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マーケット見通とポイント

2020年11月3日
見えてきたコロナとの付き合い方

新型コロナウイルスの累計感染者数は世界で3,300万人を超え、累計の死者数は100万人の大台を突破した(9月末時点)。誰にも予想できなかったパンデミックという異常な事態だが、発見から10ヵ月を経過して前進した点がある。

最大の収穫はコロナとの付き合い方が分かってきたことである。例えば、①コロナ禍で色々な考え方や行動をする人がいる。②いつまでもロックダウンをしているわけにはいかない。つまり経済を回しながらウイルスと共存するしかない。③労働者(生活者)はウイルスとの「付き合い方」が分かってきた。例えば他人との距離の取り方やマスクをする時と外して良い時、ウイルスは怖いがどのように行動すれば良いか、などだ。

さらに新型コロナウイルスの国内外の論文や治験に詳しい専門家によると、既存の薬をうまく使えば治療が可能で、直せる病気になってきたという。例えば、新型コロナ感染症の重症者がステロイド薬で治療できることがわかってきた。国内の感染「第2波」は感染者数が増えたが、死者数は抑制されてきた。ここからのポイントはワクチンの普及になるが、感染を抑制しながら各国が経済活動を再開して、世界経済は間違いなく回復に向かっている。

金融政策的な支援の規模が大きい国の経済は、回復も早いということが分ってきた。米国では主要都市で厳しいロックダウンがあったが、それは大手IT企業やSNS関連企業など在宅勤務が可能な知識集約型産業が多い地域だった。また、与党・共和党の支持者が多い州は「自由」を重視し、早めに経済活動を再開した。トランプ政権は失業給付の上乗せ、企業の給与・光熱費支払いの肩代わりといった支援に3兆ドル近い経済対策を決定した。この結果、米議会予算局の試算では20年の連邦政府の財政赤字はGDP比▲16%と空前の規模に達する見通しだ。別の言い方をすれば、家計や企業に米国が1年間に生み出した付加価値合計の16%の資金をネットで渡しているわけだ。一方、欧州各国でも家計及び企業向けに巨額の財政支援を実施したが、GDPに占める財政収支(20年見込み)は、ドイツは▲7.1%、フランスは▲10.4%と米国よりも小さい。国全体で厳格なロックダウンを続けたため、ユーロ圏の物価はデフレに転じている。

米国が前例のない巨額の財政支出ができる背景には「財務省の国債発行→FRBによる市場からの国債購入(市場への資金供給)」の構図ができ上がっていることがある。いわば財務省とFRBが事実上一体化しているわけだ。域内の金融政策は欧州中銀(ECB)が担うが、財政機関は国ごとに存在するユーロ圏にはできないスキームだ。米国はコロナショックで経済の落ち込みは先進国のなかで最も厳しかったが、回復は主要先進国で最も早いと予想されている。米経済はすでに世界金融危機と同じパターンの「救済ステージ」に入っている。従って、ここで救いの手を緩めるわけにはいかない。手を緩めて失業や倒産が再び増えれば、金融危機・深刻な不況に逆戻りし、政府や金融当局の責任が問われることになる。恐らくワクチンが普及し、労働市場が回復し、人々の暮らしが安定するまで救済は続くだろう。世界の多くの投資家は現時点で米国の資産(株式やドル、社債など)が最も投資魅力が高いと感じている。

 

 

コロナ収束後はインフレへ。アップル関連や防災関連に注目。

 

 歴史を振り返れば、パンデミックは必ず収束する。そして、感染の収束後は大規模な集客を伴う国際的なイベントが開催されている。1957年のアジア風邪(世界で推計200万人の死者数)収束後は1958年にブリュッセル万国博覧会、1960年にはローマ夏季オリンピックが開催された。1968年の香港風邪(死者数100万人以上)の収束後は1969年パリ国際園芸博覧会、1970年日本万国博覧会が開催された。

2009年の新型インフルエンザ収束後は2010年上海万国博覧会が開催された。さらに、近代史で最も深刻なパンデミックと言われた約100年前の1918〜1919年のスペイン風邪(世界の人口約20億人のうち感染者約5億人、死者数2,000〜4,000万人)収束後の世界経済はどうなったか。1920年代の米国は第1次世界大戦後の好景気で「狂騒の20年代」と言われ、1929年の世界大恐慌の前まで空前の好景気を謳歌した。菅総理は9月25日の国連総会の演説で、来年夏の東京五輪・パラリンピックに関して「人類が疫病に打ち勝った証し」として開催する決意を表明した。開催されるか否かは海外の感染状況が大きなカギを握るだろう。

コロナが収束した後の問題はこの巨額の政府の借金がどうなるかだ。借金を返すには①増税か、②インフレか、③経済成長しか方法がない。③は分子(借金)を少しずつ減らし、分母(GDP)を大きくして財政赤字のGDP比率を小さくするものだが、あまりに赤字規模が大きく容易でない。増税だとデフレ・不況になり、借金返済がますます不可能になる。結局インフレで返済されるしか方法はないのではないか。インフレで経済を回しながらでしか、この借金は返済できない。インフレは実質ベースで貯蓄と投資リターンの価値を逓減させるため投資家にとっては隠れた脅威となる。投資家は長期的な購買力の上昇を目指しているが、インフレによってこの目標達成が困難になるが、株式はインフレに強いので注目されるほか、REITもインフレに強い資産と言われる。

多くの日本人はインフレを経験していない。インフレになったら? という問いには80歳以上の高齢者でない限りピンとこないだろう。今回のパンデミックによる世界の累計死者数は1968年の香港風邪と並び、52年ぶりだ。原油価格の急騰をきっかけとするインフレでトイレットペーパーの買い占め騒動が起きたのは第1次オイルショック(1973年)後なので、香港風邪の5年後だ。パンデミックと同様、予想もしないことが起こる時代だ。世界経済は当面はディスインフレ傾向でも、3〜5年後にインフレにならないと断言できない。

有望なテーマを持つハイテク関連から、アップルの新型スマホ登場に向けて注目度が高い村田製作所、ソニー。有機EL・スマホ向け偏光フィルムが注目される日東電工。シリコンウエハ事業が堅調なうえ、米住宅市場の活況で北米での塩ビ事業の改善期待から信越化学。テレワークやGIGAスクール関連需要を取り込むネットワン。ICパッケージが好調なイビデンなどに注目。

内需系からは、災害防止の観点で公共工事向け抗圧入機を手掛ける技研製作所は昨年、一昨年ともに秋高の習性がある。巣ごもりで馬券のネット購入システム「SPAT4」が人気の東京都競馬などに注目したい。

(9月19日記)

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