだなり、まだはもうなり」
過去の相場の天井や大底に対処する際に重視するように大先輩から教わった相場格言です。兜町では最も有名な相場格言の一つです。
株式相場がまだまだ上がると多くの投資家が思った時は、後から振り返ってみればその辺りが株価の一つの山場だったということがあります。逆にもう天井だと思った時はまだまだ高くなったりします。
<自身の状態から相場全体を判断する心理>
典型例が2018年の10月に日経平均が27年ぶりに高値を付けた時です。日経平均は2018年1月に高値を付けた後に米長期金利の上昇で3月にかけて相場は急落しました。しかし、その後、米長期金利が安定に向かうとニューヨーク株式市場が再び高値を更新する勢いとなり、日経平均も9カ月ぶりに1月の高値を上回り、27年ぶりの高値を更新しました。この時には9ヵ月間のもみ合い相場を抜けてきたために、多くの投資家はまだまだ上がるシナリオを想定し、追撃の買いポジションを増やし相場心理は一気に強気に傾きました。しかし、この直後に株式相場は急落しました。多くの投資家が「まだ上がる」だろう、と考えたところが「もう、天井だった」わけです。
一般的に自分のポジションが順境の時(利益が乗っている時)は強気心理が働きやすく「まだまだ」という思いがつのります。例えば上げ相場の時に買いポジションで利益が乗っている時はまだまだ上がると考えやすいし、下げ相場の時に空売りで利益が乗っている時はまだまだ下がると考えるのが投資家の心理です。
逆に自分のポジションが逆境の時(損失が生じている時)はもう天井だとか、もう下げ止まると思いがちです。たとえば空売りしたが相場は逆に上昇し損失が生じている時はもうそろそろ天井だろうと考え、下げ相場で買いポジションが損失を抱えている時はもうそろそろ下げ止まると思いがちです。
<天井を示すのは株価ではなく売買代金>
多くの投資家がそろそろ天井だと考えている時に、少しずつ売りを出している時には売買代金は増えることはありません。むしろ、先ほどの例のように節目を超えてきたときに皆が強気になり一斉に買いを入れると売買代金は大きく膨らみます。従って天井を示す現象として一番注目されるのは株価ではなく、売買代金(売買高)と言われます。
<下げ止まりはまだ先?>
2018年の12月時点で株式相場は1月以降の変動範囲(20,000円台~24,000円台)のなかの下位の水準で低迷しています。特に東証一部の全体の時価総額の推移を示すTOPIXは年間の安値を更新しています。株価収益率(PER)もアベノミクス相場の期間の最低水準となっており、利益と比較した株価はかなり割安圏に入っています。確かに多くの悪材料が揃っており、株価に織り込まれていることも事実です。従ってもう下げ止まるだろうと考える投資家は多いと思います。しかし、多くの投資家がそう考えている間はなかなか回復できないことが多いことも過去の相場格言は示しています。