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マーケット見通とポイント

2023年4月30日
 リーマン危機の教訓で米、スイスとも金融危機に迅速に対応。

3月に起きた米銀の破綻やクレディ・スイス・グループの経営不安は米およびスイス政府とそれぞれの金融当局のきわめて迅速な対応で危機を脱した。米シリコンバレーバンクの破綻では、米政府による預金の全面的保護と当局による流動性供給、そして米地銀による一括買収でひとまず決着。クレディ・スイスはスイスの最大手銀行UBSによる買収への流動性支援枠や政府保証の供与に加え、日米欧の6中銀によるドル供給強化策を矢継ぎ早に発表し、金融システム危機の芽を早期に摘んだ。インフレを抑えるために米欧とも急速な引き締めを実施している最中に、金融システム問題に発展させないという政府と金融当局の強い決意が感じられる。

08年のリーマン金融危機の教訓から大手行への監督・規制が強化され、米国の大手行はどこも財務・収益とも健全だ。ここが金融システム問題に波及しないとみる最大のポイントだ。今回の米銀の問題は資産が中小規模で規制対象から逃れてきた金融機関で発生した。今回の反省も踏まえ、FRBの金融監督担当のバー副議長は資産規模1,000億ドル(約13兆円)以上の中堅銀行への資本や流動性に関する規制を厳しくする方針を示している。銀行への規制が強化される前に、中堅・中小銀行は貸し出しの適正化を進めるとみられる。結果として中小企業向け融資の厳格化が進み、信用収縮が進む可能性が高い。とくに商業不動産ローン市場は中堅・中小銀行のシェアが約80%を占め、影響が懸念される。

融資の厳格化は信用の収縮を通じて引き締めと同等の効果をもつ。米長期金利はシリコンバレーバンク破綻前の最高だった3月2日の4.086%から3月24日には3.287%へ急低下した。とくにインフレ率を考慮した実質金利が大きく低下した。米債券市場ではFRBはもはや利上げを実施する必要性はないことを織り込んだものと思われる。

金融不安が強まった3月の米株式市場では銀行など金融株が2月末比約▲10%下落した。これとは対照的に情報技術(IT)が同+11%と11のセクターでは最大の上昇率となった。アップルやマイクロソフト、アルファベット、メタプラットフォームズといったGAFAMがリード役となった。注目されているのは本業で稼いだ現金から設備投資などの投資を差し引いたフリーキャッシュフロー(FCF=稼ぐ力)の高い企業だ。株式市場では経営不安から融資が厳格化されても資金繰りに困らずに事業の運営を継続できる安心感が買い材料となっている。大型IT関連で構成される指数であるナスダック100は米銀破綻の直後の3月13日前後を底に上昇し、3月末時点で年初来2割近い上昇となっている。ここ数ヵ月は信用収縮の可能性や景気の不透明感が意識されやすく、米長期金利は前の高値を上回るのは容易ではないだろう。株式市場では強固な事業基盤を背景に高いキャッシュフロー創出力を有する優良銘柄が選好されやすいだろう。また景気見通しが不透明ななかでは小型株よりも大型株に相対的な安心感があるだろう。

問題は本当に信用収縮が実体経済に影響を及ぼす場合、FRBが迅速な対応ができるか否かである。現在は年内利下げを否定しているFRBだが、いざという時は迅速かつ大幅な利下げを行う可能性が高いとみられる。今後はエネルギー価格が前年比でマイナスとなるため、インフレ指標は急低下するだろう。住居費と賃金の上昇圧力でサービスインフレの鎮静化は遅れる見通しだが、それでも足もとの信用収縮の影響でサービス業の景況感は悪化し、サービスインフレも緩やかに鈍化するとみられる。金融政策の軸足は金融システム安定と景気後退回避へシフトし、年内12月には利下げに入るとみられる。これはグローバル株式市場の追い風となる。

 

支持率上昇、解散時期を探る岸田政権、政策保有株が多い企業に注目。

 

国内では3月28日、23年度予算が成立した。予算成立は内閣の最も重要な仕事であり、ひと区切りついたことになる。4月3日に発表された3月の日銀短観は、製造業の業況判断DIが前回調査から悪化したが、先行きは改善が見込まれている。

注目材料は内閣支持率の改善だ。3月の報道各社の世論調査で岸田文雄内閣の支持率が上昇するなか、首相が6月21日の会期末までに衆院解散に踏み切るとの観測が浮上した。日本経済新聞の政権支持率の3月調査は48%へ上昇し、7カ月ぶりに「支持する」が「支持しない」を上回った。ウクライナ訪問など外交の成果が支持率を押し上げている。NHKの調査も「支持する」が上回った。3月調査では「支持しない」が勝る他の4つ(朝日、産経、読売、共同)の世論調査も4〜6月の岸田首相の実績次第では「支持する」が上回る可能性がある。24年9月に自民党総裁任期満了を控える岸田首相は、長期政権を目指すのであればその前に解散を通じた基盤固めをしたいところだ。

解散のタイミングを計るうえで3つの重要な政治日程がある。第1に4月の統一地方選挙、第2は5月19〜21日のG7広島サミット。今回のウクライナ訪問の評価が高かったことを考えれば、広島での開催自体が支持率上昇、つまり解散に向けた自信を形成する要因になろう。第3は6月中に少子化対策などを盛り込んだ骨太の方針が出される。

この3点を踏まえて解散が可能かどうかという岸田政権の判断材料として、①マスクを外し、サービス消費に弾みをつけて5月のGW大型連休を迎え、消費者心理の改善を確認する。そこに②中国からのインバウンドが復活すればさらに追い風となる。その次に③5月中盤の広島サミットを成功裏に終え、支持率はさらに改善。その後④少子化対策で民心を掌握した上で解散という姿が今のところ蓋然性が高いシナリオだ。衆院解散と株式市場(日経平均)は相性が良い。2005年8月の郵政解散以降の6回で、解散から半年以内の高値まで平均で21%上昇している。

日本企業のROEが低い理由の一つに株式持ち合いを背景にした政策保有株が多い点が挙げられる。政策保有株がバランスシート上の純資産に対する比率が大きいほどPBRおよびROEが低い傾向がある。政策保有株は純資産に計上されるので、政策保有株の評価益が増えるほど分母の純資産が増加し、ROEの水準は押し下げられる。政策保有株を多く保有する企業は縮減を進めることでROEやPBRを改善する余地がある。大日本印刷は2月9日、23年度からの3ヵ年の中期経営計画の骨子で、3,000億円の自社株取得や政策保有株を純資産の10%未満に縮減する方針を示した。同社の株価はその後、1ヵ月で1.3倍に上昇した。PBRが1倍を割り込み、政策保有株の対純資産比率が高い企業はTBSHD(9401、同比率73.8%)、京セラ(6971、同50.1%)、DeNA(2432、同45.6%)、三菱倉庫(9301、同34.7%)、清水建設(1803、同34.2%)、大日本印刷(7912、同33.5%)、大林組(1802、同32.1%)などである。

(4月16日記)

 

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