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マーケット見通とポイント

2025年7月31日
AIによる業務効率化を理由に人員を削減する動きが相次ぐ

株式相場の関心事は米トランプ政権の関税政策と地政学的リスクから、米FRBの金融政策や米国企業の業績動向に移りつつある。トランプ大統領が実施した相互関税の影響が8月頃から米国の実体経済に本格的に表れてくる。経済状況の悪化や将来への不安などで消費の節約志向が強まり、個人消費が経済を支える力が弱まりつつある。家電や家具など波及効果が大きい住宅市場も冷え込んでおり、住宅着工の先行指標となる建築許可件数は5年ぶりの低水準に落ち込んでいる。労働市場の減速感も強まっており、株式市場では年後半の連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが2回程度実施されるシナリオを織り込み始めている。

6月17〜18日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では全会一致で政策が据え置かれた。FF金利誘導目標は4.25〜4.5%(中央値4.375%)で据え置きとなったのは4会合連続である。声明文では「経済見通しの不確実性は軽減したものの、依然として高い水準にある」と指摘しており、引き続き関税の影響が見通せない様子が感じられる。FOMCメンバーのFF金利見通し(中央値)は、25年は2回の利下げ(計0.5%幅)、26年は1回利下げ(0.25%幅)となった。また、経済・金利見通し(SEP)では、実質GDPは25年末が1.4%(前回3月のFOMCでの見通しは1.7%)、26年末は1.6%(同1.8%)に下方修正された。つまりFRBは景気減速を見込むが景気悪化は見込んでいないことになる。失業率は25年末が4.5%(前回3月見通し4.4%)、26年末は4.5%(同4.3%)へ、一段と悪化する方向へ修正された。コアインフレは25年末が3.1%(前回3月見通し2.8%)、26年末は2.4%(同2.2%)へ上方修正された。ただし、27年には2.1%に落ち着くと想定している。パウエルFRB議長は記者会見で、関税の影響が表出するにはタイムラグがあり、それは「夏ごろ」と判断していることから、夏の経済指標を確認してから次の政策変更へ動くとみるのは順当だろう。FRBメンバーは年内2回の利下げを想定していることから、過半のメンバーは、企業努力などでインフレ圧力は抑制されると想定している可能性がある。7月利下げの可能性はほぼなくなり、9月からの利下げ再開、12月も利下げの可能性が高いだろう。

防衛関連の中で出遅れている三菱電やFAのキーエンスに注目。

 

金融政策に関連して注目しておきたいポイントは、大手小売企業の業績、大型テック企業の人員削減計画、FRB議長の後任人事、の3点である。25年4月のトランプ政権による関税政策は米国企業のコスト構造に大きな圧力をかけている。とくに価格転嫁力が弱く、輸入依存度が高い業種では関税コストを吸収せざるを得ず、利益率の悪化から雇用削減に陥る可能性が高まっている。小売最大手のウォルマートやディスカウントストアのターゲットの営業利益率は3〜5%台と低く、関税によるコスト上昇分を吸収すると業績に悪影響が生じるだろう。ウォルマートは25年5月に約1500人の人員削減を実施した。テクノロジー部門の簡素化や業務効率化が目的で、AI導入によるバックオフィスの合理化が進行しつつある。6月の雇用統計まで直近6カ月間を平均した米国の非農業部門雇用者数の前月比増加数は16.5万人だが、ウォルマートは210万人、ターゲットは約44万人の従業員を抱えている。

生成AIのビジネスへの本格的な普及で、大手テック企業はAIによる業務効率化を理由に数万人規模の人員削減を進めようとしている。アマゾン・ドット・コムのアンディ・ジャシーCEOは6月17日、「人工知能(AI)による効率化で、今後数年間で管理部門の従業員数が減少する」との見通しを示した。ちなみにアマゾンはeコマースや物流を中心に156万人の従業員を抱え、このうち35万人が管理部門で働いている。米巨大テクノロジー企業のトップがAI活用によって自社の雇用が減ると明言したのは初めてだ。実際、マイクロソフトも5月に約6000人強の従業員を削減し、さらに数千人の人員削減を計画している。米メタも従業員の約5%を削減するとの計画を表明したが、AIによる業務効率化とは明言していない。さらに、日本でも米系のアフラック生命保険がAIを使って日本のコールセンターの人員を半減、500億円のコスト削減効果を見込むとした報道が出た。いよいよAIが人に置き換わる動きが実際に加速するかもしれない。

6月26日、米紙ウォールストリートジャーナルは、トランプ大統領がパウエルFRB議長の後任について、早期の選定・指名発表を検討していると報じた。9月ないし10月までか、それよりも早い今夏に前倒しになる可能性があるとしている。6月下旬、FRBのウォラー理事とボウマンFRB副議長が7月利下げを支持する発言をした。2人ともトランプ大統領が指名した理事であり、次期FRB議長の有力候補とされる。米10年国債利回りが6月27日に4.28%と5月21日の4.6%から急低下し、米国株を新高値に押し上げる原動力となっている。外国人投資家が重視するドルベースの日経平均はナスダック総合指数と再び連動性を取り戻し始めている。日経平均は4万円台を値固めしたあと、秋口以降に最高値更新を目指しそうだ。

人気が長期化しそうな防衛関連銘柄のなかで、三菱電機は独自の高周波デバイスと情報処理技術を強みとしてレーダーや迎撃システム、電子戦システムなどネットワーク化が進む次世代装備品の中核技術を手掛けている。年初来の株価騰落率をみると、三菱重工など重工3社の株価は50〜70%近く上昇しているが、同社株は16%の上昇と出遅れ感がある(6月末時点)。キーエンスはFA用センサーをはじめとする各種センサー、画像処理、制御・計測機器などの開発、製造、販売を手掛ける。今26年3月期通期の業績計画は非開示だが、会社側は米通商政策など不透明な状況下でも製造業の合理化や自動化のほか、品質向上、研究開発の強化は不可欠との見方を示している。新商品の開発や直販営業力の強化などに注力するとしており、増収増益が期待できよう。富士フイルムHDは写真フイルムで培った化学、画像処理などの技術を生かして事務機械などに多角化展開。育成中のヘルスケア(前25年3月期の営業利益構成比は23%)の構成比が高まることでバリュエーションの切り上げが期待される。

(7月20日記)

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