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マーケット見通とポイント

2020年9月1日
コロナ感染拡大はワクチン開発まで続くが、投資の世界では長期の視点が重要

コロナ感染拡大はワクチン開発まで続くが、投資の世界では長期の視点が重要。

新型コロナウイルスの感染拡大による経済的な下押し圧力はワクチン開発など疫学的な制御が可能になるまで残るだろう。その期間の見通しは誰にもわからないが、少なくとも1年程度、すなわち2021年1〜3月期か21年前半までかかると見るエコノミストが多い。元外交官で作家の佐藤優氏によると、1年程度で感染拡大が収まるならば、世界は現在とそれほど大きく変わらないが、リモートワークや時差出勤、オンライン学習などは従来よりも広がると予想している。しかし、外出自粛が1年半以上続くと、社会の文化が変容すると見ている。佐藤氏によると、外出できない状況にいると、人間の関心が内面に向かう。新型コロナに感染しても発症しない人もいれば、重症化して亡くなる人もいる。こういう状況では、「本当の幸せとは何か」というような人間の内面に対する関心が強まるそうだ。宗教や瞑想などに関心を持つ人が増え、大量消費、観光、外食よりも、生き方の質に関心を向ける人が増えてくるとコメントしている。

こうした中でトランプ政権の新型コロナ対策チームのファウチ博士は7月31日の議会下院でワクチンの開発状況について証言。「ワクチンは今年の終わりか来年のはじめに完成するというのは夢ではなく、現実的な見通しだ」と語り、開発は順調に進んでいるという見方を改めて示した。ワクチン開発が成功し、世界で幅広く使われる状況になることを真に願うばかりだ。

米経済指標は4月をボトムに景気が回復してきたことを示している。しかし、4月後半から段階的に規制が解除され、5月20日のコネチカット州の制限緩和を受けて50州すべてで経済活動が部分的に再開した。しかし、6月中旬以降、新規感染者数の増加ペースが再び加速。7月13日までにカリフォルニア州やテキサス州、フロリダ州など9州(経済規模では全米の約4割)がレストランやバーなどの屋内営業禁止といった一部規制を再び導入した。米国の経済活動は回復に向かうものの、その勢いは極めて緩慢なものとならざるを得ないと思われる。

ニューヨーク株式市場は6月頃から上値が重くなり、ダウ30種平均は2万5,000〜2万8,000ドル台の往来相場に入っている。ナスダック総合指数やS&P500株価指数がいち早く史上最高値を更新しているため、ダウ30種平均も市場最高値更新は近いと思われるが、その後は上値追いには慎重にならざるを得ないのではないか。今なお収束の目途が立たない新型ウイルス感染の経済への悪影響が秋以降に顕在化するリスクや、11月に控える米大統領選を巡る不確実性はますます強まりそうだ。

東京株式市場では4〜6月期の決算発表で主要企業の今21年3月期決算が予想よりも厳しい実態が明らかになった。ドル安・ユーロ高のあおりでドル・円相場が6月の日銀短観の想定為替レート107.87円を割り込んで104円台まで円高が進んだことも投資家心理に影響している。海外投資家が夏休みモードで参加者が限られるため、わずかな材料で乱高下しやすい。もっとも短期的なリスクへの警戒は必要だが、長期でみれば世界経済は回復軌道に入り、ウィズコロナ時代の新たな成長局面に突入する。短期的な変動に備えつつも長期成長を捉えた投資戦略は維持すべきだろう。

非接触、ヘルスケア関連のテクノロジー関連株に注目。

「コロナ後」の経済では、インターネット関連などのテクノロジー、とくに「非接触」が注目される。もともと5G、AI、IoT、ブロックチェーンなどの技術の可能性が広がるなか、新型コロナ感染拡大に伴い消費者の間で非接触・非対面サービス志向が高まっている。典型的な例が通信回線を利用したウェブ会議だ。同時に映像ストリーミング、ゲーム、遠隔医療や投薬などヘルスケア、オンライン教育、オンラインショッピング・EC(電子商取引)決済、モビリティ、エネルギーなどの領域で非対面サービスが進展している。

非接触に関連する業種は幅広く、銘柄も多岐にわたる。「LINE」を取り込んだZHDはネットサービスで一段と強みを発揮、EC・決済でも覇権を狙っている。ITサービス大手の大塚商会は、遅れている中堅中小企業のテレワークの環境整備が政府の後押しもあり、今後の普及拡大でメリットを受けそうだ。NEC系のNECネッツエスアイはITサービスやネットワーク構築が得意。テレワーク導入で強みを発揮している。弁護士ドットコムは電子契約「クラウドサイン」が急成長している。医療情報専門サイトが主力のエムスリーは、LINEとオンライン医療事業会社を設立。オプティムはIoTサービスを展開。東証マザーズ上場のMRTとオンライン診療「ポケットドクター」を提供している。

一方、EC取引量が増大するなか、物流がボトルネックとなる可能性が高く、とくに物流のラストワンマイルの自動化などが注目される。貨物自動車運送業の人手不足が深刻で、置き配やPUDOステーション(駅などに設置されているオープン型の宅配ボックス)など省人化・自動化が進んでいる。ヤマトHD、SGHD、丸和運輸機関などが注目される。

非接触にはドイツや日本が得意とする生産工程のロボット化も含まれる。防疫などでの作業員不足により工場が稼働停止となる事態を防ぐため一層の自動化・省人化が求められる。製造業の現場では今後、工場全体の完全自動化、さらに工場同士が繋がる工場のスマート化が進展する公算が大きい。AI、5Gなどの技術革新の動きがこれを後押ししよう。スマート工場をIT面から後押しする富士通、NEC、5Gインフラを支える計測機器のアンリツ、2月の「スマート工場EXPO」(東京ビッグサイトで開催)に自動化製品を出展したダイフク、センサーで工場自動化を支えるキーエンスなどにも注目したい。

ヘルスケアも注目される。バイオテックや新薬開発(がん先端治療などを含む)が成長分野として引き続き注目されるが、今後は世界的に社会保障や医療費への政府支出が増加しよう。世界的な健康保険の強化である。新たに注目したいのは米国など先進国の医療制度の充実、健康保険の対象薬品などへの支出増大だ。ワクチン供給などの大規模かつ早急な生産が必要となれば、大手の医薬品メーカーにも期待が集まる。また新型コロナのワクチン、治療薬、検査薬などディフェンシブなヘルスケア業種の相対的な魅力が高まるだろう。

医薬品メーカーからはスイスのロシュ・グループの中外製薬、ADC(抗体薬物複合体)の抗がん剤「エンハーツ」(DS‐8201)を擁する第一三共、抗がん剤「レンビマ」が大型新薬に育ちそうなエーザイ、医療機器のテルモ、内視鏡の世界的メーカーであるオリンパス、臨床検査機器・検査薬のシスメックス、カテーテルに強い朝日インテック、ハンドソープなど衛生用品の販売が好調なライオンに注目したい。
(8月17日記)

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