アナリスト・トレーニング

お気軽にお問い合わせください!

TEL 03-3518-9611

受付:土日祝祭日以外の9:00~18:00まで

会員ニックネーム:ゲスト  状態:ログアウト
会員種別:不明  ログインする
会員ID:ゲスト  状態:ログアウト 
会員種別:不明  ログインする 

マーケット見通とポイント

HOMEドキュメント >マーケット見通とポイント >トランプ関税政策の第1次政権時と今回の株式市場の共通点

マーケット見通とポイント

2025年6月29日
トランプ関税政策の第1次政権時と今回の株式市場の共通点

米トランプ政権が打ち出した関税政策は市場の想定を超え、不確実性の急上昇を引き起こした。米株式市場では、景気後退懸念が浮上、それまでの市場のけん引役だった大型ハイテク株主導の株価下落でナスダック総合は24年12月に付けた史上最高値から24.3%下落、NYダウも24年12月の高値から16.4%も下落した。その後は、米政権が90日間の一部関税適用の猶予を発表したことや、通商交渉が進展したこともあり、株式市場は大きく反発している。ただ、米国製造業復権のための関税政策は、経済成長のコストとなり、当面の米経済は減速する可能性が高まっている。さらに関税は米国の消費者への増税という結果になる可能性も高い。関税政策によるインフレへの影響は一時的なものにとどまり、金融政策は緩和の方向が強まりそうだ。ただ、安全保障が絡む米中関係は容易には改善するとみるのは難しく、「トランプ2.0」による投資環境は「経済減速・金融緩和・経済分断」がキーワードになるとみられる。

ところで、トランプ第1次政権時に関税政策を打ち出した2018年と25年の日米の株式市場を振り返ると、タイミングは異なるが、いずれも直近の高値から20%前後の大きな株価下落に見舞われている。グラフは18〜19年と25年1〜5月の日米株式両市場を比較したもの。起点を100として指数化している。18年は10月に日米株式が高値を付けたあと、12月後半にかけての2カ月半ほどで20%前後も下落した。当時米国は引き締め局面にあった。米FF金利は15年12月から利上げ(0.25%)が開始され、2回目は1年後の16年12月に0.25%、17年は0.25%ずつ3月、6月、12月と3回の利上げ、18年は3月、6月、9月、12月と4回利上げされ、FF金利は2.25%まで引き上げられた。ISM製造業景況感指数は18年7月から11月まで5カ月連続で好不況の分岐点である50を割り込み、不況感が強まっていた。

このタイミングで米中貿易戦争である。米国の対中関税第1弾の発動は18年7月6日で、その後、中国による報復関税の応酬もあり、米国の対中関税は9月の第4弾まで徐々にエスカレートした。ちなみに18年11月6日の米中間選挙で共和党は上院の多数は維持したが、下院では野党民主党に惨敗した。その後の展開をみると、日本と米国の株式市場は18年12月の安値を底に翌年19年末にかけて大きく回復している。今回のケースはトランプ大統領就任後の1月の高値から4月前半にかけての2カ月半〜3カ月で日米の株式市場は20%前後の下落率となっている。極端で過激な関税政策発動により、米ドルの信認低下や米景気後退を織り込むなど、最悪のシナリオを織り込んだものとみられる。なお、前回、今回とも米国よりも日本の株式市場の下落率が大きいが、投資家のリスク回避などによる為替市場での円高が影響している。

関税政策の影響を受けにくい、独自の成長要因を持つ企業に注目

 

今後の株式市場を見るポイントは、米国の減税と金融緩和であろう。米国連邦議会下院は5月22日、減税や歳出削減、債務上限引き上げなどをまとめた、いわゆる「Big Beautiful Bil(大きく美しい1つの法案)」を賛成215、反対214、棄権1の僅差で可決した。投票直前まで争点となっていたのは、①州税に係る税額控除幅(SALT)の拡大、②メディケイド支給に関する就労要件適用の前倒し、③インフレ削減法(IRA)に基づく税額控除削減の前倒しの3点だった。これらの修正を加えることで、マイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州)が計画していたメモリアル・デー(5月26日)までの下院通過を達成したかたちだ。しかし、歳出削減や減税幅に関して議会上院案との隔たりは大きく、上院での修正協議は難航が予想される。また、法案には歳出削減が多数盛り込まれているものの、減税などによって財政赤字はさらに拡大するとみられる。ムーディーズ・インベスターズの米長期債の格下げにみられるように、米国財政の先行きに対する市場の見方は厳しさを増しており、5月下旬にかけて長期債を中心に米国債利回りは急上昇した。今後、上院でさらに財政拡張的な修正が加えられた場合には、こうした市場の不安が増大する可能性もある。

25年7月頃までに、相手国・地域との交渉進展により、関税率が当初想定よりも引き下げられ、関税がインフレに波及するリスクは低下するとみられる。米FRBは早ければ夏、遅くとも秋以降、政策金利の引き下げを再開すると予想される。こうした点を考慮すると、株式市場は徐々に下値を切り上げる可能性が高いとみられる。

銘柄選定には米政権の政策の影響を受けにくいか、独自の成長要因を持つ企業が有望と思われる。鹿島は今26年3月期業績について前期比1%増収、営業利益は同5%増益と8期ぶりに最高益更新を見込んでいる。国内土木で大型工事が最盛期を迎えることや、関係会社での不動産売却益などが増益に寄与する見通しだ。日本ハムは中期経営計画(25年3月期〜27年3月期)の最終年度に事業利益610億円(25年3月期は425億円)を目指している。また配当については、同期間中に株主資本配当率(DOE)3%程度への引き上げ、配当性向40%以上を目安とする方針を掲げ、配当は前25年3月期に16円増配の135円、今26年3月期は21円増配の156円を計画している。

信越化学は、今26年3月期第1四半期の営業利益は前年同期比13%減益と予想しているが、シリコンウエハの出荷は前四半期比で持ち直すと想定。米国の関税政策の影響は、同社の売上げ全体の2%弱と低いとしている。4月25日に上限5000億円の自己株取得を発表した。日立製作所の今26年3月期は、ITやエネルギー、鉄道分野を中心に受注が堅調。純利益は関税の影響350億円を見込み、前期比15%増の7100億円を計画している。伊藤忠商事は、今26年3月期の純利益は過去最高益の9000億円と三菱商事、三井物産を上回り、総合商社トップになる計画。同社は、景気後退リスクとして400億円の減益要因を織り込むが、持ち合い解消に伴う株式売却益や北米電力関連事業の増益を見込む。

九州運輸局によると、4月の九州への外国人入国者数は前年同月比17%増の42.8万人と過去最高を更新した。JR九州には追い風である。同社は今26年3月期について運賃改定や分譲マンション、保有物件売却などで営業利益は前期比15%増を見込んでいる。(6月20日記)

このページの先頭へ