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マーケット見通とポイント

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マーケット見通とポイント

2023年2月2日
卯年の日経平均は平均16.4%上昇。今年は経済正常化が後押し。

日本の株式相場のアノマリーで、うさぎ(卯)年の成績が高いことは有名だ。実際に過去6回の卯年の日経平均の年平均騰落率は+16.4%と12の干支のうち4番目に高い。卯年の成績のよい一つの理由は米国株式市場にある。卯年は「米中間選挙の翌年」と必ず重なるためだ。「米中間選挙翌年」のS&P500種の平均騰落率は+13.6%とほかの3年(平均+7.0%)と比べて圧倒的に高い。米国の中間選挙での政治的閉塞感を打破するため、次の大統領選に向けて政策転換を進めることを市場が先読みすることが理由といわれている。4年に1回到来する中間選挙翌年は、十二支では「卯年」「未年」「亥年」のどれかが必ず重なる。ちなみに亥年の日経平均の年間騰落率は+16.5%と卯年とほぼ同じで、未年も+7.9%と、そこそこにいい。

卯年の株式市場の成績がよい2つ目の理由は、戦後の卯年を振り返ると、景気が底入れし回復に向かった年が多いことが影響している。戦後のドッジデフレで1950年7月に株価が大底を打った後、朝鮮動乱特需で1951年は奇跡の経済復興を遂げた。1963年は岩戸景気後の景気後退期を脱し、在庫調整の一巡や設備投資の回復、個人消費も堅調に推移した。翌年の東京オリンピック開催を控えた建設特需も加わった。1975年は第1次石油ショック後の不況で鉱工業生産が戦後最大の落ち込みとなったが、インフレは沈静化し、不況を脱した。1987年は政府の経済対策や円高、原油価格下落を受けた物価の安定で民需が回復し、後のバブル経済の端緒となった。1999年は米国でIT需要が急増し、日本も景気回復、株式市場はITバブル相場となった。もっとも過去の卯年では歴史的な相場イベントも多く、2011年には東日本大震災、1987年には米国でブラックマンデーが起こっている(なお、ゴシックの年は卯年)。

2023年は感染症の拡大や世界的なインフレが景気の下押し圧力となっているものの、コロナ禍からの経済正常化の動きを受け、サービス消費を中心に緩やかな回復が予想される。政府は来23年度の経済見通しで、物価の影響を除いた実質成長率を+1.5%(22年度+1.7%)と7月の年央試算の+1.1%から上方修正した。実現すれば、23年度の実質GDPは558.5兆円となり、5年ぶりに過去最大を更新する。

 

23年はデフ脱却宣言へ。海外投資家も日本株を買い越す公算。

 

日銀は22年12月に大規模金融緩和の修正を発表した。異次元緩和を主導した黒田総裁の任期が4月に到来するが、30年ぶりのインフレを背景に賃金上昇が高まれば2%のインフレ目標の安定的達成は可能として、23年卯年はデフレ脱却を正式に宣言する可能性がある。

企業活動も一段と活性化する。法人企業統計調査によると、全産業の経常利益は22年4〜6月期に前年同期比17.6%増の28.3兆円と四半期ベースの過去最高となった。続く7〜9月期も同18.3%増の19.8兆円と7〜9月期として過去最高となった。資源高などの影響が重荷となっているが、部品などの供給制約の緩和や新型コロナ禍からの社会活動の回復が企業業績の改善を後押ししている。

来23年度は政策の追い風もある。岸田首相は12月、国内投資の拡大に向けて7兆円を投じると表明した。先端半導体や蓄電池の国内生産能力の強化、生産拠点を海外から国内に移す中小企業の支援などに資金を投じる見通し。経団連は脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)といった分野で税制支援策の後押しが継続すれば、国内向けの研究開発を含めた名目の設備投資は27年度に100兆円と21年度の86兆円から2割増えると試算している。世界的な金融引き締めやロシア・ウクライナ戦争による資源高のなかで、欧米先進国と比べた日本経済・企業の好パフォーマンスは特筆されるのではないか。

ただ、23年は①ウクライナ戦争の長期化、②米中対立・台湾問題、世界の分断の進行、③世界景気の後退とインフレの同時進行(スタグフレーション)懸念、④エネルギー(温暖化対応の一方で、エネルギー不足の問題深刻化も危惧)、⑤北朝鮮、イランの核開発、など投資家にとって心配の種は尽きない。

しかし、「株は不安の壁をよじのぼる」という相場格言もある。「不透明感が後退したら株式を買います(運用を始めます)」という投資家にはこう言いたい。「暗い霧が晴れて見通しが透明になったら日経平均は3万5,000円を超えているでしょう。それよりも日本のインフレ率3%が続いたら、その分大切な現金が目減りし続けます。資産を防衛するためにも有望銘柄を資産に組み入れましょう」と。ちなみに上述した5つはいずれもインフレ要因だ。

さらに続けて3つ言いたい。「①24年1月からNISAの拡充・恒久化で個人金融資産2,000兆円の山が動くかもしれません。②24年度上期には政府・日銀が新紙幣を発行する予定です。新紙幣は課税を逃れている数十兆円のお金(アングラマネー)を地下から呼び起こすかもしれません。③岸田首相は防衛費増税を24年以降の適切な時期に実施するとしています。増税はインフレ要因です。24年の株高・インフレのビッグイベントに備えましょう」と。

黒田氏が日銀総裁に就任した13年の海外投資家による日本株買い越し金額は約15兆円と空前の規模となった(現物株売買)。1ドル=80円台の円高から脱するためのアベノミクスの「3本の矢」のなかで、第1の矢「大胆な金融政策」のインパクトが最も大きかった。実際に円相場は11年に付けた1ドル=75円台の最高値から22年に150円台まで対ドルベースでちょうど半値になった。また日経平均も12年末の1万0395円から21年央には3万円と3倍高を実現した。為替も株も黒田総裁の功績と言えるだろう。その後、海外投資家は円安、株高のなかで利益確定売りをした。13年から22年(約2.2兆円売り越し)までで累計買い越し額は1兆円まで減少し、買い余力は大きくなっている。欧米株への投資に慎重姿勢が多い中、23年卯年の日本株は、グローバルで見て買いの筆頭候補となる可能性が高い。

半導体前工程の製造装置への投資が23年中頃から回復に向かうとみられ、大局的な観点で注目したいのが東京エレク。日銀の政策変更を背景に利ざや改善に対する期待が高まる第一生命HD。トヨタのEV戦略のカギを握るデンソーは12月に、35年度に自動車電動化や自動運転など「CASE」分野の関連領域の売上高を現状比で8割増の7兆円にする方針を発表。脱エンジンに本格的に舵を切ったことから中長期で注目したい。

(1月16日記)

 

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