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2025年1月24日
115兆円の25年度予算案を閣議決定。基幹3税の増加を見込む

政府は12月27日の臨時閣議で、一般会計の総額115.5兆円となる25年度予算案を決定した。当初予算案としては2年ぶりに増え、過去最高となった。政府は予算案を1月の通常国会に提出するが、過半数割れしている与党が当初案のまま成立させるのは難しい。協力を求める野党との協議次第では修正を迫られる可能性がある。

政府予算案で注目されるのは、税収を過去最大の78.4兆円になると見込んだことである。物価高や好調な企業業績を背景に補正予算時に見積もった24年度通年の税収(73.4兆円)を上回った。24年度当初予算(69.6兆円)と比べるとなんと8.8兆円の増加である。

税収の内訳をみると、消費税は24年度補正後と比べ2.3%増の約24.9兆円と全体の32%を占める。消費税はモノやサービスの価格に上乗せされるため、最近の物価高で税収が大きく伸びると見込む。ちなみに24年度当初予算(23.8兆円)と比べると4.6%の増加である。全体の約30%を占める所得税は同15.8%増の約23.3兆円と最も大きい伸びを見込んでいる。24年度当初予算は17.9兆円だった。24年限りで実施した所得税などの定額減税分が戻ったほか、賃上げや雇用拡大が寄与し、想定を大きく上回る伸びとなる。さらに法人税は全体の24%を占めるが、過去最高の企業業績や円安による輸出の伸びから同6.6%増の約19.2兆円を見込んでいる。以上の基幹3税で税収全体の86%を占める。企業の売上げや利益、われわれの給与明細、そして政府の税収はすべて名目値である。日本経済がデフレを脱し、インフレとなったおかげで税収が無理なく伸びている。

政府は25年度のGDP成長率を実質で前年度比1.2%になるとの経済見通しを発表した。生活実感に近い名目GDP成長率は同2.7%、実額では629兆円と予測した。24年7〜9月期の名目GDPの年率換算値(610.2兆円)と比べると25年度は19兆円も増える計算だ。GDPは国全体で稼いだ付加価値の合計であり、これを政府と企業と個人の各主体で分配するかたちとなる。このうち、政府部門は税収で取り分を増やしている。企業部門も売上げや利益を伸ばしている。個人は賃上げなどで給与は増え始めたものの、税や社会保険料を除いた実際の手取り(可処分所得)が伸び悩んでいる。24年10月の衆院選において国民民主党は「現役世代の手取りを増やす」政策を強くアピールし、議席数を大きく伸ばした。25年度の当初予算案が修正されるとすれば、やはり個人への分配がカギとなるだろう。

 

インフレで企業の利益率が上昇、積極経営姿勢の企業は株高へ

 

内閣府は25年度の実質成長率が1.2%となった場合、日本経済の需要と供給の差を示すギャップが0.7%と7年ぶりにプラス(需要超過)となる試算を公表した。日本はいよいよ賃金と物価の好循環が定着する条件が整い始めたといえる。長期のデフレで苦しんだ日本経済はリハビリを終え、健康体を取り戻したと言えよう。25年は政府が「デフレ脱却」を宣言する可能性がある。健康体となった経済を持続的に成長させるエンジンは企業部門が担う。

企業にとってインフレは、短期的には仕入れ値の上昇と販売価格の上昇のどちらが大きいかで利益率が変わる。しかし、長期的に見た場合、概ね同程度の価格上昇があるという前提を置くと、投資に対するリターンはインフレによって上昇すると考えられる。簡単な事例で考えてみよう。図のように、200円の投資を行い、売上げが100円、10%の利益率のビジネスを想定する。利益は10円、200円の投資に対する利益率は5%だ。ところが、5%のデフレ下では、売上げは95円、利益率が同じだとすると利益は9.5円、投資に対する利益率は4.75%となる。反対に5%のインフレがあると、売上げは105円、利益は10.5円で投資に対する利益率は5.25%となる。同じビジネスでもインフレかデフレかで投資に対する利益率は大きく変わるわけだ。インフレ下では企業は自然と投資に積極的になるだろう。

インフレは企業経営のマインド(心理)にも影響する。図表に戻ると、100円の売上げを期待して生産した製品が売れ残ったとする。その場合、5%のインフレでは翌年に売ると105円で売れる。

コストは昨年のコストなので利益は10円ではなく15円になる。この場合、売上高利益率は15÷105=14.3%で、投資に対する利益率は、5%でなく、7.5%(15÷200=7.5%)となる。これが5%のデフレだと、売り値が95円になるので利益は10円ではなく5円になる。この場合、その年の売上高利益率は10%でなく、5÷95=5.3%で、投資に対する利益率は5%ではなく、2.5%(5÷200=2.5%)になってしまう。

そのためデフレ下では企業は生産に慎重にならざるを得ない。一方、インフレ下では、たとえ在庫が生じても、大きな問題はなく、むしろ機会を逃さず積極的に生産するようになる。インフレ下で企業はリスクを取った投資が行いやすくなるため、積極的に規模の拡大を目指す投資が拡大すると考えられる。

24年は日立やソニーグループ、三菱重工などインフレ下で好業績を上げた先頭集団が株式市場で高く評価された。今後、2番手、3番手集団がインフレ経営に舵を切り、利益を上げるだろう。25年はインフレを追い風に積極経営に転じる企業が評価される可能性が高い。

冷凍食品大手のニチレイは省人化を見据えた大型設備投資が、これから回収期を迎える。国内で獲得したキャッシュを海外や株主還元に振り向けることで更なる企業価値の向上が期待される。王子HDは今25年3月期の上期決算で、政策保有株の縮減目標を引上げた。12月には上限1億株(500億円)の自社株買いを発表するなど、株主還元の強化に期待が集まっている。ゼンショーHDはM&Aを含む海外展開に注力中。今25年3月期の営業利益は前期比16%増と過去最高を更新する見通し。

(1月20日記)

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