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マーケット見通とポイント

2021年2月1日
21年の世界経済はワクチン普及で明るい光が差し込む見通し

人命にかかわる新型コロナウイルスの感染拡大で2020年の世界経済は困難な状況に陥ったが、21年はワクチン開発の進展もあり、世界経済に明るい光が差し込もう。今後、最も蓋然性が高いシナリオとして、21年1〜3月期に各国でワクチン接種がまり、年央までに一般の市民も接種が可能になると想定。この前提をもとに21年後半から世界経済の正常化が本格化し、景気の立ち上がりに合わせて各国の財政出動が後押しすることで成長の加速が見込まれる。また、経済は回復しても金利上昇は抑制され、金融緩和と財政刺激策双方により、家計や企業のバランスシート悪化は食い止められる見込みだ。

20年は政府による行動制限の影響で世界経済は年前半に戦後最大級の落ち込みとなったが、21年は、世界金融危機(リーマン・ショック)後など過去の景気後退からの回復パターンとは異なる好循環となろう。過去の代表的な株価急落局面と比較すると(グラフ参照)、景気後退が長期化し、株価が下落トレンドとなったITバブル崩壊後やリーマン・ショック後とは異なり、「ブラックマンデー」型を辿っているように見える。ブラックマンデー時との共通点は①悪材料が外部ショックだった、②特定のセクターのバブル崩壊が原因ではない、③金融危機を回避した、の3点だ。ブラックマンデーのきっかけは基軸通貨であるドルを巡る米国とドイツの金融政策の対立によるニューヨーク株式市場の暴落という外部ショックだった。今回のショックは感染症が引き起こしたもので、米国のITバブル崩壊や住宅バブル崩壊に起因するリーマン・ショックのように何らかのバブル崩壊が引き起こしたものではない。むしろ経済は健全で建物や設備の破損もない。さらに、コロナショックで一時的に景気後退となったが、深刻な金融危機は回避された。これはFRBを中心に世界の中央銀行が景気後退を長期化させる金融システム崩壊を守るために資金供給と企業、家計への資金繰り支援のために政策を総動員したことが大きい。例えば日銀による大量の資金供給で20年11月の日本のマネーストック(M2)の前年同月比伸び率は+9.1%と、80年代後半の不動産バブル期に急増し、伸び率がピークとなった1990年5月の+13.2%以来の高い伸び率となった。米国に至っては11月のM2の伸び率は同+25.1%と1959年の統計以来、過去最大を記録した。

 

投資資金潤沢、モミ合った後は電動車関連などを個別物色へ

経済回復は株式市場全体に織り込まれつつあるが、21年は出遅れ企業に加え、パンデミックを機に変革に乗り出す企業などに投資のチャンスがでてこよう。その際のポイントは技術革新と規制緩和への対応だろう。21年は5Gの本格化や自動運転、政府が推進するデジタル化、環境対応などの流れを受け新しいビジネス、サービスが立ち上がる。5Gで移動体通信が高速化され、高精細動画の視聴や自動運転、スマート工場などにとどまらず、スマホであらゆるものの操作ができるようになる。遠隔地からでも複雑な作業・協業ができるなど全く新しいサービスが始まるだろう。20年はテレワーク、遠隔医療、オンライン授業などが普及したが、これまで対応していなかった企業や学校は政府の補助などもあり、半ば強制的にインフラの整備を迫られた。今後はこのインフラを通じた新しいサービスも始まるだろう。

「安倍ドリル」でも穴が開かなかった「岩盤規制」はコロナ禍がこじ開けた。安倍前首相はアベノミクスで掲げた成長戦略の柱として規制改革を掲げ、いわゆる「岩盤規制」を突き破るドリルの刃に自らがなると公言していたが結局腰砕けとなった。オンライン授業、オンライン診療や薬の処方など、これまで業界団体や各省庁の反対で進まなかった規制緩和がコロナ禍ではやむを得ない緊急措置として始まっている。今後はテレワークと同様に、「やってみたら意外と便利だし楽、それなら恒久措置に」といった格好で拡がっていくだろう。こうした分野では大手企業だけでなく、むしろ小回りの利く中堅企業にも活躍の場が広がろう。コロナ禍という強い逆風下で次の新しい時代での飛躍に備えて、着々と研究開発や設備投資を行ってきた企業が大きく開花するのではないか。既にお手本がある。世界の電気自動車用モーターで主導権を握り、2030年に売上高10兆円を目指す日本電産の永守会長は20年10月、「自動車産業のインテルになる」と発言したが、同社の株価はそこから1ヵ月程度で35%も上昇した。

20年は「GAFA+M」という特定の米巨大IT企業がデジタル市場(または世界の株式市場)の主役となったが、21年はデジタル技術(DX=デジタルトランスフォーメーション)の活用により新たな利益を生み出すことが可能で、様々な企業に投資チャンスがあるだろう。

米S&P500種採用銘柄のなかでGAFAの時価総額とGAFAを除いた企業(非GAFA)の時価総額を、20年年初を100として指数化すると、GAFAの指数は年末に150に達したが、非GAFAの指数は年初の水準を若干上回ったに過ぎない。実はTOPIXの20年末の水準も19年末比5%しか上昇しておらず、米国の「非GAFA」並みだった。今後の世界経済の回復とDX技術のビジネスへの取り込みによって米国企業だけでなく、日本企業にも投資妙味が出てくる銘柄が多く存在することを示している。

当面の株式市場は年末から年初にかけて急上昇となった反動から、やや上値の重い展開が予想される。しかし、投資資金は潤沢であり、旺盛な個別物色が続くのではないか。電動車対応を進める部品メーカーから駆動用モーターの日本電産と明電舎、モーター用永久磁石の信越化学とTDK、モーターコアの三井ハイテックに注目したい。電源・電力の制御・供給を担い、自動車などの省エネ・省電力にも貢献するパワー半導体が世界的に注目されており、富士電機とルネサスエレク、ロームが注目される。電装車の普及、洋上風力発電の拡大、5G普及などで光ファイバが再び注目されており、住友電工と古河電工にも投資妙味があろう。

(2021年1月15日記)

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