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マーケット見通とポイント

2024年12月24日
25年もインフレ→名目GDP増加→企業収益拡大→株高のパターンが続くか?

米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利し、共和党は上下両院でも過半数を獲得し、いわゆる「トリプル・レッド」となった。良好なマクロ環境のもとで続く堅調な企業業績や、トランプ次期政権の減税や規制緩和といった「親ビジネス」の政策は米国株式市場の追い風になる。

23〜24年の米株式市場はGAFAMが突出したパフォーマンスを上げたが、25年は景気敏感株や中小型株にも物色が広がろう。セクター別では、業績が堅調で規制緩和の追い風が期待される金融セクターが注目されるだろう。また半導体株が指数をけん引してきた情報技術(IT)セクターは、今後AI(人工知能)デバイスが普及し、関連サービスが拡充していくなか、AI関連機器の製造企業やソフトウエア・サービス企業などにAIの恩恵が広がるとみられる。

日本株については、9月中間決算を受けても今25年3月期は増益見通しが維持されており、ファンダメンタルズ面で大きな懸念材料は生じていない。もっとも国内政治は「自民党一強」の安定した時代が終わり、自民、公明両党の「少数与党」での政権運営は厳しさを増しそうだ。米トランプ次期政権による貿易政策は不確実性が拭えず、自動車や中国への依存度が高い製造業の一角は株価の上値追いに慎重になる材料が増えそうだ。一方、これまで日本株のサポート要因となってきた米国経済の底堅さやインバウンド消費、日本国内の設備投資需要の強さ、企業の積極的な株主還元強化の姿勢などに目立った変化はみられず、とくに企業の自社株買いや増配の動きはむしろ加速している。こうしたなかで日本の名目GDPは、デフレ均衡から脱出し、持続的な賃金上昇を追い風に緩やかな成長軌道に入りつつある点が注目される。

グラフ1のように、過去30年余りにわたり横ばい圏内で推移してきた日本の名目GDPはすでに離陸した。11月に公表された日本の24年7〜9月期の名目GDPは前期比年率換算プラス2.1%と2四半期連続で増加し、611兆円と過去最高を更新した。ちなみに同期間の実質GDPは同0.9%増の559兆円である。GDPデフレーターは前年同期比プラス2.5%と、22年10〜12月期以来、8四半期連続の上昇となり、インフレが名目GDPを押し上げている。日本経済研究センターの11月の予測によると日本のGDP成長率は23年度4.9%、今24年度は2.9%、25年度には3.5%に再加速する見通しだ。

グローバルではロシアのウクライナ侵攻で世界の分断が決定的になり、サプライチェーンの再構築が急務となっている。国内では上昇しつつあるインフレ期待に加えて、構造的な人手不足、労働市場の流動化を背景に、賃金の基調は改善しつつあり、すでに物価安定目標と整合的な3%近辺に達している。25年の春闘では、24年に引き続き、3%を上回るベースアップが実現すると予想される。実質の雇用者報酬(所得)はプラスの伸びを基調として続けるだろう。石破首相は、最低賃金を「20年代に全国平均で1500円」に引き上げる目標を政策課題に位置づけており、持続的な最低賃金の引き上げが進むだろう。政府の物価高対策を含む拡張的な補正予算の効果もあり、25年度の個人消費は緩やかながらも回復が続くとみられる。

日銀によるアンケート調査では企業のインフレ期待も上昇しており、価格設定行動も変化している。帝国データバンクによると、食品主要195社は11月に282品目の値上げを実施した。25年の値上げも1000品目を突破する見込みで、粘着質な値上げが続く見通しだ。

名目GDPと株価には高い連動性が確認される

労働市場における構造的な人手不足を背景に、ソフトウエアへの投資を含む省力化投資は続くだろう。サプライチェーンの再編(中国などから国内への生産拠点のシフトなど)、老朽化設備更新へのペントアップ需要(控えていた投資が景気の好転などをきっかけに一気に活発になる現象)、政府の支援を背景とする半導体関連投資、データセンター関連投資など、生産性を改善させる国内の設備投資は底堅く推移しそうだ。トランプ大統領は日本に対して防衛費の対GDP比率を「2%超」の水準へとさらに積み増しを求める可能性もあり、防衛関連の予算も増加基調が続きそうだ。なお、実質輸出の回復は当面、緩慢なペースにとどまりそうだ。

GDPは一定期間内に国内で産み出された物やサービスの付加価値の合計なので、企業で言えば売上総利益(粗利益)に近い概念だ。インフレにより名目GDPが増加する局面で企業収益が拡大するのは当然である。長期的に株価は業績を反映するので、グラフ2のように名目GDPと株価には連動性が確認できる。「モノの値段が今日よりも明日が高くなる」インフレの経済は消費に対して基本的にポジティブに働く。家を買うケースを想定すれば明らかだ。企業にとっても売上高が増えるイメージが継続すれば、投資行動はより積極化する可能性がある。インフレを背景に名目GDPが再成長し始めた24年に日経平均が史上最高値を更新したことはある意味で当然といえる。日経センターの予測に基づくと27年1〜3月期の名目GDPは656兆円まで拡大する見通しだ。なお、岸田前首相は24年3月18日の参院予算委員会で、「今後の努力で21世紀前半の名目国内総生産(GDP)1000兆円の目標実現が視野に入る」と発言した。実現できるかはともかく、マイルドなインフレが続けば、中長期的な日本株への投資は十分魅力的といえる。

参考銘柄としてはインフレで事業環境が追い風になってきた建設セクターから大林組(1802・東証プライム)、半導体など機能性材料と農薬の主力部門の拡大で今25年3月期に2期ぶりに営業最高益を更新する可能性がある日産化学(4021・東証プライム)、円金利上昇や手数料関連利益の拡大などが寄与し、今25年3月期の純利益は前期比3倍を見込む三井住友トラストグループ(8309・東証プライム)に注目したい。

(12月20日記)

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